「今から新NISAを始めても遅くないのだろうか」。定年退職の時期が少しずつ現実味を帯びてくる50代になると、こうした迷いを感じる方が増えてきます。投資期間が短くなる分、思うように資産が増えないのではないか、大きく減らしてしまったら取り返しがつかないのではないか、という不安から一歩を踏み出せない方も少なくありません。

今回は、新NISA制度の基本を確認したうえで、月3万円を10年間積み立てた場合の資産額を試算し、投資を始める年代によって結果がどう変わるのかを見ていきます。そのうえで、実際に50代の方から寄せられたご相談と、ファイナンシャルアドバイザー・川勝隆登からのアドバイスを紹介します。

ココがポイント
  • 月3万円を10年間積み立てた場合、年利3%なら資産額は約419万円(運用益約59万円)
  • 投資期間が長いほど複利効果は大きいが、50代からの10年間でも増加効果は見込める
  • 非課税保有期間は無期限化されたため、60歳以降も非課税のまま資産を持ち続けられる

1. 「今から新NISAを始めても遅い」は本当か

新NISAは2024年1月からスタートした制度で、それ以前のNISAと比べて長期投資がしやすい設計に変わっています。

年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、併用すると年間最大360万円まで投資できます。生涯で使える非課税保有限度額(総枠)は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)です。

特に50代の方に知っておいていただきたいのが、非課税保有期間が無期限になった点です。以前のつみたてNISAは非課税で保有できる期間が20年間と決まっていましたが、新NISAではその制限がなくなりました。つまり、60歳や65歳で積立をやめたとしても、そのまま非課税の状態で資産を保有し続け、運用を継続することができます。

「定年までの期間が短いから今から始めても意味がない」というのは誤解で、積立をやめた後の保有期間も含めて考えれば、50代からのスタートでも十分に活用できる制度だといえます。

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新NISA制度の概要(2024年以降)

出所:金融庁「NISAを知る」をもとにLIMO編集部作成

2. 月3万円を10年間積み立てるとどうなる?

それでは、実際に50代から新NISAで積み立てを始めた場合、資産額はどの程度になるのでしょうか。ここでは、毎月3万円を10年間積み立てたケースを、年利0%(元本のみ)・1%・3%・5%の4パターンで試算しました。

10年間の積立元本は360万円です。これに対し、年利1%で運用できた場合は約378万円(運用益約18万円)、年利3%であれば約419万円(運用益約59万円)、年利5%であれば約466万円(運用益約106万円)という試算結果になりました。利回りが高くなるほど、同じ積立額でも最終的な資産額の差が大きく開くことが分かります。

月3万円を10年間積み立てた場合の資産額(利回り別・試算)2/3

月3万円を10年間積み立てた場合の資産額(利回り別・試算)

試算:毎月の積立額と利回りをもとにした複利計算(金融庁「つみたてシミュレーター」と同様の考え方にもとづきLIMO編集部が試算)

ここで注意したいのは、1%・3%・5%はあくまで説明のために置いた仮定の利回りであり、実際の運用成果を保証するものではないという点です。

投資信託などの運用商品は市場の動き次第で値上がりも値下がりもするため、必ずしもこの通りの結果になるとは限りません。あくまで「利回りによってどのくらい差が出るか」のイメージをつかむための試算として捉えてください。

3. 投資を始める年代によって、資産額はどう変わるか

次に、月3万円・年利3%という条件を固定したまま、投資を始める年代によって最終的な資産額がどう変わるかを見てみましょう。

50代から始めて10年間積み立てた場合は積立元本360万円に対して約419万円(運用益約59万円)、40代から始めて20年間積み立てた場合は元本720万円に対して約985万円(運用益約265万円)、30代から始めて30年間積み立てた場合は元本1,080万円に対して約1,748万円(運用益約668万円)という試算になります。

投資を始める年代による資産額の違い(月3万円・年利3%で試算)3/3

投資を始める年代による資産額の違い(月3万円・年利3%で試算)

試算:毎月の積立額と利回りをもとにした複利計算(金融庁「つみたてシミュレーター」と同様の考え方にもとづきLIMO編集部が試算)

積立期間が長いほど運用益の占める割合が大きくなり、複利効果の恩恵をより大きく受けられることが分かります。とはいえ、50代から始めた10年間でも約59万円の運用益が試算されており、「今から始めても遅い」と決めつけて何もしないよりは、早く始めるほど有利になるという点は変わりません。

4. 年齢に応じたリスクとの向き合い方

投資期間が短くなる50代では、資産を「増やすこと」と同じくらい「大きく減らさないこと」への意識も大切になります。定年までの期間が20代や30代と比べて短いため、市場が大きく下落した局面に遭遇した場合、回復を待つ時間の余裕が少なくなるからです。

そのため、新NISAの成長投資枠やつみたて投資枠を活用する際も、値動きの大きい商品に一括で投資するのではなく、積立によって購入時期を分散させたり、値動きの異なる複数の資産を組み合わせたりすることで、リスクを抑えながら資産形成を進める工夫が重要になります。

川勝 隆登
先ほどの試算で使った年利1%・3%・5%は、あくまで説明のための仮定の数字であり、将来の運用成果を保証するものではありません。
「今からでは遅いのでは」という迷いは、多くの方が抱える自然な感覚です。ただ、新NISAは非課税保有期間が無期限になったため、60歳や65歳で積立をやめたとしても、そのまま非課税で資産を保有し続けることができます。
まずは無理のない金額から始めて、制度に慣れていくこと自体が、50代からの資産形成では特に大切だと感じています。

5. 50代の相談者に、ファイナンシャルアドバイザーがアドバイスしたこと

実際に、50代の会社員の方から「これまでは預金を中心に手堅く資産を管理してきたが、新NISAに興味を持った。ただ、定年までの約10年間という期間で、年齢的に今から始めても間に合うのか不安」というご相談をいただきました。

この相談に対し、ファイナンシャルアドバイザーである筆者は、年齢を理由に「今からでは遅い」と決めつけず、まずは制度の仕組みと非課税のメリットを正しく理解したうえで、無理のない金額から始めることを提案しました。そのうえで、定年までの期間が短い50代では、積極的に増やすことだけを目的にするのではなく、年齢に応じてリスクを抑えた資産配分を意識すること、そしてNISAでの積立に加えて低リスクで中長期の資産形成に適した方法も組み合わせ、一つの制度に偏らずに分散させることの3点をアドバイスとして伝えています。

相談者の方は、こうしたアドバイスを踏まえて、無理のない範囲の金額から積立をスタートしつつ、年齢に応じたリスク管理と、値動きの異なる資産の組み合わせによる分散を意識する方針にたどり着きました。年齢を理由に始めることをためらう前に、制度の仕組みを正しく知り、自分の年齢やライフステージに合わせたリスク分散の方法を整理してみることが、50代からの資産形成の出発点になります。