1. この記事を読むとわかる3つのポイント

  • 円高進行で日経平均が反落するなか、JALの株価は決算発表後に切り返し、前日比+1.24%で取引終了
  • 四半期利益は燃油高騰の影響で前年同期比8割減となったものの、国際線・国内線とも旅客単価(イールド)が伸び、通期の業績予想・配当予想は据え置きに
  •  9月30日を基準日とする株主優待(国内線50%割引券など)と権利付きスケジュール

2026年8月3日の東京株式市場は、日経平均株価が3日ぶりに反落して取引を終えました。同日の東京外国為替市場において、午前中に1ドル=155円台前半まで急速に円高が進行。これを受けて自動車や電気機器といった輸出関連銘柄を中心に売りが広がった一方、決算内容が底堅い企業や、円高進行がコスト削減の追い風となる「円高メリット銘柄」には買いが入る展開となりました。

こうした市況下で投資家の注目を集めたのが、3日が決算発表だった航空大手の日本航空(JAL・銘柄コード:9201)です。

同社は取引時間中の12時に2027年3月期第1四半期(4~6月期)決算を発表しました。中東情勢の緊迫化に伴う急激な航空燃油価格の高騰や継続する円安基調が各種調達コストの大きな押し上げ圧力となり、最終利益は前年同期比▲80.2%と大幅な減益結果となりました。しかし、通期の業績見通しが据え置かれたほか、旅客収入や1座席あたりの単価(イールド)が順調に伸長していることが確認でき、旺盛な需要を着実に収益へ変える事業モデルの強さが示されました。

さらに、足元で急速に進む円高基調は今後の燃料費や外貨建てコストを緩和させる買い材料として意識され、決算通過後は「悪材料出尽くし」から13時過ぎに上昇へ転換。前日比36.5円高(+1.24%)の2,979.5円で取引を終えています。

3日終値ベースでの株価指標はPER(会社予想)が11.64倍、PBR(実績)は1.15倍、予想配当利回りは3.22%。割安感と魅力的なインカムゲイン水準と言えるでしょう。

この記事では「JAL×単価(イールド)」の視点から最新決算をひも解きます。

また、間もなく9月に権利確定を迎える注目の株主優待制度についても紹介します。

2. 決算のポイント:燃油高騰で減益も、単価は伸長

2027年3月期第1四半期の連結決算は、売上収益が5,237億円(前年同期比11.2%増)と、四半期として過去最高を記録しました。一方で、財務・法人所得税前利益(EBIT)は127億円(同72.1%減)、四半期利益は53億円(同80.2%減)と大幅な減益です。

主な要因は中東情勢の緊迫化に伴う燃油価格の急騰で、営業費用のうち航空燃油費は前年同期の940億円から1,488億円へと58.4%増加しました。

もっとも、減収を伴わない「コスト起因の減益」だったことは重要なポイントです。国際線旅客のイールド(旅客収入をRPK※で割った単価)は1キロあたり16.7円から19.6円へと16.9%上昇し、国内線も19.5円から20.7円へ6.0%上昇しました。燃油サーチャージの引き上げや機動的な運賃戦略により、単価面で収益力を維持・向上できていることが、通期の業績予想が据え置かれた根拠のひとつになっていると考えられます。

※Revenue Passenger Kilometer、有償旅客キロ

2.1 事業モデルの強さ:単価訴求力と非航空事業の「二本柱」

JALグループは、旅客・貨物輸送を担う「フルサービスキャリア事業」「LCC事業」に加えて、JALカードやマイレージサービスを手がける「マイル/金融・コマース事業」を第3の柱として育ててきました。今回の決算では、燃油高騰の直撃でフルサービスキャリア事業のEBITが8億円の赤字(前年同期は307億円の黒字)に転落した一方、マイル/金融・コマース事業のEBITは120億円(前年同期比17.6%増)と伸びを維持し、グループ全体の黒字を下支えしています。一つの事業が苦戦しても他の事業でカバーできる分散経営に加え、旅客単価を着実に引き上げる収益力の高さが、燃油価格という外部要因への耐性を支えている構図です。

3. 月次では4月の赤字から6月に期初計画超えまで回復

四半期合計では大幅減益となったものの、JALによれば、フルサービスキャリア事業とLCC事業を合わせたEBITは4月には赤字だったものが、5月以降は黒字に転じ、6月には期初の計画を上回る水準まで回復したといいます。燃油サーチャージの引き上げなど価格転嫁策が徐々に効いてくる過程で、月を追うごとに収益性が改善していった内訳がうかがえます。

通期のセグメント別EBIT予想を見ると、フルサービスキャリア事業は1,040億円(第1四半期実績は8億円の赤字)、LCC事業は130億円(同1億円の赤字)、マイル/金融・コマース事業は510億円(同120億円)とされており、第1四半期に不振だった2事業についても、残り3四半期での挽回を織り込んだ計画になっていると考えられます。

通期予想に対する第1四半期時点の進捗率は、売上収益で約25%、EBITで約7%、純利益で約5%です。航空業界は夏の行楽シーズンにあたる第2四半期以降に需要が集中しやすい季節性があるため、この進捗率の低さだけをもって業績予想の達成可否を判断するのは早計と考えられます。