5. 【新NISA】体感インフレ34%というギャップ——「先送り」がリスクになる理由

みなとアセットマネジメント株式会社が2026年7月に実施した「家計防衛の実態調査」(30〜60代の男女1012人が対象)によると、物価高を実感している人は約9割にのぼり、なかでも食料品を負担に感じる人は92.5%と最多でした。

総務省が毎月公表する消費者物価指数は2%程度で推移していますが、同調査による「生活者のインフレ実感」に関するデータは下記のようになっています。

  • 生活者の体感インフレ率(平均):34.0%
  • 物価高を実感している人の割合:約9割超
  • 食料品の負担を感じる人の割合:92.5%

政府統計とのこの大きな乖離は、日々の買い物で頻繁に触れる食料品や日用品の値上がりが、体感を強く左右していることの表れだと考えられます。

預貯金だけで資産を持ち続けた場合、公式統計以上のペースで実質的な価値が目減りしている可能性があるということです。

「まとまった資金ができてから始めよう」と先送りするほど、この目減りの影響を長く受け続けることになります。少額であっても早く始め、時間を味方につけることの意味が、こうした調査結果からも見えてきます。

6. 【新NISA】「出口」でも変わる時代に——金融所得の新基準と非課税メリットの見直し方

資産を「増やす」段階だけでなく、将来「どう使うか」という出口の設計にも、見過ごせない変化が生まれつつあります。三菱UFJ信託銀行のMUFG資産形成研究所が2026年8月に公表したレポートでは、健康保険法改正により、75歳以上の後期高齢者医療制度で金融所得を医療保険料や窓口負担割合の判定に反映する方向性が示されたことが指摘されています。

これまで資産額中心だった判定基準に、実現した所得(利益確定のタイミング)も影響し得るということです。同レポートは、75歳前に利益を確定するか75歳以降に課税口座で譲渡益を計上するかで、将来の医療保険料や窓口負担割合に差が生じる可能性があると指摘し、NISAの使い方も出口戦略の重要な要素になるとしています。

新NISAは値上がり益や分配金がそもそも非課税のため、こうした所得判定の影響を受けにくいという特徴があります。

「いくら積み立てるか」だけでなく「将来、いつ・どの口座から取り崩すか」まで視野に入れておくことが、これからはより重要になりそうです。制度の詳細は今後の運用状況によって変わり得るため、最新情報は所管省庁や専門家に確認することをおすすめします。

7. まとめにかえて|物価高・金利上昇の今だからこそ、続けられるペースで一歩を

月10万円を短期間で積み立てる方法も、月3万円を長期間積み立てる方法も、新NISAを利用した積立投資は時間を味方につけながら資産形成を支える有力な選択肢です。

ただし、投資では「始めること」だけでなく「無理なく続けられること」も同じくらい重要です。生活費や万一に備える預貯金を確保したうえで、余裕資金の範囲内で続けることが、長期的な資産形成につながります。

物価上昇や金利をめぐる環境が変化し続けるなかで、預貯金だけで資産の実質的な価値を維持するのは簡単ではありません。新NISAのような税制優遇の仕組みを理解し、将来の受け取り方まで含めて判断材料を増やしていくことが大切です。

8. 【筆者コメント】

熊谷 良子

株式会社kochiraが2026年7月に新NISA利用者300人を対象に実施した調査では、72.66%が「利益を狙う"攻め"だけでなく、資産を守る"守り"の視点も必要」と回答しています。相場下落による元本割れへの不安を挙げた人は約4割にのぼり、インフレ・物価上昇に備えられることを重視する人も約半数を占めました。

積立投資は長く続けるほど複利の効果を得やすくなりますが、同時に相場が大きく下落する局面を経験する可能性も高まります。

「攻め」の資産形成と並行して、預貯金や生活防衛資金といった「守り」の部分をどう保つかを考えておくことが、結果的に投資を長続きさせることにつながります。

今回のシミュレーションを参考にしつつ、ご自身の家計に合った「攻めと守り」のバランスを見つけていただければと思います。

※免責事項
本記事は情報提供を目的としており、投資の推奨や勧誘を行うものではありません。投資には元本割れのリスクが伴うため、最終的な投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。また、記事内のシミュレーション結果は将来の運用成果を保証するものではありません。執筆時点(2026年8月)の情報を基に作成しておりますが、本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

参考資料