和田 直子

「同じ月生まれなのに、妻の方が年金の最初の振込が多かった。何かの間違いですか?」と窓口に来られたご夫婦が、信託銀行員時代に印象に残っています。

記録を確認すると、奥様が1日生まれ、ご主人が2日生まれ。たった1日の違いが、受給開始の月に差を生み、初回振込額に差を生んでいました。制度のしくみを説明すると、「そういうことか」とご納得いただけましたが、知らないと本当に不思議に思いますよね。

同じ5月生まれのご夫婦が、同じ8月に初めての年金を受け取った。

でも振込額を見ると、妻は3カ月分、夫は2カ月分——こんなことが実際に起こります。

誕生日がわずか1日違うだけで、なぜ差が出るのでしょうか。それには「65歳になる日」の計算ルールと、年金の支払いサイクルが深く関係しています。

この記事では、このしくみをわかりやすく解説します。

1. 3つのポイントの見出し

  •  「65歳になる日」は誕生日の前日。5月1日生まれなら4月30日、5月2日生まれなら5月1日が受給権発生日
  •  5月1日生まれは5月分から年金が始まり、8月の初回振込は3カ月分。5月2日生まれは6月分から始まり、初回は2カ月分
  •  1日生まれの人は保険料の納付義務の開始も1カ月早い

2. なぜ同じ5月生まれで振込額が違うのか

答えを先に言うと、「65歳になる日」が1日異なるからです。

年金の受給開始は誕生日ではなく「65歳になる日」を基準に決まり、この計算には日本独自のルールが使われています。

2.1 年齢計算の特則:歳を重ねるのは誕生日の「前日」

法律上、年齢は「誕生日の前日」に1歳加算されます(年齢計算ニ関スル法律・民法)。日常生活ではあまり意識しませんが、年金の計算では重要な前提です。

  • 5月1日生まれ → 65歳になる日:4月30日
  • 5月2日生まれ → 65歳になる日:5月1日

たった1日の誕生日の差が、「65歳になる日」を丸々1カ月ずらすことになります。

2.2 年金は「65歳になる日」の翌月分から始まる

老齢年金の受給権は「65歳になる日」に発生し、その翌月分から年金の支給対象になります。

  • 5月1日生まれ(65歳になる日:4月30日)→ 5月分から年金開始
  • 5月2日生まれ(65歳になる日:5月1日)→ 6月分から年金開始
和田 直子

「4月30日が65歳になる日なのに、なんで5月分から?」と思われる方もいらっしゃいます。

年金は受給権が発生した月の「翌月分」から支給が始まる、というルールがあるためです。4月30日に受給権が発生した場合、4月分は支給されず、5月分から対象になります。この「翌月から」というルールは、受給開始月を計算するときの大前提として押さえておくと整理しやすいと思います。