4. 【令和8年度改定】国民健康保険料の賦課限度額は合計113万円に引き上げ
保険料の話で必ず出てくるのが「賦課限度額」です。所得に比例して保険料が青天井にならないよう、世帯ごとに上限額が定められています。
4.1 賦課限度額の内訳と改定内容
令和8年度の賦課限度額は、次のとおり合計113万円と定められました(令和8年政令第2号および第4号)。
- 基礎賦課額(医療分):67万円(令和7年度66万円から1万円引き上げ)
- 後期高齢者支援金等賦課額(支援分):26万円(据え置き)
- 介護納付金賦課額(介護分):17万円(据え置き)
- 子ども・子育て支援納付金賦課額:3万円(新設)
前年度の合計は109万円だったため、実質的には4万円の引き上げとなります。
1万円の引き上げは金額としては小さく見えますが、賦課限度額の見直しは中間所得層の負担を抑える目的もあり、毎年のように議論されてきました。もう1つ注目したいのは、上限に届かない一般的な世帯にも数千円単位で影響してくる「子ども・子育て支援納付金分」の新設です。上限の話とは別枠で押さえておきたいポイントです。
4.2 影響を受けるのは高所得の単独世帯や個人事業主
賦課限度額に到達するかどうかは、家族構成や自治体の料率によって差はあるのですが、世帯主単独で年収がおおむね1000万円を超えるあたりから限度額に達するケースが増えてきます。
所得の高いフリーランスや、複数事業を営む個人事業主は、この上限に届く可能性がある層といえるでしょう。
負担が増える一方で、賦課限度額の引き上げには、中間所得層の保険料上昇を抑える調整弁の役割もあります。所得が高い層に負担能力に見合った額を負担してもらう仕組みです。
ただし限度額に届かない世帯にとっても、子ども・子育て支援納付金分の新設で年間の保険料が増える可能性があります。「上限には遠いから関係ない」ともいえないのです。
5. 国民健康保険料「7割・5割・2割軽減」応益割の負担を減らせる仕組み
国民健康保険料には、負担能力の低い世帯を対象にした軽減措置が用意されています。筆者も、退職後や休業後に「保険料を払えない」と相談される方に必ず案内していた制度です。
5.1 応益割(均等割・平等割)が軽減の対象
軽減の対象になるのは、所得の多寡にかかわらず一律で負担する「応益割」の部分です。
応益割は均等割と平等割を指し、世帯所得が一定の基準以下の場合に、この部分が7割・5割・2割のいずれかで軽減されます。
所得に応じてかかる「所得割」は対象外です。
5.2 令和8年度の軽減判定基準
軽減判定は、世帯主と全被保険者、それに特定同一世帯所属者の前年所得を合算した金額で行われます。令和8年度の判定基準は次のとおりです(Nは被保険者数、Aは給与所得者等の数)。
- 7割軽減:43万円 + (A−1)×10万円 以下
- 5割軽減:43万円 + N×31万円 + (A−1)×10万円 以下(前年度はNあたり30.5万円)
- 2割軽減:43万円 + N×57万円 + (A−1)×10万円 以下(前年度はNあたり56万円)
令和8年度は5割軽減と2割軽減の基準がそれぞれ引き上げられ、対象世帯が広がる方向で改定されています。
一見難しそうに見える計算式ですが、住民税の申告さえ済んでいれば市区町村が自動で判定してくれます。窓口で多かったのは「所得ゼロだから申告は不要」と思い込んで、そもそも申告そのものを忘れてしまうパターンでした。軽減の対象になるかどうか気になる方は、まず前年分の申告状況を確認してみてください。
なお、軽減の適用を受けるためには、世帯主と加入者全員が住民税の申告を済ませていることが前提です。
窓口では「所得ゼロだから申告しなくてもよいと思っていた」というケースが多く、申告漏れで軽減が反映されなかった相談も少なくありませんでした。
6. 【まとめ】令和8年度改定を機に、まずは現状把握と申告の確認から
会社を辞めて独立するタイミングは、健康保険の仕組みと正面から向き合う数少ない機会です。
令和8年度は、国民健康保険料の賦課限度額が113万円に引き上げられ、あわせて「子ども・子育て支援納付金分」の区分が新設されました。上限に届かない世帯にも影響が及ぶ改定です。
一方で、所得の低い世帯には応益割の7割・5割・2割軽減が用意されており、令和8年度は5割軽減の基準(被保険者1人あたり)が30.5万円から31万円へ、2割軽減が56万円から57万円へそれぞれ引き上げられました。
国民健康保険は、居住する市町村によって料率が異なるうえ、世帯構成や前年所得によって金額が大きく変わります。
「金額に納得できない」「軽減が効いていないのでは」と感じたときは、慌てず、まず前年の源泉徴収票や確定申告書を手元に用意して、市区町村の国保窓口で試算と判定根拠の説明を依頼するところから始めてみてはいかがでしょうか。
【筆者からひとこと】
かつて公務員として国民健康保険の賦課窓口を担当していた立場からお伝えすると、6月末に通知書が届いてから7月・8月にかけて「金額に納得できない」と相談に訪れる方は多くいました。特に、退職前に国保と任意継続の両方で保険料を試算しないまま切り替えてしまったケースや、世帯内の誰かが住民税申告を忘れて軽減が反映されていないケースが比較的多かったものです。
「払えない」と感じたときも、督促を待たずに一度窓口へ相談してみてください。失業・災害・所得急減などを理由にした減免制度は、申請しなければ受けられません。ひとりで抱え込まずに、まずはお住まいの役所・役場で相談してみることをおすすめします。
参考資料
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 厚生労働省「国民健康保険の加入資格」
- 厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」
- 厚生労働省「令和8年度国民健康保険関係政令等改正通知」(PDF)
- 新潟市「令和8年度の国民健康保険料率と軽減判定所得について」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」(第29条の7の2)
太田 彩子

