では、ステップ2の「老後の支出合計」はどのくらいなのでしょうか。

総務省統計局 の「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)平均結果の概要」では、世帯主の年齢層階級別消費支出額を開示しており、60~69歳の年齢層(2人以上世帯)では29万1,019円、70歳以上では23万7,034円となっています。

ここでは仮に、65歳で定年退職をし、その後は調査報告どおりの支出額が続いたとします。年間の支出額は以下のように計算できます。

60~69歳 約29万円×12カ月=348万円
70歳以上 約23万5,000円×12カ月=282万円
65歳の定年退職後、老後が25年だとすると支出合計は、(348万円×5年)+(282万円×20年)=7,380万円です。

一方、生命保険文化センターの「平成28年度(2016年度)生活保障に関する調査」によれば、「ゆとりある老後生活費」は月額34.9万円(夫婦2人)とされています。こちらの金額で退職後の支出額を計算すると以下のようになります。

約35万円×12カ月×25年=1億500万円

老後に1億円が必要という根拠はこのあたりにあるのでしょう。

老後を迎えるまでにどれくらい貯蓄をしなければならないか

退職後の25年間に貰える年金は6,000万円で、老後生活に必要なのは7,380万円、ゆとりある生活なら1億500万円ということを確認しました。単純に考えると、差額の1,380万円もしくは4,500万円が退職までに貯蓄しておくべき老後資金です。

メディアでも老後資金が取り上げられることは多いですが、忘れられがちなのは「若くから始めている資産運用は、老後も問題なく続けられる」という点です。「人生100年時代」といわれるなか、これまでの老後に向けた貯蓄という考え方を変え、早いうちから長いスパンで資産運用をするのが当たり前の時代が来ているのかもしれませんね。

老後資金を30歳から貯めるヒント

では、老後資金を貯蓄する具体的なコツをみてみましょう。30代から貯蓄に取り組む場合、以下のことを意識して始めてみましょう。

人生のロードマップを作る

現時点であまり貯金がない場合、これから先の人生を見通すことで、貯めるべき金額をイメージすることができます。まずはあなたの人生のロードマップを作ってみましょう。

マイホームを購入する時期や退職する年齢、車の買い替えや希望する子どもの人数やタイミングなど、あらゆるライフイベントを書き出します。ロードマップが完成したら、それぞれの項目に必要な金額を書き込んでみましょう。想像以上にお金が必要であることがわかるのではないでしょうか。

そこで、まずは「1,000万円を貯める」という目標を立ててみましょう。30代の方なら、5年で貯めるよう取り組むのがおすすめです。1年で200万円を貯めると思うとハードルが高く感じるかもしれませんが、数年後からキャリアがどんどん積み上がることを考えると、収入アップも期待できます。そこまで収入が期待できないなら、転職を視野に入れるのもいいでしょう。

お金を貯めるために始めたい5つの習慣

1,000万円を貯めるモチベーションはあるけれど貯蓄はない……。そんな人でも、毎日のちょっとした習慣で、お金が貯まる流れを生み出せます。次のような習慣を身につければ、自然とお金が貯まるようになりますよ。

1.家計簿をつける

ついやってしまいがちな無駄遣いを減らすためにも、家計簿をつけるようにしましょう。本格的な家計簿ではなく、普通のノートに毎日の支出内容を記入するだけでかまいません。自分の出費の傾向を掴むことで、「明日からは食費を減らそう」「来月は飲み会代を抑えよう」といった意識が芽生えます。

2.お昼ご飯を持参する

昼食代に1日1,000円かかっている場合、1カ月にすると2万円前後になります。こうして見ると、結構大きな出費ですよね。

そこで、「平日のお昼ごはんはいつも外食」という方はお弁当を持参してみましょう。前日の夕食の残りを詰め合わせるだけでも構いません。1日300円ほどでお弁当を用意すれば、差額はそのまま貯金に充てることができます。

3.買い物の予定を書き出す

翌日や来月に控えている購入予定品をリストアップしてみましょう。「なにをいつ買うか」が明確に分かるので、無駄遣いを防ぐことができます。

とくにシャンプーや洗剤といった日用品は、まだ家に在庫があるのに買い過ぎたり、不要なものまで買ってしまいがち。本当に購入すべきものを把握し、余計な出費は抑えておきましょう。

4.給料からの天引きで貯める

「手元にあるお金は全部使ってしまう」という方は、給料から天引きされる財形貯蓄や、給与振込口座に自動積立をつけるといった方法を試してみるのも選択肢のひとつです。毎月自動でお金が積み立てられていくので、手元のお金を使い切っても貯金用のお金を確保しておくことができます。

5.常に固定費を見直す

変動的な食費などの項目よりも、固定費を削った方が高い節約効果を得られます。保険料や通信費などの固定費を見直し、カットできる部分がないかを探してみましょう。

貯蓄額を増やすために運用しよう

貯蓄ができるようになっても、現在の金利はかなり低いので、普通預金やスーパー定期にお金を預けていても、ごくわずかの利子しか得られません。資産運用は本業以外の安定した収入源にもなります。

初心者の方におすすめなのは、厚生労働省の個人向け確定拠出年金であるiDeCo(イデコ)や、金融庁による少額投資非課税制度であるNISA(ニーサ)やつみたてNISA。非課税枠があるため、投資面だけではなく節税効果を得られるメリットがあります。

まとめ

充実した老後の人生を送るためにも、老後資金の準備はしっかりしておきたいですね。お金に対する向き合いかた次第で、お金の貯まりやすさは大きく変化します。お金を大事にすることで、無駄遣いが減っていき、計画的にお金を貯めていけるようになるでしょう。さっそく今日から、自分のお金とまっすぐ向き合ってみてくださいね。

【参考】
「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」厚生労働省
「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)平均結果の概要」総務省統計局
「平成28年度生活保障に関する調査」生命保険文化センター

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

 

LIMO編集部