6月も下旬を迎え、日差しが一段と強くなり、本格的な夏の到来や間近に迫るお盆休みの予定が気になり始める季節となりました。
シニア世代の家計にとっては、先日15日に「改定後初となる年金振込」を終えたばかりですが、実はその次の大きな節目である「8月の支給日」に向けて、今すぐ確認しておくべき重要な制度があります。
それが、一定の要件を満たす方を対象に、年金に毎月一定額が上乗せされる『年金生活者支援給付金』です。2026年度は物価動向等に伴う改定により、給付基準額が前年度から「3.2%増額」されるという嬉しいニュースも届いています。
しかし、この制度で最も注意しなければならないのは、初めてもらう場合は本人が自ら手続きをしない限り1円も支給されない「申請主義」となっている点です。
本記事では、次回8月14日の支給日に間に合わせるために、ご自身やご家族が対象になっているかを見極める基準と、具体的な申請方法を優しく解説します。
1. 年金生活者支援給付金の制度概要
老齢・障害・遺族の各種基礎年金を受給している方で、所得などの一定条件を満たす場合に、年金に上乗せして支給されるのが「年金生活者支援給付金」です。
この制度は、対象となる基礎年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3つに分かれています。
1.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件
- 65歳以上で老齢基礎年金の受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、所得基準額以下であること
所得基準額は生年月日によって異なり、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下と定められています。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は、公的年金等の収入金額から除かれます。
※2 所得基準額をわずかに超える方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。
1.2 障害年金生活者支援給付金の支給要件
- 障害基礎年金の受給者であること
- 前年の所得額が479万4000円以下であること(扶養親族等の数に応じて増額)
※ 障害年金等の非課税収入は、所得額の計算から除かれます。
1.3 遺族年金生活者支援給付金の支給要件
- 遺族基礎年金の受給者であること
- 前年の所得額が479万4000円以下であること(扶養親族等の数に応じて増額)
※ 遺族年金等の非課税収入は、所得額の計算から除かれます。
いずれの給付金においても、前年の所得が支給要件を判断する上での重要な基準となります。
2. 【2026年度改定】最新の給付基準額は3.2%増額
年金生活者支援給付金の支給額は、公的年金と同様に毎年の物価変動を反映して改定される仕組みです。
2026年度の給付額は、前年度比で3.2%の引き上げが決定しました。この改定額は、2026年6月に支給される4月・5月分から適用されます。
2026年度における種類別の支給基準額は以下の通りです。
- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級 月額7025円・2級 月額5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円
ただし、老齢年金生活者支援給付金については、この基準額を基に、個人の保険料納付済期間や免除期間に応じて実際の支給額が計算されます。
3. 老齢年金生活者支援給付金の年間受給額と支給スケジュール
給付額は月額で提示されますが、実際の支給は2カ月分がまとめて年6回行われる仕組みです。
したがって、受給額を正確に把握するためには、年間の総額や支給のタイミングを理解しておくことが大切です。
例えば、老齢年金生活者支援給付金の基準額である月額5620円の場合、年間の受給総額は6万7440円になります。
支給は偶数月の15日に行われ、4月・5月分は6月15日に、6月・7月分は8月15日に、というサイクルで2カ月分ずつ支給されます。
このため、1回あたりの支給額は1万1240円となり、これが年6回に分けて支給されます。
月額で見ると少額に感じるかもしれませんが、年間で計算すると生活費の助けとなるまとまった金額になります。
支給額とスケジュールを事前に把握しておくことで、より計画的な家計管理が可能になるでしょう。
※実際に支給される金額は個人の状況により異なります。
4. 【重要】申請しないと支給されないケースと手続き方法
年金生活者支援給付金は、公的年金と同じく、請求手続きを完了しなければ受給資格があっても支給されません。
ここでは、対象となることが多い2つのパターンについて、具体的な手続きの流れを解説します。
4.1 請求手続き1:すでに年金受給中で新たに支給対象となった場合
すでに年金を受給中の方が新たに対象となった場合、例年9月上旬頃に日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。
支給開始は原則として請求手続きが完了した月の翌月分からとなるため、請求書が届いたら速やかに手続きを進めることが重要です。
なお、この請求書(はがき型)が届いた方は、マイナポータルを利用した電子申請も可能で、その場合は郵送での手続きは不要になります。
4.2 請求手続き2:新規に老齢年金の受給が始まる人が支給対象となった場合
これから老齢基礎年金の受給を開始する方の場合、65歳になる3カ月前に日本年金機構から送付される「年金請求書(事前送付用)」に、「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
必要事項を記入し、年金の受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書とあわせて年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。
一度請求手続きを完了すれば、翌年以降も支給要件を満たし続ける限り、原則として再度の手続きは不要で、継続して給付金が支給されます。
※年金生活者支援給付金の支給は毎年度、前年の所得情報などに基づいて継続の可否が判定されます。この判定結果は、毎年10月分(12月支給)から1年間適用されます。
5. 年金の平均受給額はいくら?厚生年金と国民年金の実態
厚生労働省年金局が公表した『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』に基づき、厚生年金と国民年金の平均受給月額を男女別に見ていきましょう。
5.1 厚生年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
5.2 国民年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
会社員や公務員が加入する厚生年金(国民年金部分を含む)は、現役時代の加入期間や収入によって受給額が大きく変動するため、個人差が顕著に現れます。
データ上でも、平均月額が2万円未満の方から25万円を超える方まで、受給額は非常に幅広く分布しています。
一方、自営業者などが受給する国民年金(老齢基礎年金)は、平均月額が男女ともに5万円台です。保険料を40年間すべて納付した場合の満額でも、2026年度は月額7万608円となります。
国民年金のみを受給する場合は厚生年金ほどの個人差はありませんが、老後に向けた自助努力による資金準備の重要性がより高まるといえます。
6. まとめ:公的支援を正しく理解し、家計を見直す重要性
本記事では、2026年度の年金生活者支援給付金に関する基準額、支給要件、そして申請方法について詳しく解説しました。
年金生活者支援給付金は、所得が一定基準以下の基礎年金受給者にとって、生活を支える重要な制度です。しかし、最も重要なのは、対象者であっても自ら請求しなければ支給されないという点です。
また、公的年金の受給額には大きな個人差があり、特に国民年金のみの場合は受給額が限られるという実態も明らかになりました。
これらの事実を踏まえ、まずはご自身が制度の対象となるか、申請手続きは完了しているかを速やかに確認することが不可欠です。
この機会に、ご自身が利用できる公的制度を改めて確認し、家計全体の状況とあわせて見直してみてはいかがでしょうか。
7. 【監修者のコメント】この記事の総括とこれからの実務上の注意点
『年金生活者支援給付金』は、社会保障制度における重要な福祉的加算です。
本制度で実務上最も問題となるのが『申請主義』の壁です。行政側が対象候補者を把握しているにもかかわらず自動振込にしない理由は、本人の受給意思の確認という法的な手続き上の構造に基づいているためです。
特に注意すべきは、前年に所得制限を超えていた人が、その後の収入減少で今年は『新たに支給対象』になるケースです。この場合、自治体からの通知を見落とすと受給権を失ってしまいます。
平均的な年金額のデータと比較しつつ、自身が使える制度を能動的にチェックし、申請手続きを速やかに完了させることが不可欠です。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「個人の方の電子申請(年金生活者支援給付金請求書)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内リーフレット」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 神戸市「年金生活者支援給付金の振込みはいつですか?」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
- LIMO「来月、6月15日支給分から増額改定!申請しないと0円「年金生活者支援給付金」はいくら年金に上乗せ?」








