9. 医療費負担は家計にどう影響する?高齢期のリアルな支出実態
次に気になるのは、「実際に高齢期の医療費はどのような形で発生し、家計へどの程度影響するのか」という点ではないでしょうか。
高齢期の医療費というと、入院や手術など高額な医療をイメージしがちですが、それだけではありません。日常的な通院や薬の費用など、毎月継続して発生する支出が積み重なり、家計に影響を与えるケースも少なくありません。
9.1 医療費の過半数!「通院・薬代」が占める割合
厚生労働省の「国民医療費の概況」によると、医療費の内訳は次のようになっています。
- 入院医療費:37.1%
- 入院外(外来・通院)医療費:34.7%
- 薬局調剤医療費(薬代):17.6%
9.2 毎月継続する「少額の医療費」が老後の家計を圧迫する
年齢を重ねるにつれて、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの慢性的な病気を抱え、定期的に医療機関へ通う人は増えていきます。
そのため、診察時の自己負担だけでなく、継続的な薬代や検査費用なども発生するようになります。
1回ごとの支払いは大きな金額ではなくても、毎月の通院や服薬が続けば、年間ではまとまった支出になります。老後の家計を考えるうえで、決して見過ごすことのできない支出項目のひとつといえるでしょう。
9.3 突然の入院・手術がもたらす一時的な大出費にも注意
また、年齢を重ねるほど、入院や手術が必要になる可能性も高まります。
医療費の自己負担割合が1割や2割であったとしても、入院期間が長引けば自己負担額は増えていきます。さらに、差額ベッド代や通院時の交通費、家族が付き添う際の費用など、公的医療保険ではカバーされない支出が発生する場合もあります。
老後の医療費について考える際には、普段の通院や薬代だけでなく、突然の入院や手術に備えた費用についても、あらかじめ想定しておくことが重要です。
10. まとめにかえて|高齢期の医療費に備えるために知っておきたいこと
後期高齢者医療制度における窓口負担割合は、所得水準や世帯構成によって決まりますが、制度を取り巻く環境は今後も変化していく可能性があります。
その一つとして注目されているのが、「子ども・子育て支援金」の導入です。少子化対策を社会全体で支えるために創設された制度で、後期高齢者医療制度においても、被保険者1人あたり月額およそ200円程度(※)が保険料へ上乗せスタートしています。
1人あたりの負担額だけを見ると大きな金額には感じられないかもしれません。しかし、年間単位で考えると数千円規模の負担となるため、家計への影響を意識する世帯も出てくるでしょう。
少子高齢化が進むなかで、医療保険料や医療制度に関連する負担が今後も緩やかに増えていく可能性はあります。
制度の仕組みや今後予定されている変更点を理解し、こうした追加負担も含めて将来の家計を見通しておくことが、安心した老後生活を送るための大切なポイントとなるでしょう。
※支援金額は、お住まいの都道府県後期高齢者医療広域連合が定める条例に基づき、個人の所得等に応じて決まります。支援金額の月額についてはお住まいの市町村にお問い合わせください。なお、後期高齢者医療広域連合ごとに支援金に係る保険料率が異なります。また、令和8年4月分からの拠出となりますが、具体的な徴収開始時期はご加入の広域連合にお問い合わせください。
11. 監修者からのコメント
少子高齢化に伴い、現役世代だけでなくシニア世代も負担を分かち合う仕組みへと社会全体がシフトしています。
記事内で触れられている「子ども・子育て支援金」の導入をはじめ、今後は医療保険料や窓口負担の判定基準がさらに見直される可能性もあります。
また、夫婦世帯では配偶者の所得状況によって世帯全体の負担割合が3割に上がるケースもあるため、個人の収入だけでなく「世帯全体の収支」で家計を管理する視点が欠かせません。
制度の変化を過度に不安視するのではなく、最新情報を定期的に確認し、柔軟に家計を見直す姿勢を持ちましょう。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 厚生労働省「国民医療費の概況」
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
池上 翠


