「クレヨンしんちゃん」の野原ひろしといえば、35歳・係長・年収600万円の“平凡なサラリーマン”として親しまれてきました。しかし最新の統計データで検証してみると、その「平凡」という評価には少し疑問符がつくかもしれません。

今回は野原ひろしの年収600万円が、現在の日本の男性でどの位置にあるのかを、国税庁や厚生労働省の調査データから読み解いていきます。

1. 【年収600万円】は日本男性の上位何パーセント?野原ひろしは平均以上!

野原ひろしの年収としてよく語られる「600万円」という数字は、今の日本で見ると“極端な高年収”ではないものの、しっかり稼いでいる水準といえます。

1.1 サラリーマン男性の平均年収は587万円

国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、2024年に1年を通じて勤務した男性給与所得者の平均年収は586.7万円(※)でした。600万円はこの平均をやや上回る水準です。

※年収:1年間の支給総額(給料・手当・賞与の合計額で、給与所得控除前の収入金額)

給与階級別給与所得者数・構成割合1/6

給与階級別給与所得者数・構成割合

出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

1.2 年収600万円超は「3人に1人」の上位層

男性の給与階級別分布を見ると、最も多いのは「400万円超500万円以下」で16.9%、次いで「500万円超600万円以下」で14.7%となっています。

一方で、「600万円超700万円以下」は10.3%です。男性給与所得者のうち、年収600万円を超える人は全体の36.2%となっています。

  • 600万円超 700万円以下:10.3%
  • 700万円超 800万円以下:7.6%
  • 800万円超 900万円以下:5.0%
  • 900万円超 1000万円以下:3.6%
  • 1000万円超 1500万円以下:7.0%
  • 1500万円超 2000万円以下:1.7%
  • 2000万円超 2500万円以下:0.4%
  • 2500万円超:0.6%

なお、年収600万円超の割合は増加傾向にあり、以前は現在よりも希少でした。2020年では全体の30.4%であり、4年間で5.8ポイント上昇しています。

年収600万円超の割合(2020年~2024年)2/6

年収600万円超の割合(2020年~2024年)

出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

1.3 同年代と比べても優秀な「ひろし」

年収は年齢も影響するところ、野原ひろしは35歳です。35~39歳男性の平均年収は573.8万円であり、600万円を稼ぐ野原ひろしは同世代と比べても高年収といえます。

年齢階級別の平均年収(2024年)3/6

年齢階級別の平均年収(2024年)

出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

野原ひろしは「どこにでもいる普通の会社員」というように描かれることもありますが、実は優秀なお父さんだったことがわかります。

2. 【35歳で年収600万円】を狙える会社とは?「双葉商事」の規模を大予想

野原ひろしの勤務先は「双葉商事」で、名前からは商社が連想されます。また、作中ではビル屋上に社名を表示している描写があることから、1棟全体を双葉商事が所有または占有している可能性もあり、一定の事業規模がうかがえます。

野原ひろしが勤める双葉商事は、どれほどの規模を持つのでしょうか。調査から探ってみましょう。

2.1 35歳で平均年収600万円は「500人以上」の企業で射程圏

事業所規模別の平均年収(2024年、35~39歳)4/6

事業所規模別の平均年収(2024年、35~39歳)

出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

先述の国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」では、勤務先の規模別の平均年収も確認できます。

年収は大企業ほど高い傾向にあり、野原ひろしと同年代(35~39歳)で平均年収が600万円に近づくのは「500人以上(591.1万円)」や「1000人以上(677.8万円)」となりました。

【事業所規模別の平均年収(2024年、男性、35~39歳)】

  • 10人未満:446.4万円
  • 10人以上:492.5万円
  • 30人以上:494.7万円
  • 100人以上:546.6万円
  • 500人以上:591.1万円
  • 1000人以上:677.8万円
  • 5000人以上:700.9万円

これを単純に当てはめれば、双葉商事は従業員を多数抱える大きい企業といえそうです。

2.2 「インフラ」「金融」「専門」が高年収 「流通」で年収600万円は高め

次に、「令和6年分 民間給与実態統計調査」から業種別の平均年収も確認してみましょう。

35~39歳の男女計で最も平均年収が高い業界は「電気・ガス・熱供給・水道業」で、820.6万円でした。次いで「金融業・保険業(731.8万円)」、「情報通信業(651.6万円)」と続いています。商社を含む「卸売業・小売業」は421.5万円と、平均を下回る状況です。

業種別の平均年収(2024年、35~39歳)5/6

業種別の平均年収(2024年、35~39歳)

出所:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

別の調査でも確認してみましょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、35~39歳の2025年の6月分の男女計の賃金(※)は「電気・ガス・熱供給・水道業」が44.88万円で最も高く、「金融業・保険業(44.87万円)」、「学術研究、専門・技術サービス業(44.05万円)」と並んでいます。

※賃金…決まって支給する現金給与額のうち、各種手当を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額(月額)

産業、年齢階級別賃金及び対前年増減率6/6

産業、年齢階級別賃金及び対前年増減率

出所:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」

一方、「卸売業・小売業」は33.67万円で、こちらの調査でも上位にはなりませんでした。卸売業と小売業では構造が異なりますが、流通業という区分で考えると、年収が特別高い業界ではないといえそうです。

もっとも、業界全体の年収が低いなら、それだけ野原ひろしの年収偏差値が高いということです。あくまで推測ですが、その勤務先である双葉商事が大企業であるという説を補強するとも考えられます。

3. 実は海外転勤もこなす「エリート商社マン」

野原ひろしはメキシコへの転勤を命じられたことがあり、双葉商事は海外事業も展開する大企業であることが予想されます。野原ひろしは、その営業部で係長に就いており、年収が高いことに不思議はありません。

年収600万円は、すでに同世代の平均を上回る水準ですが、年齢が進めばさらに上昇が予想されるほか、役職もまだキャリアアップが見込める位置にあります。作中では「平凡なサラリーマン」として描写されることが多い人物ですが、実は「エリート商社マン」としての顔を持っているのかもしれません。

参考資料