4. 何が「本決まり」で、何が「今後変わり得る」のか?

閣議決定により大きな方針は定まりましたが、法制化や具体的な制度設計のプロセスにおいて、まだ調整・議論が残されている部分があります。

4.1 本決まり(確定事項)

  • 導入スケジュール:令和9・10年度につなぎ対策(実質ゼロ化)を実施し、令和11年度に本格導入すること。
  • 本格導入の基本骨格:個人単位での給付、所得に応じた給付体系(逓増・定額・逓減・消失)、18歳以下の子ども加算、特例公債に頼らない恒久財源の基本方針。
  • デジタル基盤の活用:給付金事務の地方自治体負担を極力軽減するため、公金受取口座の登録率向上と、その利用を原則化すること。

4.2 今後の検討・予算編成等で変動し得るポイント

  • 具体的数字(対象となる年収制限や給付額):いくらの年収(所得)までが対象になるのか、具体的な支給額の閾値はこれからの設計で決定されます。なお、社会保障国民会議の実務者・有識者会議における検討過程では、対象とする勤労所得の基準として、以下の3案が議論されており、今後の執行体制等を踏まえて絞り込まれます。
    • 案A(被用者保険の短時間労働者適用ライン基準):給与収入約106万円超(所得約32万円超)
    • 案B(雇用保険の適用ライン基準):給与収入約53万円超
    • 案C(給与所得発生ライン基準):給与収入74万円超(給与所得0円超)
    (※106万円、53万円はそれぞれ地域最低賃金に規定の労働時間を乗じて年換算した金額)
  • 恒久財源・つなぎ財源の具体的な削り先:特例公債に頼らないための具体的な歳出見直し(どの補助金や租税特別措置をどの程度見直すかなど)は、今後の毎年の予算編成プロセスで決定されます。
  • 事業者や一次産業への支援:消費税1%化に伴うレジシステム改修の支援や、仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者(漁業含む)や外食産業への資金繰り支援等の具体的な支援策の策定。
  • 法案の国会審議と修正リスク:基本方針に基づき関連法案が作成・国会に提出されますが、与野党協議の過程で何らかの修正が入る可能性は依然として存在します。

5. 将来的には「資産や金融所得」も判定材料に

将来的な展望として、政府はデジタル技術や情報インフラの進展に合わせて、給付の判定基準を段階的に精緻化(高度化)していく方針です。

  • 金融所得の勘案:医療保険における金融所得の勘案に向けた取組などを参考に、株の配当や株式譲渡益などの金融所得を給付判定に反映させます。
  • 預金利子所得の勘案:預金の利子所得についても、負担能力に応じた公正な給付を行うための「遠くない将来の課題」として検討が継続されます。
  • 資産保有状況の把握:単年度の所得だけでなく、保有する不動産や金融資産そのものの状況を勘案する仕組みを将来の課題として検討します。

給付金をミニマムな事務コストでタイムリーに届けるデジタル社会インフラを整えつつ、将来的には「真の負担能力」に応じた公正で持続可能な税・社会保障制度へと進化させていく構想が描かれています。

和田 直子
政府が「給付付き税額控除」の基本方針を閣議決定したことで、令和11年度の本格導入に向けた具体的なロードマップが明確になりました。

最大の焦点であったつなぎ対策については、「消費税1%+給付先行」で実質ゼロ化を目指す政府案が軸となりましたが、事業者側のシステム改修コストや農業・外食産業への影響など、現場の実務負担に対する懸念は依然として存在します。

今後は、具体的にいくらもらえるのかという所得基準・給付額の数字、財源の精査、そして事業者支援策が予算編成や法案作成の過程でどれだけ納得感のある形に仕上げられるかが注目されます。

 

参考資料

和田 直子