9. 【もう一つの損得勘定】現役時代のキャリアで大きく変わる《老後の年金》5パターンで紹介
単に「現在の年収の差」だけで老後の年金を単純計算するのは禁物です。
実際には、税金や社会保険料の天引きが発生するほか、キャリアの歩み方や厚生年金の加入期間によって受給額は大きく左右されます。
厚生労働省が提示する2026年度(令和8年度)のライフコース別年金試算(65歳受給開始)を見ると、現役時代の働き方との相関性は歴然です。
- 男性(厚生年金中心):月額 17万6793円 (平均厚生年金期間:39.8年/現役時の平均収入:50.9万円)
- 男性(国民年金中心):月額 6万3513円 (平均厚生年金期間:7.6年/現役時の平均収入:36.4万円)
- 女性(厚生年金中心):月額 13万4640円 (平均厚生年金期間:33.4年/現役時の平均収入:35.6万円)
- 女性(国民年金中心):月額 6万1771円 (平均厚生年金期間:6.5年/現役時の平均収入:25.1万円)
このように、現役時代の働き方や厚生年金への加入状況次第で、将来受け取る額には倍以上の開きが生じます。
「年収800万円」の激務を選んでも、心身を壊して早期離職し、厚生年金の加入期間が途切れてしまっては老後の首を絞めかねません。
目先の額面にとらわれず、「無理なく長く働き続け、厚生年金キャリアを安定して積み重ねられるか」という視点を持つことこそが、老後の生活設計においても真の安定につながります。
公的年金のしくみや、今のシニア世代の受給状況については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
10. まとめ
厚生労働省の最新統計から見えるのは、雇用形態や学歴、企業規模、役職、地域によって給与に大きな差が存在するという現実です。
そして377人への調査からは、多くの人が額面の年収以上に「残業の少なさ」や「働きやすさ」を重視しているという本音が浮かび上がりました。
年収は高いに越したことはありません。しかし、その年収を得るために毎月何十時間もの残業をこなし、心身をすり減らし、結局は早期に離職してしまうのであれば、本末転倒とも言えます。
転職や就職先を選ぶ際は、年収の数字だけに目を奪われず、実際の労働時間や離職率、研修制度まで含めて総合的に判断することが、後悔のない選択につながりそうです。
11. 筆者からのコメント
「年収が高い会社」と「長く働ける会社」は、しばしば対立するものとして語られます。
しかし年金試算まで視野に入れると、両者は対立ではなく時間軸の違いであることが分かります。
年収は単年の指標ですが、厚生年金は加入期間という"継続"が効いてくる仕組みだからです。
厚生年金中心の男性が月17万6793円、国民年金中心が6万3513円。この差を生んだのは、収入の高さそのものよりも「39.8年」対「7.6年」という加入期間の差と言えるでしょう。
つまり、無理なく働き続けられる環境を選ぶことは、単なる働きやすさの追求ではなく、老後資金の設計そのものなのです。
もちろん、年収を上げる努力を否定するものではありません。
大切なのは、目先の額面と生涯の積み上げ、その両方を天秤にかけたうえで自分なりの答えを出すこと。
85.7%という数字は、多くの人がすでにその計算を始めていることの表れなのかもしれません。


