13年12月に、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。「日本人が米を食べなくなった」とはいえ、日本人にとって、米食に基づく和食は、文化や伝統とも深く結びついた大切なものです。

和食は、多様で新鮮な食材、素材を活かす調理方法、自然や四季の美しさが表現された盛り付けなどに加えて、健康的であることも高く評価されています。

素材そのものを味わうための薄味、出汁の活用による動物性油脂の使用量の少なさは、日本人の長寿や肥満防止にも大いに役立っていると考えられています。日本では和食は他の選択肢に押されつつありますが、海外では和食ブームが長く続いています。

農林水産省の「海外における日本食レストランの数」(※4)によると、海外の日本食レストランは、06年に約2.4万店だったものが、17年には約11.8万店まで拡大しています。

また、和食は、日本の食料自給率を考える上でも非常に重要です。

日本の食料自給率(18年度)は、カロリーベースで37%、生産額ベースで66%であり、長期的に低下傾向にあります。これは、海外諸国と比較しても低い水準であり、政府では、25年度までに、カロリーベースで45%、生産額ベースで73%まで向上させることを目標にしています。

食料自給率の低下傾向の大きな要因の1つが、まさに、「日本人が米を食べなくなった」ことです。米の自給率は97%と非常に高い一方で、小麦の自給率は12%と米に比べ大きく劣ります。

多くの選択肢から選べ豊かな食生活を送ることができるのは、もちろん素晴らしいことです。一方、和食は、日本の文化や伝統とも深く結びついており、健康的であり、さらに高自給率にも結び付きます。日本が世界に誇れる、米食に基づく和食を、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。

中食での米食の拡大に期待

近年の食生活における大きな傾向の1つが、「中食(なかしょく)」の増加です。中食とは、家庭外で調理された食品を購入して、家庭内で食べる食事で、コンビニ弁当、スーパーやデパ地下の総菜、出前などが該当します。日本惣菜協会によると、日本の中食の市場は年々拡大しており、18年には、10兆円を超える規模となっています。

米を買って家で調理する代わりに、おにぎりを購入するケースなどが増えており、中食による米食の拡大余地は十分にあると考えられます。

前述した農林水産省の「主食用米消費動向の中期的変化及び要因分析」によると、米よりもパンを選ぶ理由について、「いろいろな種類の主食を食べたいから」 の他にも、とくに朝食においては、「軽く食べられるから」、「短時間で食べられるから」という意見が多くなっています。高齢世帯、単身世帯、共働き世帯が増加する中で、是非の議論はあるかもしれませんが、朝食に限らず、簡便性を求める傾向はより強くなっていくでしょう。

中食ならば米を選んでも、軽く、短時間で食べることが可能です。消費者のニーズや時代にあった中食での米食製品の開発は、米食拡大に寄与するものだと考えます。

また、19年10月からスタートする消費増税下において、中食は軽減税率の対象となります。そのことも、中食へのさらなる追い風となるでしょう。

最後に、この記事が、和食の良さを再度確認する機会となり、中食も含め、食生活に米食を多く取り入れることに繋がれば、幸いです。

【参考】
※1「家計調査/家計収支編 二人以上の世帯 年報」(但し、1999年以前は、農林漁家世帯を除く結果の統計)総務省統計局
※2「食糧需給表(平成30年度)」農林水産省
※3「主食用米消費動向の中期的変化及び要因分析」農林水産省
※4「海外における日本食レストランの数」農林水産省

広瀬 まき