5月に米国商務省が中国ファーウェイとその関連企業68社を同省産業安全局(BIS)のエンティティリストに加え、事実上の取引禁止措置を打ち出したことで、米国半導体業界では2019年4~6月期の業績見通しを下方修正するメーカーが相次いだ。その結果はどうだったのか、各社の業績値をまとめてみた。
ルーメンタムはファーウェイ向けが25%減少
光通信デバイスメーカーのルーメンタム(Lumentum)の4~6月期売上高は、修正後のガイダンス上限値を上回った。通信分野でROADMの売り上げが伸びたことが要因。同社は、ファーウェイ向けの売上高が18年度(18年6月期)実績で11%(約1.4億ドル)、19年1~3月期実績で約18%(約7800万ドル)を占めていた。
これに対して4~6月期は、特定の製品についてのみ6月末からファーウェイへの出荷を再開したものの、ファーウェイ向け売上高は1~3月期に対して25%減少(約2000万ドル)した。この結果、19年度(19年6月期)のファーウェイ向け売上高は15.2%(約2.38億ドル)となった。なお、7~9月期のファーウェイ向け売上高は、4~6月期に対して横ばい~微減になる見込みという。
スカイワークスは一部出荷再開も低迷
高周波デバイスの雄、スカイワークス(Skyworks)の4~6月期売上高は7億6700万ドルとなり、5社のなかで唯一ガイダンスの中間値だった。主要因はスマートフォン市場の低迷だが、エンティティリスト入りでファーウェイ向けの需要が減少したため、4~6月期に6660万ドルの在庫関連費用が発生したという。
なお同社によると、19会計年度の上期(18年10月~19年3月)実績として、ファーウェイ向けは総売上高の約12%(約2.1億ドル)を占めていた。
詳細な検討の結果、7月上旬に一部の製品について合法的にファーウェイへの出荷を再開したものの、結果として4~6月期のファーウェイ向けは総売上高の10%強(おおよそ8000万ドル)にとどまった。7~9月期のファーウェイ向け売上高は1000万ドルを下回る見通しで、今後のファーウェイとの取引は過去の実績を大きく下回ったままになるという。
コルボは7~9月期からファーウェイ向け急減
高周波デバイスメーカーのコルボ(Qorvo)は、19年会計年度(19年3月期)にファーウェイ向けの売上高がモバイル製品、インフラ&防衛・航空製品あわせて4.69億ドルあった。これは年間売上高の15%に相当する。
ファーウェイへの出荷停止措置によって、4~6月期の売上高は1~3月期比で横ばいにとどまる見通しとアナウンスしていたが、結果は修正ガイダンスをわずかに上回った。結果的に、4~6月期末から一部製品についてファーウェイへの出荷を再開するとともに、販売可能な製品を拡大するためのライセンスも申請した。
コルボは、①スマートフォン/セルラー端末用フロントエンドのRFソリューションを手がけるモバイル製品事業、②Wi-Fiや基地局などの無線通信インフラと防衛・航空用の無線通信デバイスが主力であるIDP事業を手がけているが、ファーウェイへの出荷再開が認められた製品の大半が①向けで、②は一部の製品はクリアしたものの、出荷量・金額がまだ限られているという。
4~6月期売上高のうち、ファーウェイ向けは22%(約1.72億ドル)を占めた。前年同期が14%(約9700万ドル)だったことと比べ、前倒し発注があったのではと問われると「ファーウェイが中国市場でシェアを上げたため」と答えた。
7~9月期は、売上高7.45億~7.6億ドルを想定しており、前年同期の8.84億ドルから大幅な減収になる見通し。ファーウェイ向けの売上比率は10%を下回る見込みで、これが影響する。
クリーは出荷再開できず
SiC(炭化ケイ素)のウエハーおよび高周波&パワーデバイス大手のクリー(Cree)の4~6月期業績は、修正後ガイダンスをわずかに上回った。もともと4~6月期にファーウェイの無線インフラ製品向けに最大1500万ドルの売り上げを見込んでいたが、出荷禁止で1000万ドルのマイナス影響があった。出荷はまだ再開できていない。SiC事業を手がける子会社ウルフスピードの5G通信向けGaN on SiC増幅器などが対象になっているとみられ、米国政府に出荷再開のライセンスを申請したが、まだ回答を受け取っていないという。
7~9月期は売上高として2.37億~2.43億ドルを見込んでいる。ファーウェイへの出荷禁止がフルに影響して約1500万ドルのマイナスに作用するほか、中国政府のインセンティブ削減が電気自動車の販売にマイナス影響を及ぼすとみて、ウルフスピードの売上高が5~7%減少する見通しだ。
ネオフォトニクスも一部出荷再開
光デバイスメーカーのネオフォトニクス(NeoPhotonics)にとって、ファーウェイは最大の顧客だ。18年度(18年12月期)は売上高3.2億ドルの46%をファーウェイ向けが占めた。なかでも子会社のハイシリコン向けが全売上高の40%を構成していた。
19年4~6月期の売上高は、高速通信向けの製品が伸び、修正後のガイダンス上限値を上回った。この売上高のうち、ファーウェイ向けは36%(約2940万ドル)を占めた。製品別に出荷が可能なのかレビューを進め、6月末から一部の製品についてのみファーウェイへの出荷を再開している。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏