物価高のなかで「働き続ける」シニアが増加しています。
企業の再雇用等で給与が低下しがちな60歳代以降を支えるため、雇用保険には手厚い給付金制度がありますが、これらはすべて「自らハローワークで申請する」必要があります。
この記事では、知らないと損をする60歳・65歳以上対象【雇用保険の給付3種類】を分かりやすく解説していきます。
また、退職時期による「失業給付と年金」の併用ルール、2026年度最新の「在職老齢年金の緩和措置」まで、賢く老後資金を守るための就労・年金受給戦略についても考えてみましょう。
1. この記事の3つのポイント
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シニアの生活は「公的年金」と「就労収入」の2本柱で支えられている -
働くシニア向けの雇用保険給付金は「申請主義」が採用されている -
制度を賢く活用して長く働くことが、貯蓄の減少を防ぎ老後の安心につながる
2. 60歳代・70歳代の生活資金源をデータで比較!年金だけで生活は可能か?
老後の生活費を年金だけでまかなうのは、多くの方にとって難しいのが実情です。
「少しでも長く働きたい」と考える方が増える中で、このような手厚い支援制度を知っているかどうかで、家計のゆとりは大きく変わってくるでしょう。
それでは、実際のシニア世代はどのような資金で老後の生活を成り立たせているのでしょうか。統計データからその実態を見ていきましょう。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、世帯構成にかかわらず、60歳代では公的年金に次いで「就業による収入(二人以上世帯:42.5%、単身世帯:29.2%)」が家計を支える重要な柱となっていることがわかります。
しかし70歳代になると、就労収入を生活の頼りにする人の割合は大きく減少し(二人以上世帯:18.7%、単身世帯:12.1%)、公的年金への依存度が一段と高まります。
同時に、年金だけでは不足する生活費を「金融資産(貯蓄)の取り崩し(二人以上世帯:27.6%、単身世帯:26.6%)」によって補っている実態も明らかになっています。
3. 【知らないと損】60歳以上が対象!雇用保険から受け取れる3つの給付金とは
働く意欲のあるシニア世代を経済的にサポートするため、雇用保険から支給される3つの給付金について、それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
3.1 再就職手当:65歳未満の早期再就職を支援する制度
再就職手当は、失業中の人が一日でも早く安定した職業に就くことを支援するための制度です。
そのため、再就職までの期間が短いほど、給付内容が手厚くなるように設計されています。
再就職手当の受給要件
- 対象者:雇用保険の基本手当の受給資格を持つ方
- 支給条件:基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある状態で、雇用保険の被保険者として再就職するなど、定められた要件を満たす必要があります。
再就職のタイミングで変わる給付率
- 給付額:就職日の前日時点における基本手当の支給残日数に応じて、給付率が変動します(計算結果の1円未満は切り捨て)。
- 支給日数が所定給付日数の3分の1以上残っている場合:「支給残日数の60%」
- 支給日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合:「支給残日数の70%」
再就職手当の計算式
再就職手当を受け取った後、新しい職場で6カ月以上働き、その間の給与が離職前の水準より低くなった場合は、「就業促進定着手当」の対象になる可能性もあります。
3.2 高年齢雇用継続給付:60歳から65歳未満で給与が減った場合の支援
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満で就労を続ける方を対象とした給付金です。
60歳時点の賃金と比較して、現在の賃金が75%未満に低下した場合、その低下した分の一部が支給される仕組みです。
高年齢雇用継続給付の支給対象条件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の方
- 支給条件:60歳時点の賃金と比べて75%未満の賃金で働き続けていること
高年齢雇用継続給付の支給額と支給率
- 支給額:各月に支払われる賃金の最高10%(※)に相当する額が支給されます。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%
高年齢雇用継続給付の支給率早見表(2025年4月1日以降)
注意点として、老齢年金(厚生年金)を受け取りながらこの給付金を受給した場合、在職老齢年金制度による支給停止とは別に、年金の一部が支給停止となることがあります。その額は最大で標準報酬月額の4%(※)に相当します。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%
3.3 高年齢求職者給付金:65歳以上で失業した際に受け取れる一時金
高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険被保険者が離職し、失業状態になった際に一時金として支給される給付金です。
高年齢求職者給付金の受給に必要な2つの条件
- 対象者:65歳以上の雇用保険加入者(高年齢被保険者)で、現在失業状態にある方
- 支給条件:以下の2つの条件を両方満たす必要があります。
- 離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6カ月以上あること
- 働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず、就職できていない「失業の状態」にあること
高年齢求職者給付金の支給額
- 支給される金額
- 雇用保険の加入期間が1年未満の場合:基本手当の30日分
- 雇用保険の加入期間が1年以上の場合:基本手当の50日分
この給付金の大きな特徴は、一時金として一括で支給される点にあります。
これは、65歳未満の方が受け取る基本手当(いわゆる失業手当)が、原則として4週間に1度、失業認定を受けてから支給される仕組みとは異なります。
4. 筆者からのコメント
高年齢雇用継続給付と年金「併給調整」の落とし穴 雇用保険の「高年齢雇用継続給付」を活用する際に注意したいのが、厚生年金との「併給調整」という実務上の盲点です。
実は、この給付金を受けると、在職老齢年金によるカットとは別に、さらに年金(厚生年金)が標準報酬月額の最大4%(2025年3月以前の対象者は6%)分が支給停止されてしまいます。
給与低下を補う雇用保険のメリットがある一方で、受け取る年金の一部が目減りする仕組みになっています。
ハローワークと年金事務所は窓口が分かれているため、事前に双方で「手取りベース」でのシミュレーションを依頼することが、退職後の最適な収入設計を立てるうえで大切になってくるでしょう。




