2019年度は、日本の半導体メーカー売上高ランキングでソニーが初の首位に立ちそうだ。スマートフォンの多眼化でイメージセンサーが好調を維持しており、19年4~6月期だけで約500億円の営業利益を叩き出した。7~9月期もフル生産を予定しており、年間売上高が1兆円を超す可能性さえある。

18年度実績はほぼ横ばい

 電子デバイス産業新聞が集計した国内半導体15社(ファブレス含む)の18年度売上高は、合計で5兆2800億円余りだった。前年比でほぼ横ばいにとどまり、15%も伸びた17年度から成長が止まった。メモリー価格が継続的に下落したことに加え、米中貿易摩擦の余波などを含めて中国市場で設備投資が低迷し、17年度は好調だった産業機器分野の需要が落ち込んだことも影響した。IoT(Internet of Things)や5G通信インフラ、自動運転、AI(人工知能)といった次世代技術の本格的な実用化に向け、半導体の役割がますます重要性を増していることに変わりはないが、政治リスクが通商環境にも影響を及ぼした。

 15社のなかで2桁成長を遂げた企業はなく、最も大きく成長したのは9.8%増収したカスタム光デバイスメーカーの浜松ホトニクスだった。次いで成長率が高かったのは、ゲーム機用LSIが堅調で7%成長したファブレスのメガチップスであり、中堅メーカーの健闘が光った。LED世界最大手の日亜化学も久方ぶりに増収に転じた。

19年度は3%マイナスに

 19年度業績は、見通しを公表していない企業が前年並みを維持すると仮定して、18年度比3%減の約5兆1000億円となり、マイナスとなる見込みだ。

 10月1日付でキオクシアに社名を変更する予定の東芝メモリだが、業績面では厳しい船出になりそうだ。NANDフラッシュメモリーの価格が年率3割のペースで下落していることに加え、昨今の需要低迷と円高傾向が業績をさらに下押しする。NAND各社の生産調整で価格反転を期待したいが、上ぶれ要素は現状少ない。

 一方で、パワーデバイスメーカーは増収を計画している。パワーデバイス事業の売上高を22年度に2000億円まで伸ばす方針をすでに表明している三菱電機は、19年度に前年度比9%増の1850億円を計画している。また、富士電機も19年度は同12%増の1253億円を計画する。同社は19~23年度の中期経営計画を策定し、23年度に電子デバイス(半導体+ディスク媒体)事業で18年度比46%増となる売上高2000億円を狙う方針を打ち出している。

ソニーは13%増の9900億円を計画

 ソニーは19年度に同13%増の9900億円を計画しており、初の売上高国内首位に立つ可能性が極めて高い。25年度には半導体事業で売上高約1.3兆円を想定し、主力のイメージセンサー市場の世界シェア(金額ベース)を18年度の51%から25年度には60%まで高めることを目指すとともに、現在は数%にとどまっているセンシング領域の売上構成比を30%に引き上げる方針。このセンシング領域で25年度に売上高約4000億円を見込んでおり、モバイル分野に加えて産業用や車載用へ販路を拡大し、イメージセンサーとAIを組み合わせたソリューションの提供も目指す。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏