生活費の負担が増すなかで、シニア世代の暮らしの柱となるのは「公的年金」ではないでしょうか。
2026年度の年金額は物価高を反映して増額改定が実施され、6月からは新しい基準での支給がスタートしています。
とはいえ、「実際に自分はいくらもらえるのか」「周りの人はどのくらい受け取っているのか」と疑問を持たれるのも自然なことです。
筆者はかつて証券会社でお客様の資産形成やライフプランをサポートしてきた経験などから、安心できるセカンドライフを描くためには、まずご自身の年金の実態を知ることが大切だと考えています。
そこで今回は、公的年金制度の基本的な仕組みから、2026年の最新の支給スケジュール、そして厚生労働省が公表した働き方や男女別のリアルな受給モデルまでを分かりやすく解説します。
これからの生活設計に向けたヒントとして、ぜひお役立てください。
1. 知っておきたい老後資金の柱!公的年金制度の3つの保障機能
日本の公的年金には「老齢年金」の他に、ケガや病気で仕事や生活などが制限されるようになった場合に受給できる「障害年金」、一家の生計の担い手にまさかのときがあった場合に受給できる「遺族年金」という、3つの保障機能があります。
「年金」と聞くと、リタイア後に受け取る「老齢年金」をイメージする人が多いかもしれませんね。
1.1 まずは仕組みを理解しよう!「国民年金+厚生年金」の2階建て構造
「2階建て構造」と呼ばれるそのしくみは、1階部分の「国民年金(基礎年金)」と2階部分の「厚生年金」から成り立ち、現役時代の働き方や過ごし方が、将来の年金水準を大きく左右する性質を持っています。
ここでは、「国民年金」と「厚生年金」の基本とあわせて、それぞれの「老齢年金の受給額」についても整理しておきましょう。
1.2 すべての現役世代が加入する「1階部分」:国民年金(基礎年金)
国民年金(基礎年金)の加入対象者は誰?
- 原則として日本に居住する20歳から60歳未満の全員(職業や国籍は問わない)
毎月支払う国民年金の保険料はいくら?
- 全員一律、ただし年度ごとに改定あり(※1)
将来受け取れる老齢基礎年金の受給額目安は?
- 保険料を全期間(480カ月)納付すれば、65歳以降で満額(※2)の老齢基礎年金を受給できる
※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円
1.3 会社員や公務員が上乗せする「2階部分」:厚生年金
厚生年金に加入できる対象者の条件とは?
- 会社員や公務員、またパート等で特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たした人(国民年金に上乗せで加入)
給料や賞与で変わる厚生年金の保険料の仕組み
- 収入に応じて(上限あり)変わる(※4)
現役時代の働き方が反映される老齢厚生年金の受給額
- 加入期間や納付した保険料により個人差が出る
このように、国民年金と厚生年金では、加入対象となる人、年金保険料の決まり方、老齢年金額の計算方法などが異なります。
そのため、現役時代の年金加入履歴により、実際に受け取る老齢年金額にはおのずと個人差が出てくるのです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
1.4 【2026年版・年金カレンダー】知っておきたい今年の年金支給日スケジュール
公的年金は、原則として「偶数月の15日(※5)」に、支給月の前々月分と前月分の2カ月分を合算して支給されます(後払い方式)。
2026年の「年金支給日」と「支給対象」の年金は以下の通りです。
- 2026年2月13日(金):2025年12月・2026年1月分
- 2026年4月15日(水):2月・3月分
- 2026年6月15日(月): 4月・5月分
- 2026年8月14日(金): 6月・7月分
- 2026年10月15日(木): 8月・9月分
- 2026年12月15日(火): 10月・11月分
※5 「15日」が土日・祝日の場合は直前の平日に前倒しされる
2. 【2026年度最新】物価高を反映!国民年金1.9%・厚生年金2.0%の増額改定へ
2026年度の年金額は、前年度から基礎年金(国民年金部分)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分を含む)が2.0%引き上げとなります。
改定後の年金額は、4月・5月分をまとめて支給する6月支給分から反映されます。
2.1 改定後の新基準!2026年度の国民年金と厚生年金の具体的な受給額例
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚生労働省は今回の年金改定の公表にあたり、「多様なライフコースに応じた年金額」として現役時代の働き方や収入ごとの年金額例を提示しています。
3. 【厚生労働省データ】現役時代の働き方でどう変わる?多様なライフコース別の年金試算
年金加入期間や収入により、どのように年金額が変わっていくのでしょうか。
厚生労働省は、2026年度の年金額改定内容とともに、現役時代の年金加入状況や年収ごとの年金額例を、「多様なライフコースに応じた年金額」として公表しました。
具体的には、「2026年度に65歳になる人の場合」の年金額の概算が、公的年金加入履歴の類型・男女別に「合計5パターン」提示されています。
3.1 【パターン①】会社員として長く働いた男性(厚生年金期間中心)の受給目安
年金月額:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
3.2 【パターン②】自営業やフリーランスの男性(国民年金・第1号期間中心)の受給目安
年金月額:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
3.3 【パターン③】キャリアを築いてきた女性(厚生年金期間中心)の受給目安
年金月額:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
3.4 【パターン④】自営業や専業主婦期間がある女性(国民年金・第1号期間中心)の受給目安
年金月額:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
3.5 【パターン⑤】会社員の夫を支えてきた女性(国民年金・第3号期間中心)の受給目安
年金月額:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
上記はあくまでも年金額の例ですが、厚生年金の加入期間が長く、収入が高いほど、老後に受け取る年金額は多くなる傾向が見られます。
また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたのかが、年金水準に大きな影響を与えていることも見て取れます。
4. 【男女別・全年齢データ】今のシニアはいくら貰っている?厚生年金と国民年金の受給実態
老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況により人それぞれです。ここでは、60歳~90歳以上のすべての受給権者について、厚生年金と国民年金の受給額分布を見ていきます。
4.1 男性16万円台・女性11万円台!厚生年金における平均月額の男女格差と個人差
厚生年金の平均年金月額は、全体では15万289円でした。男女別は下記のとおりです。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
【受給額の分布】厚生年金における月額階級ごとの受給者数一覧
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均年金月額は、全体で見ると15万円台ですが男女差があり、男性16万円台、女性10万円台となっています。
また、月額1万円未満となる人から、25万円を超える高額受給者まで幅広い層に分布しており、個人差が大きいことがわかります。
4.2 男女ともに平均5万円台!国民年金(基礎年金)における受給額の傾向
国民年金の平均年金月額は、全体では5万9310円でした。男女別は下記のとおりです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
【受給額の分布】国民年金における月額階級ごとの受給者数一覧
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均年金月額は、男女ともに5万円台、ボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」です。
多くの人が満額に近い年金額を受け取る一方で、月額1万円未満となる人も一定数存在しています。
5. まとめ
今回は、2026年度における公的年金の最新改定情報や、ライフコース別の具体的な受給額の目安について解説しました。
今年度の年金額は増額改定となったものの、日々の暮らしを取り巻く物価や光熱費の上昇を考慮すると、決して油断はできない状況が続いています。
日本の公的年金は現役時代の働き方や収入、加入期間によって将来受け取れる額が大きく異なるため、まずはご自身の状況を正確に把握することが重要です。
ねんきん定期便などを活用して「じぶんの年金額」の見込みを確認し、老後に必要な生活費とのバランスをシミュレーションしてみることをおすすめします。
その上で、公的年金をベースとしつつ、セカンドライフを豊かに過ごすための資金計画を少しずつ立てていくと良いでしょう。
これからの長い老後生活をより安心で快適なものにするために、本記事がお役に立てば幸いです。





