3. 【調査データ】「墓じまい」への関心が高まる60歳代と、見えてきた課題

親の相続や実家の整理を経験する世代だからこそ、自分の子どもには負担を残したくないと考える人も少なくありません。その一つとして関心が高まっているのが「墓じまい」です。

全国石製品協同組合が40歳代から70歳以上を対象に実施した調査によると、墓じまいについて「経験した」「検討中」「将来検討する可能性がある」と回答した関心層は全体で42.8%でした。

年代別では、50歳代が35.8%、60歳代では53.2%となっており、60歳代では半数を超えています。

墓じまいを検討する理由として最も多かったのは、「今あるお墓の管理やお参りが大変」で21.0%でした。

3.1 約9割が墓じまい費用を「具体的に知らない」

一方で、一般社団法人 終活協議会の「墓じまいと供養先の再選択に関する実態調査(2026年)」によると、お墓の維持や墓じまいにかかる費用について、下記ような回答割合となりました。

  • おおよその相場まで具体的に知っている(11.4%)
  • なんとなくのイメージはあるが、具体的な金額は知らない(36.9%)
  • ほとんど・全く知らない(36.5%)
  • 考えたことがない(15.2%)

多くの方が関心を寄せているものの、具体的な費用相場を把握できていない実態が浮き彫りになっています。

「自分の代でお墓を終わらせてもよい」に6割が共感 同調査では、「自分の代でお墓を終わらせてもよい」という考えに対して61.1%が共感を示しています。

また、もし自身が供養先を選ぶとしたら、従来の一般墓を希望する人が23.3%にとどまったのに対し、永代供養・樹木葬・散骨・手元供養といった新しい供養先の合計が53.5%と過半数を占めました。

継承を前提としない考え方への支持が広がっていることがうかがえます。

熊谷 良子

株式会社NEXER Groupと『アンカレッジの樹木葬』による調査によると、50代以上の約74%が「生前のお墓準備に抵抗はない」と回答しています。

最大の理由は「家族の負担を減らせるから」であり、子供世代への思いやりが前向きな姿勢に繋がっていることがうかがえますね。

しかし「墓じまい」となると、ただお墓を片付けるだけでなく、現在のお寺から「改葬許可証」を役所で発行してもらい、新しい供養先へ移すという行政の手続きが伴います。

お寺への離檀料や墓石の撤去費用で数十万円単位のお金がかかることも珍しくありません。

「そのうち」と後回しにせず、元気なうちに具体的な相場を調べておくことが大切です。

3.2 話し合いたいのに、4人に1人が「話を切り出せない」

供養に関する意識が変わる中、親からお墓や供養の話を持ちかけられた経験がある人は38.8%に達しており、家族内での話題化は進みつつあります。

その一方で、自身や家族のお墓の今後について、4人に1人(25.0%)が「話を切り出したいけれど、まだ切り出せていない」と感じており、「きっかけ・タイミングがない」ことなどが理由として挙げられています。

4. まとめにかえて:お盆休みをきっかけに「お金と相続、お墓」の対話を

50歳代・60歳代は、ご自身の老後資金の準備を進めながら、親の相続や介護と向き合う「はざまの世代」です。

今回見てきたように、十分な老後資金を準備することと同じくらい、「手間のかかるお墓」を子供世代の負担にしないための準備が重要視されています。

お墓の問題とともに避けて通れないのが「相続」です。「財産が少ないから相続で揉めることはない」と考えられがちですが、実際にはそうとは限りません。

最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)」によると、家庭裁判所で成立した遺産分割事件のうち、遺産総額5000万円以下のケースは全体の約78%を占めています。

相続トラブルは、不動産と預貯金を中心とした一般的な家庭でも起こり得ます。

親の財産状況を把握しないまま相続を迎えると、遺産分割の協議が長引き、子どもが精神的・経済的な負担を抱える可能性があるのです。

墓じまいや相続の生前整理を行うにしても、当然ながら専門家への依頼や解体費用など一定の「お金」がかかります。

だからこそ、ご自身の家計収支や貯蓄額を正確に把握する「お金の整理」と、お墓や財産をどう残すか(あるいは手放すか)を考える「終活」は切り離すことができません。

もうすぐお盆休み。帰省などでご家族が集まるこの時期は、お墓参りなどを通じて自然に話題を切り出せるチャンス。

元気なうちから「お墓のこと、どう考えている?」と少しずつ言葉を交わしておくことも、ご自身の将来の不安をなくし、結果として大切な子供たちへ負担を残さない「安心のセカンドライフ」に繋がる一つのアクションと言えそうです。

熊谷 良子

司法統計などの一次データを確認すると、相続トラブルは「うちは財産がないから」という一般的なご家庭でこそ頻発しています。

その最大の理由は、遺産の多くが「分けにくい実家(不動産)」だからです。

誰も住まなくなった実家を放置して、『管理不全空き家』や『特定空き家』に指定されてしまうと、固定資産税の優遇が外れて税負担が跳ね上がるリスクもあります。

また、2024年(令和6年)4月1日からは相続登記も義務化されました。

親の財産や不動産、お墓の管理は、放置すればするほど子供世代にお金と手間の重い負担としてのしかかります。

お盆休みをきっかけに、まずはご家族でフラットに話し合う時間を持ってみてはいかがでしょうか。

参考資料