老後の生活費について、具体的に考え始める方が多い60代。「公的年金がいつから、いくらもらえるのか」は、セカンドライフの設計を考える上でまず押さえておきたい情報です。
ただ、年金の金額は現役時代の働き方や加入状況によって個人差が大きく、「平均額をもらえると思っていたら、実際はかなり少なかった」というケースも珍しくありません。
この記事では、日本の公的年金の基本的な仕組みと、実際の受給額データを整理します。
さらに「額面どおりにもらえるわけではない」という見落とされがちな実態——年金からの税・保険料の天引き——についても合わせて解説します。
1. 3つのポイントの見出し
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日本の年金は「国民年金(1階)+厚生年金(2階)」の2階建て構造。働き方によって受給額が大きく異なる -
厚生年金の平均は月15万289円だが男女差が大きく、分布は1万円未満から30万円超まで幅広い -
年金は額面どおりに受け取れるわけではない。所得税・住民税・介護保険料・健康保険料が天引きされる
2. 日本の公的年金制度「2階建て」の構造を理解する
日本の公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。
原則として国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方が加入する「国民年金(基礎年金)」を1階部分、会社員や公務員などが上乗せで加入する「厚生年金」を2階部分とする構成です。
2.1 1階部分:国民年金(基礎年金)の概要
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての方が対象となる基盤的な制度です。
- 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満の方すべて
- 保険料:加入者全員が一律の金額(2026年度の月額は1万7920円)
- 受給額:保険料を40年間すべて納付した場合に満額が支給(2026年度の満額は月額7万608円)
国民年金の加入者は、働き方に応じて第1号から第3号被保険者に区分されます。会社員や公務員である第2号被保険者は、次に説明する厚生年金にも加入しており、厚生年金の保険料を納めることで国民年金の保険料も賄われます。また、第2号被保険者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)も、個別に保険料を納付する必要はありません。
2.2 2階部分:厚生年金の概要
厚生年金は、国民年金に上乗せして加入する制度で、現役時代の収入と加入期間が受給額に直結します。
- 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※1)に勤務し、一定の要件を満たす方
- 保険料:収入(標準報酬月額・標準賞与額)に応じて変動(保険料計算の基となる収入には上限あり)(※2)
- 受給額:加入期間と納めた保険料額によって、一人ひとり異なる
※1 特定適用事業所とは、1年のうち6カ月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※2 厚生年金の保険料は、標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を掛けて算出されます。
3. 厚生年金と国民年金の個人差はどれほどか?
老後の暮らしを支える公的年金ですが、受給額は現役時代の働き方や加入状況によって決まるため、個人差が非常に大きいという点に注意が必要です。実際のデータで確認してみましょう。
3.1 厚生年金の男女別平均月額と受給額分布
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金を含んだ厚生年金受給権者の平均年金月額は以下の通りです。
- 全体平均:15万289円
- 男性平均:16万9967円
- 女性平均:11万1413円
※上記の金額は国民年金の額を含みます。
3.2 厚生年金受給額の分布(1万円刻み)
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上〜2万円未満:1万4137人
- 2万円以上〜3万円未満:3万5397人
- 3万円以上〜4万円未満:6万8210人
- 4万円以上〜5万円未満:7万6692人
- 5万円以上〜6万円未満:10万8447人
- 6万円以上〜7万円未満:31万5106人
- 7万円以上〜8万円未満:57万8950人
- 8万円以上〜9万円未満:80万2179人
- 9万円以上〜10万円未満:101万1457人
- 10万円以上〜11万円未満:111万2828人
- 11万円以上〜12万円未満:107万1485人
- 12万円以上〜13万円未満:97万9155人
- 13万円以上〜14万円未満:92万3506人
- 14万円以上〜15万円未満:92万9264人
- 15万円以上〜16万円未満:96万5035人
- 16万円以上〜17万円未満:100万1322人
- 17万円以上〜18万円未満:103万1951人
- 18万円以上〜19万円未満:102万6888人
- 19万円以上〜20万円未満:96万2615人
- 20万円以上〜21万円未満:85万3591人
- 21万円以上〜22万円未満:70万4633人
- 22万円以上〜23万円未満:52万3958人
- 23万円以上〜24万円未満:35万4人
- 24万円以上〜25万円未満:23万211人
- 25万円以上〜26万円未満:15万796人
- 26万円以上〜27万円未満:9万4667人
- 27万円以上〜28万円未満:5万5083人
- 28万円以上〜29万円未満:3万289人
- 29万円以上〜30万円未満:1万5158人
- 30万円以上:1万9283人
男性の平均月額は16万9967円、女性は11万1413円と、約6万円の開きがあります。また、受給額の分布は月1万円未満から30万円超まで幅広く、個人差が非常に大きいことがわかります。ご自身の年金見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で個別に確認しておくことをおすすめします。
3.3 国民年金の男女別平均月額と受給額分布
- 全体平均:5万9310円
- 男性平均:6万1595円
- 女性平均:5万7582円
3.4 国民年金受給額の分布(1万円刻み)
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上〜2万円未満:21万3583人
- 2万円以上〜3万円未満:68万4559人
- 3万円以上〜4万円未満:206万1539人
- 4万円以上〜5万円未満:388万83人
- 5万円以上〜6万円未満:641万228人
- 6万円以上〜7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上:299万7738人
国民年金の平均月額は男女ともに5万円台。最も人数の多いボリュームゾーンは「6万円以上〜7万円未満」で、多くの方が満額に近い水準で受け取っていることが読み取れます。厚生年金ほど受給額のばらつきがないのは、満額(2026年度:月額7万608円)が制度上定められているためです。
4. 年金は「額面どおり」には受け取れない—天引きされるお金
年金の平均額を見て「なんとか生活できそう」と感じる方もいるかもしれません。ただし、年金は額面の金額がそのまま振り込まれるわけではないという点は、ぜひ事前に知っておいていただきたいことです。
公的年金には、受け取る前に以下のような税金・保険料が差し引かれます。
- 所得税・復興特別所得税:年金は「雑所得」として課税対象となります。一定額以上の年金受給者は、年金から源泉徴収されます。
- 住民税:前年の所得をもとに計算され、年金から天引き(特別徴収)されます。
- 介護保険料:65歳以上になると、年金から直接差し引かれます(年金額が月1万5000円以上の場合)。金額は市区町村によって異なります。
- 健康保険料(後期高齢者医療保険料):75歳以上は後期高齢者医療制度に移行し、保険料が年金から天引きされます(一定条件あり)。
これらの天引き後の手取り額は、収入や居住地、世帯構成などによって異なります。額面から実際にどれくらい差し引かれるかは人によって変わりますが、「思ったより少なかった」と感じる方が多いのも事実です。老後の家計を考える際には、年金の「額面」ではなく「手取りベース」で収支を把握することが大切です。
たとえば、持ち家の方には固定資産税、自動車を保有している方には自動車税が毎年かかります。
これらは現役時代と変わらず支払い続けるものですが、収入が年金だけになると相対的な重さが増す=負担の大きさが違ってきます。



