1. この記事を読むとわかる3つのポイント

  •  新NISAの仕組みとメリット
  •  「2000万円を目指す」20年間の積立投資シミュレーション
  •  資産運用を検討する人へ、元証券会社の富裕層担当からの3つアドバイス

昨今の物価上昇や将来の生活設計を見据え、資産運用について検討する人が増えています。

そうした状況下で、資産形成の選択肢の一つとして活用が進んでいるのが「新NISA(少額投資非課税制度)」です。

新NISAは長期的な分散投資を行う上で有効な仕組みを持つ一方、その特徴やリスクを正しく把握し、自身のライフプランに合わせて活用しなければ、期待する効果を得にくくなる側面もあります。

また、将来的に形成できる資産の規模は、毎月の積立額や運用の利回り、投資期間といった様々な要因によって左右されます。

私はかつて証券会社でファイナンシャルアドバイザー(FA)として、多くのお客様の資産運用に関わってまいりました。

本記事では、実務経験を踏まえ、新NISAの基本概要やメリットをおさらいしつつ、具体的なシミュレーションを交えて将来の資産形成の見通しについて解説します。

合わせて、新NISAを活用した資産形成を検討している方へ向けて、実務経験から導き出した3つのアドバイスをお伝えします。

安達さやか
ファイナンシャルアドバイザーとして多くの方の資産設計をお手伝いする中で実感したのは、制度の仕組みそのもの以上に、ご自身のライフプランに合致しているかどうかが大切であるという点です。
新NISAは運用益が非課税になるという特徴を持っていますが、あくまで資産形成における選択肢の一つです。
流行の銘柄や他者の投資ペースに流されず、ご自身の目的とリスク許容度に基づいた判断を下すことが、長期的な運用の安定に繋がります。
この記事が、皆さまがご自身に合った資産運用を検討する上での参考になれば幸いです。

※本記事で行うシミュレーションにおいて、累計の投資総額がNISAの生涯非課税保有限度額(総枠1800万円)を超える場合、その超過分については課税対象(課税口座での運用)となりますのであらかじめご留意ください。

2. おさえておきたい新NISAの仕組みとメリット

個人の資産形成を後押しする制度として2014年に始まったNISAは、2024年の抜本的な拡充を経て「新NISA」へと生まれ変わりました。

この制度を利用する最大の利点は、投資運用によって得られた利益に税金がかからない点にあります。

一般の課税口座では、投資信託の売却益や配当金に対して約20%の税金が課されますが、新NISA口座であれば税負担がゼロになり、運用益を丸ごと受け取ることが可能です。

新NISA「非課税」のしくみ1/1

新NISA「非課税」のしくみ

出所:金融庁「NISAを知る」

3. 45歳~65歳までの20年間で「毎月5万円」積立投資を行ったケースを試算

ここでは、以下の前提条件をもとに、NISAを利用して積立投資を行った場合、どの程度の資産形成が期待できるのかを確認します。

  • 45歳から65歳までの20年間で老後資金をつくる
  • 積立額は毎月5万円
  • 投資信託は「安定的な運用」を重視した1~5%の商品

3.1 【試算結果を見る】「毎月5万円」×20年×「年1〜5%」で積立投資

【新NISA】想定利回り別「月5万円」積立投資シミュレーション結果

【新NISA】運用利回り別「月5万円」積立投資シミュレーション結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

想定利回り:資産評価額(元本部分は1200万円)

  • 年1%:1327万円
  • 年2%:1471万円
  • 年3%:1634万円
  • 年4%:1819万円
  • 年5%:2029万円

20年間にわたって毎月5万円を積み立てた場合、最終的には1000万円を超える資産形成が見込まれます。

元本は合計1200万円ですが、運用状況によっては約127万円〜最大829万円ほどの利益が加わる可能性があります。

ただし、投資にはリスクが伴い、期待リターンが高くなるほどリスクも大きくなるため、その点を理解したうえで活用することが重要です。

4. 45歳~65歳までの20年間で「2000万円を目指す」毎月いくらの積立が必要か試算

老後に必要な資金は家庭ごとに異なりますが、ここでは2000万円を目標としたケースを想定します。

45歳から65歳までの20年間でこの金額を準備するには、毎月どの程度の積立が必要になるのかを試算します。

4.1 【試算結果を見る】「20年間」×5%で積立投資

【新NISA】積立金額別「想定利回り5%」積立投資シミュレーション結果

【新NISA】積立金額別「運用利回り5%」積立投資シミュレーション結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

毎月の積立金額:資産評価額

  • 3万円:1217万円
  • 4万円:1623万円
  • 5万円:2029万円
  • 6万円:2435万円
  • 7万円:2841万円

※想定利回り:年5%

試算の結果、年利5%で20年間運用した場合、毎月5万円を積み立てることで2000万円を超える資産形成が可能となります。

ただし、月5万円の積立は負担が大きく、また利回りも確実ではないため、想定通りに資産が増えない可能性がある点には注意が必要です。

そのため、老後資金の準備はできるだけ早い段階から始めることが重要です。

たとえば、30歳から65歳までの35年間、同じく年利5%で積立を行った場合、2000万円を目指すために必要な毎月の積立額は約1.8万円まで抑えられます。

このように、積立期間を長く確保することで、毎月の負担を軽減しながら効率的に資産形成を進めることが期待できます。

5. 新NISAでの資産運用を検討する人へ、元証券会社の富裕層担当からの3つアドバイス

新NISA(少額投資非課税制度)を活用した資産形成において、ご自身のライフプランに合わせた無理のない運用を行うために、ファイナンシャルアドバイザーとしての実務経験から導き出した3つのアドバイスをお伝えします。

5.1 流行の銘柄に流されず、自身の「リスク許容度」に合わせた資産配分を行う

新NISAの普及に伴い、特定の国やインデックス(株価指数)に連動する投資信託が多くの注目を集めています。

これらは低コストで手軽に分散投資ができる選択肢の一つである一方、全ての投資家にとって共通の最適解となるわけではありません。

富裕層の方々は、市場のトレンドや他者の投資先をそのまま模倣するのではなく、一貫してご自身の状況を基準に判断されていました。

  • 具体的な投資目的の明確化(教育資金、老後資金など、必要となる時期と金額の把握)
  • 客観的なリスク許容度の把握(市場の下落時に、自身がどの程度の損失額まで受け入れられるか)

人気の高い投資先が、必ずしもご自身のライフプランに合致するとは限りません。

まずはご自身の許容できるリスクの範囲を正確に把握し、必要に応じて異なる資産(債券やゴールドなど)を組み合わせるなど、バランスの取れたポートフォリオ(資産構成)を検討することが大切です。

5.2 非課税枠の消化を焦らず、「時間分散」を効果的に活用する

新NISAには年間最大360万円(生涯1800万円)の非課税投資枠が設定されているため、「早いうちに枠を使い切るべきではないか」と考える方もいらっしゃいます。

資金を一度に、または短期間で集中的に投入する手法は、市場が上昇し続けた場合には効率的ですが、購入直後に相場が急落した際には、精神的・経済的な負担が大きくなる側面を持ちます。

実際に私が担当させていただいた富裕層のお客様の中には、まとまった余剰資金をお持ちであっても、一度にすべてを動かすのではなく、数年以上の期間をかけて計画的に購入を進める「時間分散(積立投資など)」の投資行動を好まれる方が多くいらっしゃいました。

枠を消化するスピードに固執する必要はありません。

毎月の収支バランスを見極めながら、ご自身のペースで一定のルールに従って淡々と買い進めていくアプローチも、リスクを抑える上で有効な選択肢です。

5.3 生活防衛資金とNISA口座を含めた「資産全体のバランス」を維持する

新NISAは投資の利益が非課税になる制度ですが、これのみで全ての資産形成が完結するわけではありません。

資産管理に長けた富裕層の方々は、常に資金の「色分け」を厳格に行っています。

富裕層の方々は手元の資金を用途や時期に応じて、以下のように適切に分類して運用されていました。

  • 生活防衛資金(安全資産): 日常の急な支出や不測の事態に対応できるよう、元本が保証された、すぐに引き出せる預貯金
  • 中長期的な運用資金(投資資産): 数年〜十数年は取り崩さない前提で成長を期待する資産

すべての余剰資金をNISA口座などの投資に投じてしまうと、急なライフイベントで現金が必要になった際、一時的に元本割れしているタイミングであっても、不本意に資産を売却して現金化せざるを得なくなるリスクが生じます。

まずは生活を守るための預貯金をしっかりと確保した上で、無理のない範囲で資産運用を進めるのも選択肢の1つです。

「資産全体の調和」を意識することが、資産形成への第一歩となります。

【免責事項】

  • 本記事は、公開されている公的資料および一般的な情報に基づき作成されたものであり、特定の制度・金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
  • 掲載している数値・制度内容・シミュレーション結果は、一定の前提条件のもとでの試算または一般的な事例であり、実際の金額・支給要件・税制・運用成果等を保証するものではありません。制度内容は法改正・自治体運用・経済状況等により変更される可能性があります。
  • 投資に関する記述は、将来の運用成果を示唆または保証するものではなく、元本割れを含むリスクが存在します。本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。

参考資料