日本と欧州が伸び、北米とアジアの利益が減った1Q

地域別に分解すると、1Qの温度差ははっきりしている。

日本は売上高294億円で+20.2%、営業利益149億円で+25.0%と、売上を上回る利益の伸びを示した。物販の客数増とライセンスの好調が重なった格好だ。

欧州は売上高33億円で+56.0%、営業利益8億円で+38.9%。会社は複数キャラクター戦略の継続と、ファストファッションや文具・雑貨のライセンシーとの取り組みが奏功したとしている。南米も売上高10億円で+70.0%と伸びた。

一方、北米は売上高61億円で+6.0%と伸びが鈍く、営業利益は22億円で▲19.9%の減益となった。アジアは売上高120億円で+19.8%と伸びたものの、営業利益は55億円で▲4.9%である。

連結の営業利益224億円のうち、日本セグメントが149億円を占める。海外の伸びが語られやすい会社だが、利益の重心は依然として日本にある。

そして今回、減益となった北米とアジアは、金額でみればいずれも海外の中では大きい部類だ。海外展開の話と、海外で利益が出ているかどうかの話は、分けて見ておきたいところだ。

3カ年中計の最終年度。2035年3月期の時価総額5兆円という物差し

2027年3月期は、3カ年の中期経営計画「不確実な成長から、安定・永続成長へ」の最終年度にあたる。会社は主要施策として、グローバルでのEvergreenなIP化、グローバル成長基盤の構築、IPポートフォリオ拡充とマネタイズの多層化を挙げている。

その先には10年間の長期ビジョンが置かれており、2035年3月期に時価総額5兆円を達成することを掲げている。会員サービス「Sanrio+」の会員数は2026年6月末時点で約348万人となり、2026年3月末から22万人増えた。

過去5期の実績を並べると、この計画の背景が分かる。2022年3月期の売上高は527億円、営業利益は25億円だった。それが2026年3月期には売上高1,940億円、営業利益778億円となり、いずれも過去最高を更新している。

営業利益率は2022年3月期の4.8%から2026年3月期の40.1%へ切り上がった。ROE(自己資本利益率)は2025年3月期に48.6%、2026年3月期は41.6%である。卸売業のROEの中央値7.8%とは水準が異なる。

財務も厚い。2026年3月期の自己資本比率は66.4%で、業種の中央値51.1%を上回る。営業活動によるキャッシュ・フローは525億円だった。

もっとも、直近には別の論点も生じている。会社は常務取締役の不適切な報酬受給の疑いについて特別調査委員会の報告書を受領し、再発防止策を順次実行しているとしている。元常務取締役に対しては損害賠償請求訴訟を提起した。1Qには特別調査関連費用2億円が営業外費用に計上されている。

数字の伸びが速い会社ほど、統治の仕組みが追いつくかどうかが問われる。時価総額5兆円という目標を語るなら、この部分の整備は前提条件になるだろう。

筆者コメント

業界内での立ち位置に照らすと、この会社の見え方はかなり変わってくる。

卸売業238社の営業利益率の中央値は3.1%だ。そのなかにあって、サンリオの利益率は40%台にある。相対水準でみれば、依然として比較対象が見当たらないほど高い。

ところが絶対水準、つまり自社の過去との比較では、1Qの利益率は前年同期を下回った。相対では突出したまま、絶対では初めて後退の兆しが出ている。この二つが同時に成立している局面だ。

片方だけを見ると判断を誤る。相対の高さだけを見れば何も起きていないように見えるし、絶対の後退だけを見れば成長が終わったように見える。どちらも正確ではない。

私が注目したいのは、費用の増加が海外で先に出ている点だ。北米とアジアはいずれも減益となった一方、日本は増収を上回る増益を確保している。海外での費用が将来の売上に化けるかどうかが、この会社の次の分岐になる。

決算を見るときは、連結の増収率よりも地域別の利益の並びに目を向けることをおすすめしたい。伸びの中身は、そこに現れる。

参考資料

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石津 大希