6. 60歳代単身世帯の半数が「年金だけでは厳しい」と回答。シニアの生活実態を調査
では、限られた収入で生活している現在のシニア世代は、日々の暮らしをどのように感じているのでしょうか。金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」のデータから、シニア世代が直面する厳しい現実が見えてきます。
6.1 「年金だけで不自由なく暮らせる」と感じる人はわずか1割程度
60歳代および70歳代において、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と答えた人の割合は、二人以上世帯・単身世帯のどちらでも8%~12%台に留まっています。
6.2 単身世帯で目立つ「日常生活費もまかなえない」という声
「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した人の割合は、二人以上世帯では26%~33%台ですが、単身世帯では60歳代で50.7%、70歳代で35.5%と極めて高い水準になっています。
おひとりさまシニアの半数以上が、毎日の食費や光熱費などの基本生活費にすら窮している実態があります。
6.3 貯蓄の二極化:60代単身世帯の3割が「貯蓄ゼロ」
単身で老後を迎える「おひとりさま」の貯蓄事情はより深刻です。
60歳代単身世帯における金融資産保有額は、平均値こそ1364万円ですが、より実態に近い「中央値」で見るとわずか300万円にとどまります。
さらに、金融資産を「持っていない(貯蓄ゼロ)」と回答した世帯が30.4%と、約3割に達しています。十分な資産を持つ層と、貯蓄が底をついている層とではっきりとした「二極化」が進んでいます。
7. 老後資金を脅かす「想定外の出費」:墓じまいや介護費用の現実
日々の生活費を年金だけでまかなうのが精一杯である一方、セカンドライフを歩む中で「想定外の突発的な大出費」が発生するリスクも見過ごせません。その代表例が「お墓(終活)」と「介護」の費用です。
7.1 墓じまいへの共感は6割、でも費用を「知らない」人が約9割
AOMA行政書士事務所が実施した「実家のお墓問題白書2026」によると、50歳以上の約3人に2人(65.1%)が「子どもへお墓の負担を残したくない」と考えています。
また、一般社団法人終活協議会の2026年最新調査でも、61.1%の人が「自分の代でお墓を終わらせてもよい(墓じまい)」に共感しています。
しかしその一方で、お墓の維持や墓じまいにかかる具体的な費用を「知っている」人はわずか11.4%にすぎず、約9割(88.6%)が具体的な金額を把握していません。さらに、4人に1人が家族に「話を切り出したいのに切り出せない」と感じており、夫婦間で十分話し合えていない割合も72.5%にのぼるなど、意思疎通の不足が課題となっています。
7.2 老人ホームの生涯介護費用は「一人あたり約2300万円」の試算も
介護費用もまた、年金生活を大きく圧迫する要因です。老人ホーム検索サイト『LIFULL 介護』の試算(2026年6月)によると、在宅介護を経て有料老人ホームに入居した場合、一生涯に必要な介護費用は一人あたり約2300万円(総額2295.6万円)にのぼります。
これに対し、親世代の約6割が自身の介護費用を「備えていない」と回答し、いくら必要かも「わからない」人が4割を超えています。親は「子どもに経済的支援を受けたくない(8割超)」と願う一方、子世代も親と介護費用について「話し合ったことがない」と回答した人が8割を超えるなど、こちらも家族間での話し合いが進んでいません。
さらに、長引くインフレは介護現場にも及んでおり、Speee(ケアスル介護)の2026年5月調査では、入居後に月額費用が上がった家族が26.4%と、4人に1人以上に達しています。
値上げ理由の最多は「物価・光熱費の上昇」で、年金収入が横ばいの中、生活コストが事後的に膨らむリスクが浮き彫りとなっています。
8. まとめ:物価上昇の時代に備える、これからの資産形成
物価の上昇が続く現代において、毎月の家計が赤字となり、生活にゆとりを感じられないシニア世帯が増加しているのが現状です。
物価が上がると、預貯金の金額自体は変わらなくても、実質的な価値が目減りし、購入できるものが少なくなってしまいます。
2026年度(令和8年度)からは、働きながら年金を受給する際の「在職老齢年金」制度が見直され、支給停止となる基準額が65万円に引き上げられました。
これにより、一定の給与を得ても年金が減額されにくくなり、シニア世代が働き続ける上での選択肢が広がります。
これからの時代は、長く働くことで安定した収入を確保するとともに、保有する資産を有効活用する「お金に働いてもらう」という視点が重要になるでしょう。NISAやiDeCoといった税制優遇制度をうまく活用し、ご自身の資産を守りつつ育てていくことを検討してみてはいかがでしょうか。
9. 筆者からのコメント
インフレ時代を乗り切るための鍵は、自身の「就労能力」と「資産」の双方を有効活用することです。特に2026年4月から在職老齢年金の支給停止基準額が65万円へと大幅に引き上げられたことは、働く意欲を持つシニアにとって非常に大きなチャンスです。
年金の減額を過剰に気にせず稼ぐことが可能になり、長く働き続けることで家計に大きなゆとりが生まれます。
それと同時に、稼いだお金や退職金をただ預貯金に眠らせておくことは、少し検討が必要かもしれません。
物価高による実質的な「目減り」を防ぐためにも、新NISAなどを活用して「資産寿命」を延ばす工夫を取り入れてみると良いでしょう。
「長く働く×賢く増やす」の掛け算こそが、これからの老後を守る最大の防衛策です。
参考資料
- 帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年6月
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)4月分」(2026年5月22日公表)
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- AOMA行政書士事務所『【実家のお墓問題白書2026】65.1%が「子どもへお墓問題を残したくない」と回答 全国50歳以上300名調査』
- 一般社団法人 終活協議会/想いコーポレーショングループ『【2026年最新】約9割が墓じまい費用を「具体的に知らない」 一方で6割が「自分の代でお墓を終わらせてもよい」に共感――墓じまいと供養先の再選択に関する実態調査』
- 株式会社LIFULL(LIFULL 介護)「LIFULL 介護が試算、生涯で介護に必要な金額はおよそ『2,300万円』」
- 株式会社Speee(ケアスル 介護)「介護施設の月額費用、4人に1人以上で『入居時より高くなった』」



