6月25日に日本銀行が公表した「資金循環統計(速報)」によると、家計の金融資産は過去最高となる2386兆円に達したことが分かりました。
世の中全体の資産が増加傾向にあるというニュースを目にして、「自分の老後資金はいくらあれば安心なのか」と考えたことがある人も多いでしょう。
筆者は現在、ファイナンシャルアドバイザーとして個人向けに資産運用コンサルティングを行っていますが、お客さまのライフプランをご一緒に考える中で、平均値だけではご自身の状況と照らし合わせにくいと感じる場面によく出会います。
実際の貯蓄額は世帯構成や年代によって大きく異なり、とくに一部の高額資産保有者の影響を受けやすい平均値だけでなく、実態に近いとされる中央値もあわせて確認することが重要です。
本記事では、40歳代から70歳代までの単身世帯・二人以上世帯の貯蓄額を比較するとともに、老後への備えに差が生まれるポイントについて見ていきます。
1. 【年代別】単身世帯の貯蓄額はどのくらい?平均値と中央値を比較
まずは、金融経済教育推進機構「2025年 家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、単身世帯の貯蓄額を見ていきましょう。
1.1 40歳代・単身世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 金融資産非保有:32.1%
- 100万円未満:15.1%
- 100~200万円未満:7.1%
- 200~300万円未満:5.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.2%
- 1500~2000万円未満:1.2%
- 2000~3000万円未満:2.8%
- 3000万円以上:9.9%
- 無回答:2.5%
- 平均:859万円
- 中央値:100万円
40歳代では、平均貯蓄額は859万円ですが、中央値は100万円となっており、大きな差があります。
また、金融資産を保有していない人や、100万円未満の人も一定割合を占めています。
1.2 50歳代・単身世帯の貯蓄額(平均・中央値)
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- 金融資産非保有:35.2%
- 100万円未満:10.1%
- 100~200万円未満:7.4%
- 200~300万円未満:4.6%
- 300~400万円未満:2.7%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.0%
- 1500~2000万円未満:3.3%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:10.4%
- 無回答:1.9%
- 平均:999万円
- 中央値:120万円
50歳代では、平均貯蓄額は999万円、中央値は120万円となっています。
それでは、60歳代・70歳代ではどのような状況なのでしょうか。
1.3 60歳代・単身世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 平均:1364万円
- 中央値:300万円
1.4 70歳代・単身世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 平均:1489万円
- 中央値:500万円
60~70歳代では、平均は1300万~1400万円台、中央値は300万~500万円となっています。
退職金や相続などが平均値や中央値を押し上げていると考えられますが、貯蓄額には大きな個人差があることが分かります。
2. 【年代別】二人以上世帯の貯蓄額はどのくらい?平均値と中央値を比較
続いて、同調査から二人以上世帯の貯蓄額を見ていきます。
2.1 40歳代・二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 金融資産非保有:18.8%
- 100万円未満:10.0%
- 100~200万円未満:6.2%
- 200~300万円未満:5.1%
- 300~400万円未満:4.4%
- 400~500万円未満:2.6%
- 500~700万円未満:7.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:9.7%
- 1500~2000万円未満:6.5%
- 2000~3000万円未満:8.2%
- 3000万円以上:13.1%
- 無回答:2.1%
- 平均:1486万円
- 中央値:500万円
40歳代は住宅費や教育費などの支出が重なりやすい年代ですが、平均貯蓄額は1486万円、中央値は500万円となっています。
2.2 50歳代・二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 金融資産非保有:18.2%
- 100万円未満:6.5%
- 100~200万円未満:6.4%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.5%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.7%
- 700~1000万円未満:7.7%
- 1000~1500万円未満:9.3%
- 1500~2000万円未満:6.1%
- 2000~3000万円未満:8.1%
- 3000万円以上:18.8%
- 無回答:2.2%
- 平均:1908万円
- 中央値:700万円
50歳代では平均貯蓄額は1908万円、中央値は700万円となっています。
一方で、金融資産を保有していない人と100万円未満の人を合わせると約2割を占めており、資産状況には大きな差が見られます。
2.3 60歳代・二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 平均:2683万円
- 中央値:1400万円
2.4 70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 平均:2416万円
- 中央値:1178万円
60~70歳代では、平均貯蓄額は2000万円を超え、中央値も1000万円以上となっています。
3. 「貯蓄額」だけでは老後が安泰になるかは決まらない
ここまで見てきたように、年代が上がるにつれて平均貯蓄額や中央値は増える傾向があります。
しかし、貯蓄額が多いからといって、必ずしも老後の生活に不安がないとは限りません。
老後の生活は、貯蓄だけで成り立つものではなく、公的年金などの収入と、日々の生活費や医療費、介護費などの支出とのバランスによって左右されます。
同じ1000万円の貯蓄があっても、年金収入の額や生活スタイルによって、家計にゆとりがある人もいれば、不安を感じる人もいます。
また、退職後は収入が現役時代より減少する一方で、長寿化により老後資金が必要となる期間は長くなる傾向があります。
そのため、老後への備えを考える際は、「現在いくら貯蓄があるか」だけではなく、「毎月の収支がどうなるか」という視点も欠かせません。
老後資金を準備する目的は、貯蓄額を増やすことそのものではなく、安心して生活を続けられる家計を築くことにあります。
では、老後への不安を小さくするためには、どのような備えが重要なのでしょうか。
4. 老後への不安を分ける3つのポイント
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老後に不安を感じる人と、比較的安心して備えている人では、どのような違いがあるのでしょうか。
4.1 違い1:必要な老後資金を把握しているか
老後への不安が大きい人は、「老後の生活費はいくら必要か」「公的年金をどのくらい受け取れるか」「不足する資金はいくらか」といった点を把握できていないことが少なくありません。
現状が分からないままでは、具体的な対策も立てにくくなります。
まずは老後の生活費を試算し、「ねんきんネット」などで将来の年金見込み額を確認しましょう。
そのうえで、不足する金額を整理し、どのくらいの頻度で、いくらずつ、どの金融商品を活用して準備するかを具体的に考えることが重要です。
4.2 違い2:自然に貯蓄できる仕組みを活用しているか
貯蓄は意志だけで続けようとすると、毎月の積立額が安定しないことがあります。
そのため、給料日に先に貯蓄分を確保し、残りのお金で生活する「先取り貯蓄」が有効とされています。
金融機関によっては、自動積立サービスを提供しているところもあるため、活用を検討してみるのもよいでしょう。
こうした仕組みを取り入れることで、日々の判断に左右されることなく、継続的に貯蓄しやすくなります。
4.3 違い3:老後を見据えて生活を見直しているか
老後への備えは、資金だけでなく、暮らし方や働き方を考えることも大切です。
将来どのような生活を送りたいかをイメージすることで、必要な準備も見えやすくなります。
生活スタイルによっては固定費を抑えられるため、50歳代を迎えたら住まいを含めたダウンサイジングを検討するのも一つの方法です。
また、現在では60歳代以降も働き続ける人が増え、働き方の選択肢も広がっています。
収入を確保するという視点から、キャリアを見直すことも老後への備えにつながるでしょう。
5. 貯蓄額だけでなく老後の収支全体を考えよう
本記事では、40歳代から70歳代までの単身世帯・二人以上世帯の貯蓄額や、老後への備えに差が生まれるポイントについて紹介しました。
年代別の貯蓄額を見ると、年齢とともに平均値・中央値は増える傾向がありますが、その一方で金融資産をほとんど保有していない世帯も一定数存在し、資産状況には大きな差があります。
また、老後への備えでは、必要な生活費や年金受給額を把握し、先取り貯蓄や自動積立などの仕組みを活用することが重要です。
老後資金を考える際は、貯蓄額だけを見るのではなく、年金収入や生活費も含めた収支全体を把握し、自分に合った資産形成や生活設計を早めに進めることが大切となるでしょう。
参考資料
川勝 隆登