お盆の帰省で実家を片付けていたら、何年も記帳していない古い預金通帳が出てきた、という経験はないでしょうか。

あるいは、亡くなった親の遺品を整理していて、聞いたこともない銀行の通帳が見つかった、というケースもあるかもしれません。

加藤 聖人
実家の整理や相続をきっかけに、忘れていた口座の存在に気づいたという人も多いのではないでしょうか。今回は、そんな「古い通帳」が出てきたときにどう対応すればよいのか、休眠預金の仕組みとあわせて確認していきましょう。

10年以上入出金のない預金は「休眠預金」として扱われ、預金保険機構に移管される仕組みになっています。

今回は、休眠預金の基本的な仕組みと、実際に古い通帳を見つけた際にどう対応すればよいのかを、元証券マンの視点から解説します。

1. この記事を読むとわかる3つのポイント

  •  毎年約1200億円が「休眠預金」となり、うち約700億円は持ち主が名乗り出ないまま
  •  休眠預金になっても引き出しは可能。ただし郵政民営化前の定額郵便貯金などは20年2カ月で権利が消滅
  •  古い通帳を見つけたら「記帳→名義・住所確認→解約か活用かの判断」の3ステップで対応

2. 毎年1200億円が「休眠預金」に。そのうち700億円は「行方不明」

政府広報によると、10年以上取引のない預金は毎年約1200億円発生しています。

このうち約500億円は名義人からの申し出により払い戻される一方、残る約700億円は所有者が名乗り出ないまま休眠預金となっているのが実情です。

この700億円という規模を、別の角度から捉え直してみましょう。

休眠預金の平均残高について公的な統計はありませんが、仮に1件あたりの平均残高を1万円と仮定すると、単純計算で年間700万件もの口座が、持ち主に気づかれないまま眠り続けている計算になります。

しかも、これは1年だけの話ではありません。毎年これだけの数の口座が新たに生まれ続けており、この10年、20年という単位で見れば、日本中でどれだけの口座が「忘れられたまま」になっているか、想像もつきません。

「自分には関係ない話」ではなく、日本中の家庭に、少しずつ、しかし確実に、忘れられたお金が眠り続けているというのが実態です。

加藤 聖人
700億円という数字は、決して他人事ではない規模だと感じています。相続の場面で「こんな口座があったとは知らなかった」という話は一般的にもよくあるシーンではないでしょうか。

3. そもそも「休眠預金」とは?

休眠預金等活用法により、2009年1月1日以降に最後の入出金等があった預金等について、その後10年以上取引がないものが「休眠預金」の対象となります。

対象は普通預金、定期預金、貯金、定期積金などで、財形貯蓄や外貨預金、マル優が適用されている預貯金などは対象外です。

休眠預金等になりうる「預金等」の種類2/2

休眠預金等になりうる「預金等」の種類

出所:金融庁「長い間、お取引のない預金等はありませんか?」

金融機関は、最後の取引から9年が経過し、10年6ヶ月を経過するまでの間に、「公告」と預金者への「通知」を並行して行います。具体的には、残高1万円以上の預金者に対して登録住所等へ直接「通知(郵送またはメール)」を発送する一方、それとは別に、近く休眠預金になりそうな預金全体のリスト(個人特定情報は含まない)を自社のウェブサイト等で「公告」します。

つまり、いきなり預金が消えてしまうわけではなく、事前に通知が届く可能性がある、という点は知っておいて損はありません。

なお、休眠預金になった後も、預金そのものが消滅するわけではありません。通帳やキャッシュカード、本人確認書類などを用意し、もともと取引のあった金融機関の窓口で所定の手続きを行えば、原則としていつでも引き出すことができます。ただし、特に注意したい例外が「郵政民営化(2007年10月1日)より前」に郵便局に預けた定額郵便貯金などの定期性貯金です。これらは休眠預金法の対象外であるだけでなく、満期から20年2ヶ月を経過すると旧郵便貯金法に基づき権利が消滅し、本当に払い戻しが受けられなくなってしまいます。

加藤 聖人
通知が届くとはいえ、住所変更が反映されていなければ手元に届きません。実家を離れて長い方や、独身時代の口座を残している方ほど、この点は見落としがちなので注意が必要です。

4. なぜ休眠預金は生まれる?

休眠預金が生まれる背景には、いくつかの典型的なパターンがあります。

例えば、転職や退職に伴う給与振込先の変更、結婚・転居による生活拠点の変化、あるいは独身時代や学生時代に作った口座をそのまま使わなくなるケースなどです。

また、相続の場面でも同様のことが起こります。亡くなった家族がどの金融機関に、どれだけの口座を持っていたかを、家族全員が正確に把握しているケースは、実はそれほど多くありません。

本人が忘れていた口座は、周囲の家族にとっても「存在自体を知らない口座」になってしまいます。

こうした背景を踏まえると、休眠預金は特別な人だけに起きる話ではなく、誰にでも起こりうる、ごく身近な現象だといえるでしょう。

加藤 聖人
転職や結婚を機に取引先を変えた方は、古い口座をきちんと解約せずそのままにしていないか確認してみましょう。

5. 「古い通帳」を見つけたら、まずやるべき3つのこと

古い通帳を見つけた際に、まず行うべきことを3つに整理します。

①記帳して、現在の残高を確認する

通帳が何年も前のものであっても、金融機関の窓口やATMで記帳すれば、最新の残高を確認できます。まずは「いくら入っているのか」を正確に把握することが出発点です。

②名義・住所の変更漏れがないか確認する

結婚による姓の変更や、引っ越しによる住所変更が、その口座に反映されていないケースは少なくありません。変更が漏れていると、後の解約や振込先変更などの手続きがスムーズに進まない原因になります。

③「解約するか」「活用するか」を判断する

残高が少額であれば、口座を解約して手元の資金として整理するのも一つの方法です。一方、まとまった金額が眠っていた場合は、そのまま放置するのではなく、NISA口座での運用など、資産全体の配分を見直す好機と捉えることをおすすめします。「忘れていたお金」が見つかったタイミングは、家計全体を棚卸しする絶好の機会でもあるのです。

加藤 聖人
3つのステップの中でも特に見落とされがちなのが②の名義・住所変更です。解約や振込先変更の手続きで思わぬ足止めを食うケースもあります。

6. 預金だけじゃない、証券口座・保険も要注意

休眠状態になりやすいのは、預金だけではありません。

かつて開設したものの、その後利用していない証券口座(特定口座やNISA口座)、あるいは契約内容をほとんど覚えていない生命保険や損害保険なども、同じように見直しの対象になります。

証券口座の場合、口座管理料がかからないケースも多いため、放置されていても気づきにくいという特徴があります。

保険についても、保障内容が今のライフスタイルに合っているかどうかを確認しないまま、契約だけが続いているケースは珍しくありません。

お盆で古い通帳を見つけたことをきっかけに、こうした金融資産全体を一度棚卸ししてみてはいかがでしょうか。

そして、自分では把握しているつもりでも、万が一のとき、家族がその資産の存在を知らなければ、結局は「忘れられた資産」になってしまいます。

口座の一覧や金融機関名だけでも、家族と共有しておく、あるいはエンディングノートのような形で記録しておくことが、将来の相続の場面でのトラブル防止にもつながります。

加藤 聖人
証券口座は口座管理料がかからないことが多い分、本人も存在を忘れがちです。年に一度、保有している金融資産の一覧を家族と共有しておくだけでも、いざというときの安心材料になります。