老後資金のラストスパートとして、50代からiDeCo(個人型確定拠出年金)を検討する人が増えているようです。

一方で、「今から投資をして、もし受け取る時に暴落したらどうしよう…」と不安に思う方も多いでしょう。運用期間が限られている50代のiDeCoにおいて一番大切なのは、増やすこと以上に「どうやって守り切るか」という出口戦略です。

三石 由佳

「出口戦略」と聞くと難しく感じますが、簡単に言えば「増えたお金を安全な場所にうつすこと」です。

「もっと増やそう」と攻める姿勢も重要ですが、受け取り時期が近づいたら、早めに元本保証の定期預金などへの移し替えを意識できるといいですね。

今回は、ご自身の知識や性格に合わせて無理なくできる利益の守り方と、注意すべきポイントを元銀行員の視点で解説します。

1. 50代向けiDeCoの出口戦略でわかる3つのポイント

  •  50代のiDeCoは無理のない掛金を設定し、10年間という期間でも複利効果を活かして着実に増やす
  •  受け取り前に「スイッチング」等で利益を確定させる出口戦略を検討する
  •  60歳で受け取るために必要な「加入期間10年ルール」に注意

2. 50代のiDeCo、周りは毎月いくら積み立てている?

いざ始めようと思っても、「毎月いくら積み立てればいいのか分からない」という声もよく耳にします。まずは、すでにiDeCoを活用している人たちがどのくらいの金額を設定しているのか見てみましょう。

iDeCoの掛金は、職業や会社の企業年金制度の有無によって上限額が異なります。会社員の場合は月額1万2,000円〜2万3,000円の範囲になることが多いため、平均してもおおむね1万5,000円〜2万円弱の間に落ち着く傾向があります。

iDeCoは原則60歳まで引き出すことができないため、日々の生活費を圧迫しないよう、ご自身の家計に合った無理のない金額(月5,000円からでも可能)で設定し、長く続けることが大前提となります。

3. 50代からの10年間。積立投資でどれくらい差がつく?

無理のない掛金が決まったら、次は50歳から60歳までの10年間、実際に積み立てた場合をシミュレーションしてみましょう。仮に毎月2万3,000円を積み立てた場合、定期預金と投資信託でどれほどの差が出るのでしょうか。

  • 定期預金(年利0.1%と仮定): ほぼ元本のまま(277万円)
  • 投資信託(年利3%で運用): 321万円
  • 投資信託(年利5%で運用): 355万円

10年間という限られた期間であっても、投資信託を活用することで複利の効果が得られ、老後資金を効率よく増やせる可能性があります。

しかし、これはあくまで「右肩上がりで順調に運用できた場合」です。60歳の受け取り直前に大きな暴落が起これば、せっかく増やした資産が一気に減ってしまうリスクがあります。これを防ぐのが、次にお伝えする「出口戦略」です。

三石 由佳

「出口戦略」と聞くと難しく感じますが、簡単に言えば「増えたお金を安全な場所にうつすこと」です。

「もっと増やそう」と攻める姿勢も重要ですが、受け取り時期が近づいたら、早めに元本保証の定期預金などへの移し替えを意識できるといいですね。

4. 出口戦略の基本は「スイッチング」で利益を確定させること

預け入れた商品の残高を売却したお金で新しい商品を購入する「スイッチング(預け替え)」。この制度を効果的に活用していきましょう。

株式中心の投資信託で運用して順調に増えてきたら、目標金額に達したタイミングや、受け取りが迫ってきた50代後半の段階で、増えた利益(または資産全体)を「定期預金」などの元本確保型商品へ移しかえます。

通常、投資信託を売却して利益を確定させると約20%の税金がかかりますが、iDeCoの口座内であれば非課税のまま預け替えができます。相場が良い時に自らの判断で利益を確定させる。これがiDeCoの基本的な出口戦略となります。

4.1 投資初心者はどのように出口戦略を考えるか

とはいえ、投資初心者の方にとって「いつ相場が下がるか分からないのに、自分で預け替えのタイミングを判断する」というのは、非常にハードルが高いですよね。

難しいと感じる場合は、無理に自分でやろうとせず、最初から「自動で守ってくれる仕組み」を持った商品を選ぶのも一つの立派な戦略です。気になる方は「2035年」など自分が受け取りたい目標年に合わせて、ファンド側が自動でリスクを下げてくれる「ターゲットイヤー型ファンド」を調べてみるのも良いでしょう。

三石 由佳

ターゲットイヤー型ファンドは「お任せ」できる分、一般的な株式のインデックスファンドに比べて、保有中にかかる手数料(信託報酬)が割高に設定されていることが少なくありません。

手数料は確実に運用成績を押し下げる要因になるため、「お任せする分のコスト」として自分が納得できる水準かどうか、購入前に必ず目論見書などで確認するようにしてください。