お盆休みの帰省中に、久しぶりに会う親の老後や実家の将来について考えた方も多いのではないでしょうか。食料品や日用品などの値上げが相次ぎ、生活コストの増加傾向が続くなかで、これからのセカンドライフをどう支えるかは、親世代・子世代の双方にとって切実なテーマです。
帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年8月)によると、2026年の飲食料品値上げは、1〜11月までの判明分で1万8347品目に達しており、5年連続で年間1万品目を超える見込みです。
特に、8月は前年同月比8割増の2311品目、さらに9月には年内最多となる4531品目の大規模な値上げラッシュが控えており、通年で前年の2万609品目を超える可能性も出ています。
このような物価高の中、生活コストの増加傾向は続いており、老後の生活資金について不安を抱えている方も少なくないでしょう。
実際に、総務省統計局の家計調査では、65歳以上の単身無職世帯において、毎月約3万円の家計赤字が出ているという実態が明らかになっています。この不足分は貯蓄などで補填する必要があり、シニア世帯が直面する厳しい現実がうかがえます。
その一方で、高齢者世帯の43.4%が「収入のすべてを公的年金に頼っている」と回答しており、多くの方にとって年金が老後の生活を支える重要な柱であることがわかります。
では、その重要な年金は、生活に十分な金額を受け取れるのでしょうか。
この記事では、最新の公的データを基に、現在のシニア世代が直面している年金のリアルな実情について見ていきます。
記事後半ではお盆休みの帰省時だからこそ話し合いたい「終活・介護費用」の実態についても触れていきます。
1. この記事の3つのポイント
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年金は4年連続のプラス改定ですが、相次ぐ歴史的物価高や社会保険料の天引きで、手取りは実質目減りします。 -
厚生年金受給者の約74%が月9万〜21万円未満に集中し、60代単身世帯の3割が貯蓄ゼロの厳しい実態です。 -
お盆の帰省を機に、生涯2300万円に及ぶ介護や墓じまいの想定外の出費、資産形成を親子で話すのが自衛です。
※本記事は一部「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」を引用のもと執筆しています。
2. 日本の公的年金制度とは?「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造を解説
日本の公的年金制度は、すべての加入者の基礎となる「国民年金(基礎年金)」と、会社員などが上乗せで加入する「厚生年金」の2種類から成り立っています。
この構造は、しばしば「2階建て」に例えられます。
ここでは、それぞれの制度の基本的な仕組みについて見ていきましょう。
2.1 【1階部分:国民年金(基礎年金)】
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられているのが国民年金です。
自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが「第1号被保険者」として加入し、全員が一律の保険料を納めます。会社員に扶養されている配偶者(年収130万円未満など)は「第3号被保険者」となり、個別の保険料負担はありません。
2.2 【2階部分:厚生年金】
厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員や公務員が加入するのが厚生年金です(第2号被保険者)。国民年金に上乗せされる形で加入するため、将来は「基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)」の2階建てで年金を受け取ることができます。保険料は給与額に応じて変動し、会社と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」が大きな特徴です。
2階部分に相当する厚生年金は、会社員や公務員が国民年金に加えて加入する制度です。
国民年金と厚生年金とでは、加入対象者や保険料の決め方、受給額の計算方法などが異なります。
そのため、老後に受け取る年金額は、どの制度に加入していたかや現役時代の収入状況によって差が生じます。
さらに、公的年金の支給額は物価や現役世代の賃金の変動に応じて毎年見直されるという点も、理解しておきたいポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
3. 【2026年度】年金額はいくらになる?厚生年金・国民年金の改定額とモデルケース
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金動向を反映して、毎年見直される仕組みです。
2026年1月23日に厚生労働省が公表した情報によると、2026年度(令和8年度)の年金額は、4月分から国民年金(基礎年金)が+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が+2.0%の改定率となります。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。
国民年金のみを受給する場合、保険料を全期間納付して満額(※3)を受け取るとしても、月額は約7万円程度となります。
また、受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給(※4)」という制度を利用した場合でも、月額は13万円に満たない水準です。
※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。
さらに、これらの金額はあくまでモデルケースに基づいたものであり、実際の受給額は現役時代の働き方や収入によって大きく変動します。
そのため、「ねんきんネット」などを活用して、ご自身の受給見込み額をあらかじめ把握しておくことが大切です。
4. 厚生年金と国民年金を合わせて月15万円以上もらえる人はどのくらい?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金受給者(男女合計)の平均受給額は月額15万289円でした。
なお、この金額には、1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の額も含まれています。
受給額ごとの人数構成は、以下の通りです。
4.1 厚生年金の受給額別、受給権者数の分布
- 3万円未満: 9万2933人
- 3万円以上~6万円未満: 25万3349人
- 6万円以上~9万円未満: 169万6235人
- 9万円以上~12万円未満: 319万5770人
- 12万円以上~15万円未満: 283万1925人
- 15万円以上~18万円未満: 299万8308人
- 18万円以上~21万円未満: 284万3094人
- 21万円以上~24万円未満: 157万8595人
- 24万円以上~27万円未満: 47万5674人
- 27万円以上~30万円未満: 10万530人
- 30万円以上~: 1万9283人
このデータから、厚生年金の受給額が月15万円以上の人は全体の49.8%と、半数を下回っていることがわかります。
厚生年金に加入していなかった人を含めると、この割合はさらに低くなることが予想されます。
4.2 注意点:年金の「額面」と「手取り」の違いとは?天引きされる税金・社会保険料
ここで注意すべき点は、これまで見てきた年金額がすべて「額面」であるということです。
現役時代の給与と同様に、支給される年金からも税金や社会保険料が天引きされます。
具体的に天引きされる主な項目は以下の通りです。
- 介護保険料
- 国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)
- 所得税
- 住民税
つまり、額面で月15万円が支給される場合でも、これらの費用が差し引かれるため、実際に口座で受け取る「手取り額」はそれよりも少なくなります。
「ねんきん定期便」などで将来の受給見込み額を確認する際には、この「天引き」を考慮に入れ、実際に手元に残る金額を基に老後の生活設計を立てることが大切です。
5. 筆者からのコメント
厚生年金の平均額が約15万円と聞くと「なんとか暮らせそう」と思うかもしれませんが、実態は二極化しています。
特に女性の平均額は約11万円、15万円以上もらえる人はわずか12.3%にすぎません。
現役時代のキャリア中断や賃金格差が、引退後の年金額にダイレクトに跳ね返る仕組みになっているからです。 さらに、年金額は「額面通り」に受け取れるわけではありません。
介護保険料や健康保険料、税金が天引きされ、実際の手取りは1割〜2割ほど目減りします。
「ねんきん定期便」の額面だけを見て楽観視するのではなく、早い段階で自分の「手取りベース」の受給額を予測し、不足分をどう補うか真剣に考える必要があります。



