老後に関する悩みの中でも多いのが「公的年金」への不安です。とはいえ、老後の生活の柱となる公的年金についてはよくわからないという方も少なくありません。社会保険料を払う中でも、「老後いくらもらえるのか」「現役時代からできる、公的年金への対策はあるのか」じっくり考えたことがないという方もいるでしょう。
しかし、老後資金を考える第一歩は「自分の年金見込み額を知る」ことにあります。
今回は公的年金のしくみと2026年度の年金額を確認したうえで、実際の平均受給額や国民年金だけの方(※国民年金第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者のかたが対象です)が受給額を上乗せできる制度の違いも、あわせてご紹介します。
なお、「付加年金」と「国民年金基金」は併用できないので、どちらかを選ぶ必要があります。
1. この記事を読んだらわかる3つのポイント
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2026年度の年金額の目安と、厚生年金・国民年金の平均受給額(男女差) -
65歳以上の無職夫婦・単身世帯の家計収支と、毎月の不足額 -
国民年金だけの人が上乗せできる「付加年金」「国民年金基金」のしくみ
2. 公的年金の基本的なしくみとは?毎年度変わる年金額、2026年度の平均
日本の公的年金は「2階建て」にたとえられます。
1階は20歳以上のすべての人が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」、2階は会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」です。自営業やフリーランスの方は1階が中心になります。つまり、どのような働き方をしてきたかで、受け取る年金の姿は変わってきます。
なお、公的年金の額は、物価や賃金をふまえて毎年度見直されます。2026年度は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げとなりました。おもなモデルは次のとおりです。
2.1 2026年度の国民年金(基礎年金)・厚生年金額の例
- 国民年金(老齢基礎年金・満額、1人分):月7万608円
- 厚生年金(夫婦2人のモデル世帯):月23万7279円
上記の厚生年金は夫のみ厚生年金に加入した例となっています。
3. 【年金の平均受給額】ふつうの人は年金をいくらもらってる?
では、実際の平均額はどのくらいでしょうか。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均の年金月額は次のとおりです。
- 厚生年金:全体15万289円(男性16万9967円/女性11万1413円)
- 国民年金:全体5万9310円(男性6万1595円/女性5万7582円)
厚生年金では男女で6万円ほどの差があります。これは、働き方や賃金、加入期間の違いが反映されるためです。平均だけでなく、加入歴による個人差が大きい点もおさえておきたいところです。
4. 老後の生活費は「年金だけでは生活できない」のがふつうに
受け取る額がわかったら、次は暮らしていけるのかが気になるでしょう。総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の生活費は以下の通りでした。
- 実収入:25万4395円(うち社会保障給付22万8614円)
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
- 毎月の赤字:およそ4万2000円
収入の約9割を年金などの社会保障給付が占め、それでも毎月4万円ほどの赤字です。不足分は貯蓄から取り崩して補うことになります。まずはご自身の「毎月いくら足りないのか」を把握することが出発点です。
単身世帯もみておきましょう。同じ家計調査(2025年)によると、次のとおりです。
- 実収入:13万1456円(うち社会保障給付12万212円)
- 消費支出:14万8445円
- 非消費支出:1万2990円
- 毎月の赤字:およそ3万円
収入も支出も夫婦世帯より小さくなりますが、それでも毎月およそ3万円の赤字です。おひとりさまほど、早めに家計の見通しを立てておきたいところです。
5. 国民年金の人が上乗せできる「付加年金」「国民年金基金」は何が違う?
自営業やフリーランスなど、国民年金(第1号被保険者)だけの方は、会社員のような2階部分がないぶん、老後の年金が少なめになりがちです。そこで知っておきたいのが、受給額を上乗せできる2つの制度です。
ひとつは「付加年金」です。国民年金の保険料に月400円を上乗せして納めると、「200円×納めた月数」が老齢基礎年金に上乗せされます。かりに40年間(480か月)納めると、年間9万6000円が上乗せされる計算です。少額で始めやすく、受け取り始めて2年で納めた分を上回ります。対象は第1号被保険者と65歳未満の任意加入者で、保険料を免除されている方は利用できません。
もうひとつは「国民年金基金」です。第1号被保険者が加入でき、掛金の上限は月6万8000円です。65歳から生涯受け取れる終身年金が基本で、掛金に応じて将来の年金額が決まります。万一のときには、遺族に一時金が支給されるしくみもあります。
注意したいのは、付加年金と国民年金基金は同時には使えないことです。どちらか一方を選ぶことになります。
なお、付加年金は個人型確定拠出年金(iDeCo)と条件つきで併用できます。ご自身の働き方や余裕資金にあわせて、どの制度が向いているかを考えておきたいところです。
6. 元銀行員の視点から3つの老後資金に向けたアドバイス
元銀行員で金融の編集に携わってきた経験からお伝えしたいのは、老後の備えも「数字で客観的につかむ」ことが出発点だということです。今日からできることを、3つに絞ってご紹介します。
1つ目は、家計を見える化することです。自身やご家庭について毎月の収入と支出、そして資産と負債(ローンなど)を一度書き出してみましょう。「資産から負債を引いた蓄え」がわかると、平均値に振り回されず、自分の現在地がはっきりします。
2つ目は「見えにくいコスト」を年に一度点検することです。ローンの金利、口座やカードなどの手数料、使っていないサブスクなどの固定費を年に一度まとめて見直すだけで家計の状況がわかり、今とるべき対策を考えることもできるでしょう。
3つ目は「たしかな情報で確かめてから動く」ことです。ニュースの見出しや平均値だけで判断せず、ねんきんネットや官公庁の資料など、おおもとのデータで自分の数字を確認する習慣をつけましょう。客観的な事実にもとづく判断こそが、遠回りに見えて、いちばん確かな備えになるのではないでしょうか。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 日本年金機構「付加保険料の納付」
- 厚生労働省「国民年金基金制度」
石津 大希



