新NISAをきっかけに投資を始めた方の間で、「とりあえずオルカン(全世界株式インデックスファンド)を一本買っておけば安心」という声をよく耳にします。
世界中の株式に分散投資できる商品として人気を集めていますが、その中身を知らないまま「一本で万全」と思い込んでしまうと、見落としがちなリスクもあります。
今回は、人気の投資信託「オルカン」の国・地域別の構成比と、預金だけで資産を持ち続けることのリスクをデータで確認したうえで、実際に50代の方から寄せられたご相談と、ファイナンシャルアドバイザー・松本真奈からのアドバイスを紹介します。
- オルカンは全世界株式ファンドだが、米国が構成比の約6割を占めている
- 預金は名目上減らなくても、物価上昇が続けば実質的な価値は目減りする
- 2026年6月の全国消費者物価指数は前年同月比+1.7%、資産の分散を考えるきっかけに
1. 「オルカン一本」の中身を知っておこう
オルカンとは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の愛称で、三菱UFJアセットマネジメントが運用する投資信託です。世界各国の株式に時価総額加重平均方式で投資する仕組みで、購入時手数料が無料、信託報酬(運用にかかる費用)も低く抑えられていることから、投資信託デビューの一本として選ばれることが多い商品です。
ただし「全世界」という名前から、世界中に均等に分散されているとイメージする方も多いのですが、実際の中身は大きく偏っています。運用会社の月次レポートに基づく概算では、構成比の約6割を米国が占め、日本は約5%、その他の先進国(英国・カナダ・フランス・スイスなど)が約27%、中国・インド・台湾などの新興国が約8%となっています。
オルカン(全世界株式インデックス)の国・地域別構成比(概算)1/2
出所:運用会社(三菱UFJアセットマネジメント)の月次レポートに基づきLIMO編集部が作成(2026年8月時点の目安、比率は月ごとに変動)
2. オルカンに潜む「米国集中」というリスク
時価総額加重平均方式は、企業の時価総額(株価×発行済株式数)が大きいほど組み入れ比率も高くなる仕組みです。
世界の株式市場では米国企業の時価総額が突出して大きいため、「全世界株式」に投資しているつもりでも、実質的には米国企業の値動きに大きく左右される構造になっています。
これは、米国経済や米国株式市場が好調なうちは恩恵を受けやすい一方で、米国市場が大きく下落する局面では、オルカン全体の基準価額も連動して下落しやすいことを意味します。「全世界に分散しているから安心」と考えるだけでなく、実際にはどの国にどれだけ偏っているのかを把握しておくことが、投資判断のうえで重要になります。
オルカンを資産形成の土台としながらも、米国以外の資産や、株式とは値動きの異なる資産(債券など)を組み合わせることで、特定の国や資産の下落による影響を和らげやすくなります。
「一本で終わり」ではなく「一本を軸に広げる」という発想を持っておくとよいでしょう。
3. 「預金は減らないから安心」の落とし穴
投資に踏み出せない理由として、「元本割れが怖いから預金のままにしておきたい」という声もよく聞かれます。
たしかに、預金は口座の残高(額面)が勝手に減ることはありません。しかし、物価が上がり続けるインフレの環境下では、同じ金額で買えるモノやサービスの量が減っていくため、お金の実質的な価値は目減りしていきます。
総務省統計局の発表によると、2026年6月分の全国消費者物価指数(総合)は前年同月比で1.7%の上昇となりました。仮にこの1.7%という上昇率が今後も続いたと仮定して試算すると、金利のほぼつかない預金に100万円を置いたままにした場合、1年後の実質的な価値は約98.3万円、5年後は約91.9万円、10年後には約84.5万円まで目減りする計算になります。
100万円を金利のほぼつかない預金に置いた場合の実質価値の目減り(試算)2/2
試算:2026年6月の全国消費者物価指数・前年同月比(+1.7%)が続いたと仮定した場合(総務省統計局のデータをもとにLIMO編集部が試算)
額面上は100万円のままなので、通帳を見ているだけでは「減っていない」と感じてしまいますが、実際に買えるモノの量という視点で見ると、着実に目減りが進んでいることが分かります。これが「預金だけで資産を持ち続けることのリスク」の正体です。
大切なのは「今の預金が絶対に安全」でも「投資すれば必ず増える」でもなく、預金にも投資にもそれぞれのリスクがあることを理解したうえで、両方をバランスよく持っておくという考え方です。
4. 米国集中リスクとインフレリスク、両方に備えるには
ここまで見てきたように、オルカン一本で資産を持つ場合は米国市場への集中というリスクがあり、預金だけで資産を持つ場合は物価上昇による実質的な目減りというリスクがあります。どちらか一方が絶対的に正しいということではなく、それぞれの特徴を理解したうえで、株式・預金・債券など値動きの異なる資産を組み合わせておくことが、リスクを抑えながら資産形成を続けるための基本的な考え方になります。
「オルカン一本で大丈夫か」「預金のままでよいのか」といった迷いは、多くの方が同じように抱えるものです。次のページでは、実際に50代の方から寄せられたご相談と、ファイナンシャルアドバイザーからの具体的なアドバイスを紹介します。
