老後の生活費への関心が高まるなか、私自身も最近マンションを購入し、これまで以上に物価の上昇を実感しました。住宅価格はもちろん、家具や家電、引っ越し費用など、さまざまな場面で「以前より高くなっている」と感じる機会が増えています。
現役世代でもライフイベントを通じて物価高の影響を感じる今、年金生活を送る方にとっては、家計への不安はさらに大きなものになるでしょう。
私は証券会社で個人のお客さまの資産運用をサポートしてきました。その経験から感じるのは、資産形成を考えることも大切ですが、その前に「利用できる公的制度を知ること」が家計の安心につながるということです。この記事には、「一人で悩まず、まずは使える制度を知ってほしい」という思いを込めました。
皆さんは、公的年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度をご存じでしょうか。この制度は、一定の所得基準を満たす方の生活を支えるためのもので、2026年度は給付額の引き上げも予定されています。
本記事では、どのような方が対象になるのか、いくら受け取れるのか、そして申請にはどのような手続きが必要なのかを分かりやすく解説します。年末に向けて家計を見直すこの機会に、ご自身が対象になるかを確認し、利用できる制度を上手に活用する準備を始めてみてはいかがでしょうか。
1. 記事から読み解く「年金生活者支援給付金」3つのポイント
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制度の概要と対象者の条件 -
2026年度の給付額は3.2%増額 -
受け取りには初回のみ手続きが必要
2. 年金生活者支援給付金とはどのような制度か
年金受給者の生活を支えることを目的に、2019年に年金生活者支援給付金制度が創設されました。
受給要件を満たした対象者には、2カ月に1回、公的年金の支給日にあわせて年金生活者支援給付金が支給されます。
年金生活者支援給付金には3種類があり、受給する基礎年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」にわかれます。
それぞれの所得要件を満たす基礎年金受給者が、この給付金の対象となるということです。
3. 年金生活者支援給付金を受け取るための支給要件
基礎年金を受給している人のうち、年金等の収入や所得の合計額が一定基準以下となる場合、「年金生活者支援給付金」がもらえる可能性があるとわかりました。
本章では「年金生活者支援給付金」の具体的な支給要件について、3種類にわけて見ていきましょう。
3.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件
まず老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
3.2 障害年金生活者支援給付金の支給要件
下記の支給要件をすべて満たす場合、障害年金生活者支援給付金の支給対象となります。
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 障害年金等の非課税収入は除く
3.3 遺族年金生活者支援給付金の支給要件
下記の支給要件をすべて満たす場合、遺族年金生活者支援給付金の支給対象となります。
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 遺族年金等の非課税収入は除く
4. 2026年度における年金生活者支援給付金の給付額
年金生活者支援給付金の給付額は、前年の物価変動率にもとづき決定されます。
2026年度では前年に比べ+3.2%の増額となりました。
4.1 2026年度の給付額一覧
- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円
老齢年金生活者支援給付金のみ、「基準額」であることに注意が必要です。
実際には「月額5620円」を基準として、「保険料納付済期間や免除期間」に応じて支給額が計算されます。
5. 年金生活者支援給付金の請求手続きについて
「年金生活者支援給付金」は勝手に受け取れるわけではありません。申請が必須となっているので手続き漏れがないように注意しましょう。
ここでは、該当する人が多い2つのパターンにわけて、請求手続きの方法を見ていきます。
5.1 ケース1:すでに年金を受け取っており、新たに対象となった方
- 毎年9月の第1営業日から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。受け取った方は必要事項を記入し、切手を貼って郵便ポストに投函します。
- 締切日までに提出すると10月分まで遡って受け取れますが、それ以降になると、請求した月の翌月分からの支給となります。早めの手続きを心がけましょう。
※「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた人は、電子申請による提出も可能です。電子申請を行った場合、郵送での提出は不要です。
5.2 ケース2:これから老齢年金の受給が始まり、同時に対象となる方
- 受給権が発生する3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」が送付されます。こちらに「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出します。
5.3 翌年以降の手続きは原則として不要です
毎年手続きが発生するの?と思う方もいますが、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り翌年以降の手続きは原則不要です。
※年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づき、継続支給の判定が行われます。継続支給の判定結果は、毎年10月分(支払いは12月)から1年間反映されます。
元銀行員時代、銀行の窓口でお客さまとお話ししていると、「年金生活者支援給付金」のお知らせ(はがき)が届いていたにもかかわらず、「難しそうだったから」「自分は対象ではないと思っていた」と、そのままにしてしまっている方が意外と多くいらっしゃいました。
公的制度は、対象となる場合でも、原則として申請しなければ給付を受けることができません。月額約5600円でも、年間では約6万7000円になります。物価高が続く今だからこそ、この金額が家計の助けになるという方も少なくないでしょう。
毎年9月頃に届く案内のはがきや、新たに年金を請求する際に同封される書類は、まずは内容を確認しておくことをおすすめします。手続きがよく分からない場合は、一人で悩まず、年金事務所やお近くの相談窓口に問い合わせてみましょう。最初の手続きを済ませておくことで、安心して制度を利用できます。
6. 高齢者世帯の生活意識
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の生活意識に関するリアルな結果を見ていきます。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
6.1 高齢者世帯の生活意識
- 大変苦しい:21.0%
- やや苦しい:31.1%
- 普通:41.7%
- ややゆとりがある:5.4%
- 大変ゆとりがある:0.8%
この調査結果からは、シニア世帯の暮らし向きが、経済状況によって大きく3つの層に分かれている様子が見えてきます。
まず、半数以上(52.1%)が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答し、日々の生活に経済的な厳しさを感じています。
その一方で、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯は合計してもわずか6.2%。経済的な余裕を実感できているシニア世帯はごく一握りのようです。
そして、これら両者の中間にあたるのが、41.7%を占める「普通」と回答した層です。この割合は「苦しい」層には及ばないものの、「ゆとりがある」層を大きく上回りました。
経済的な余裕があるとは言えないものの、堅実に暮らす一定数のシニア世帯が、厚い中間層を形成している様子もうかがえます。
7. まとめ
本記事では年金生活者支援給付金の仕組みについて解説していきました。
物価高騰が続く中では貴重な生活資金となりますので、対象となる方は申請を忘れないようにしましょう。
本制度のような支援制度は他にもあるため、対象となるかどうかの確認も併せてしておきたいですね。
最新の情報や申請方法など、各自治体のホームページから確認することができるため、こまめにチェックしておきたいですね。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」
川勝 隆登
