受注高は倍増。業績の谷と回復が同時に起きている
今期の受注高は2,375億円と、前期の1,052億円から倍以上に膨らんだ。とりわけ主力の半導体関連装置は、受注高が前期比で3倍を超えている。期末の受注残高も3,229億円と高い水準を保つ。
会社は、主要販売先である半導体業界で、AIデータセンター向けの需要が一段と高まり、CPUやGPU、HBMといった先端半導体への旺盛な投資が市場の成長をけん引したと説明している。減収の当期と、受注の回復とが、同じ決算のなかに同居している。
AI半導体の本命銘柄は業績も一本調子で伸びる、というイメージが先に立ちやすい。だが実際には、当期の売上は前年を下回り、その裏で受注が倍増していた。売上という遅行指標の谷と、受注という先行指標の山を、同時に見比べる必要がある局面だ。
実質無借金の財務と、高いバリュエーションの持続性
財務は厚い。自己資本比率は73.3%で、有利子負債を持たない実質無借金の状態にある。手元資金も潤沢で、受注が変動しても事業を回す体力は高い。
もっとも、負債をほとんど使わない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点だ。ROEはかつて40〜50%台という高水準にあり、今期は利益減で低下したとみられるが、それでも高い部類に入る。厚い自己資本の上でこの資本効率をどこまで保てるかが、次の焦点になる。
PBR14倍という株価は、来期以降の増収増益が続くことを前提に置いた水準だと読み取れる。受注の回復が実際の売上として積み上がるか。そこが確認できるまでは、株価の振れは大きいまま続きやすいだろう。
筆者コメント
この決算の読みどころは、減収減益という見出しと、受注倍増という中身の落差にある。
装置メーカーの業績は、受注・売上・利益が同じ拍子で動かない。受注が先に動き、売上が遅れて追いかけ、利益はそのさらに先で変動する。今期は、売上と利益が過去の受注の谷を映す一方で、足元の受注はすでに山へ向かっていた。
だからこそ、この一年の減益をもって成長が止まったと結論づけるのは早い。会社が来期に大幅な増収増益を見込むのも、手元の受注残という裏づけがあるからだと考えられる。
ただし、株価がPBR14倍という高い評価を保っている点は忘れたくない。高い期待が乗っているぶん、受注が売上へ変わる速度が想定より遅れれば、株価は敏感に反応する。
業績の谷では見出しの数字に引きずられがちだが、受注高と受注残という先行指標を並べて追う姿勢をおすすめしたい。数字が動く順番を知っておくことが、この銘柄では特に効いてくる。
参考資料
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石津 大希