4. 【公的年金】厚生年金の平均は「15万289円」、国民年金は「5万9431円」

次に、老後の家計の柱となる公的年金の平均額を見ていきましょう。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和6年度末時点の平均年金月額は次のとおりです。

  • 厚生年金(老齢厚生年金・第1号)の受給者平均:15万289円(基礎年金月額を含む)
  • 国民年金(老齢基礎年金)の受給者平均:5万9431円

いずれも受給者全体の平均であり、加入期間や現役時代の報酬によって個人ごとの実額は大きく変わります。

厚生年金 階級別受給権者数2/3

厚生年金 階級別受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

国民年金階級別受給権者数3/3

国民年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1 男女別に見ると年金額に差。老齢基礎年金でも「4000円」の差

同じ資料を男女別に見ると、老齢厚生年金の平均月額は男性が16万9967円、女性が11万1413円でした。

老齢基礎年金は男性が6万1595円、女性が5万7582円と、こちらも女性のほうが月あたり約4000円低くなっています。

差の背景には、女性のほうが厚生年金への加入期間が短い傾向や、育児期間などの影響が指摘されています。

公的年金の額はご自身の加入履歴によって決まる部分が大きく、平均額と自分の見込み額は一致しません。ねんきん定期便やねんきんネットで、個人としての試算を早めに確認しておくと、老後の家計を組み立てる出発点になります。

太田 彩子

【筆者のコメント】

元町役場の職員として国民健康保険や年金の窓口業務を担当していた当時、「うちは平均に届いていない」と気にされる方を見てきました。

ただ、平均額はあくまで全体の平均であり、それぞれの年金額はご自身の加入履歴で決まるため別物です。まずはねんきん定期便やねんきんネットで見込み額を先に確かめ、それを出発点に生活費とのバランスを整えていくのが大切だと感じています。

5. 【60歳代・70歳代の貯蓄】60歳代の平均は「2843万円」、70歳以上は「2471万円」

もう一つ、老後の設計に欠かせないのが金融資産のストックです。

総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」(令和8年5月公表・二人以上の世帯)によると、世帯主の年齢階級別の貯蓄現在高(平均値)は次のようになっています。

  • 70歳以上:2471万円
  • 60〜69歳:2843万円
  • 50〜59歳:1756万円
  • 40〜49歳:1381万円
  • 40歳未満:994万円

60歳代・70歳代の平均は、他の年代を大きく上回る水準です。

5.1 「平均」と「中央値」のあいだにある大きな差

ここで気に留めておきたいのが、二人以上の世帯全体で見た貯蓄現在高の平均値が2059万円である一方、貯蓄保有世帯の中央値は1264万円にとどまっている点です。

太田 彩子

【筆者のコメント】

貯蓄額の平均を見て「自分は少ない」と落ち込む方がいるかもしれませんが、平均だけで捉えるのはあまり意味がありません。所得や世帯の状況に応じて、年金生活者支援給付金や高額療養費、介護保険の負担限度額認定など、負担を抑える公的な仕組みが用意されています。

要件を満たしているのに申請していない方も少なくありませんでした。貯蓄額の平均やランキングだけで老後を考えず、使える制度を知っておくことも、老後の安心につながります。

6. 【豊かな老後へ】元公務員からの3つの視点

ここまで、平均寿命・健康寿命・公的年金・貯蓄額と、老後設計の材料になる4つのデータを並べてきました。

最後に、元公務員として国民健康保険や後期高齢者医療の窓口で高齢の方の相談を受けてきた立場から、豊かな老後に向けて考えたい視点を3つに整理します。

6.1 「元気なうちにやりたいこと」を健康寿命の範囲で先に決める

平均寿命と健康寿命の差の期間には、介護や治療とお付き合いをする時間が含まれます。

旅行、住まいの見直し、家族との過ごし方など、「元気だからこそできること」は、健康寿命に届くまでの時間軸で優先順位を整えておきたいところです。

6.2 自分の年金見込み額と生活費を「見える化」する

公的年金の平均月額はあくまで全体の平均です。ねんきんネットで試算した見込み額と、現在の生活費を並べ、老後にどれだけ差額が生じるのかを一度書き出してみましょう。

「毎月5万円足りない」なら30年で1800万円、「3万円足りない」なら1080万円という具合に、必要な貯蓄額の目安が具体化します。

6.3 使える公的制度は先に「知っておく」

老後の家計を支える制度は、公的年金だけではありません。所得や世帯の状況に応じて、年金生活者支援給付金、高額療養費、介護保険の負担限度額認定など、負担を抑える仕組みが複数用意されています。

公務員として窓口に立っていた当時は、要件を満たしているのに申請ができていないケースも見てきました。

使える制度を「知っておく」だけでも、必要になったときの安心感は大きく変わります。ご自身の住む市区町村や年金事務所での相談ができるように、連絡先の把握だけでも心がけておきたいところです。

7. 【まとめ】平均寿命が伸びる時代は、備える時間も伸ばして考える

令和7年の平均寿命は男性81.35年、女性87.33年へと更新されました。

65歳の平均余命は男性で19.68年、女性で24.52年に達していることから、老後を「20年から30年の時間軸」で組み立てる必要が改めて確認できますね。

一方で、健康寿命との差は男性で約9年、女性で約12年あり、「元気なうちに動ける時間」は思ったより短いのかもしれません。

公的年金の平均額、60歳代・70歳代の貯蓄額の平均と中央値、そしてご自身のねんきん定期便を並べてみると、備えるべき金額が見えてきます。

数字を眺めるだけで終わらせず、一つずつ書き出して確かめてみてはいかがでしょうか。

参考資料

太田 彩子