この記事の読みどころ

マイナス金利で高い利回りを求める一部の資金が、百貨店の友の会に向かっているようです。

実際に百貨店の友の会のカウンターは、平日の昼間にも関わらず、混雑していました。個人の関心が向いている可能性が高そうです。

百貨店の友の会の積み立ては利回りが高く、税金もかからないので、有利な運用先の一つとなるかもしれません。一方で、注意点もあります。あくまで消費を前提としているので、満期を迎える頃に買い物で使う予定がある場合には、暮らしに役立つ仕組みと言えそうです。

マイナス金利の影響で高い利回りを求めてお金が動く

2016年1月29日に日本銀行がマイナス金利の導入を表明して1か月がたちました。未体験の領域に入ったという印象が強いせいか、メディアでも多く取り上げられ、「マイナス金利」という言葉はよく耳にするようになりました。

マイナス金利になると私たちの暮らしはどうなるのでしょうか・・・。

「銀行預金に手数料がかかるようになるのではないか?」という心配の声も聞こえてきます。「手数料がかかるくらいなら、たんす預金が増えるので、金庫が売れるのではないか?」という見方もあります。また、MMFや一部の保険商品が新規募集を停止したという報道も目にしました。

暮らしへの影響はいろいろ考えられます。ただ、ほぼ間違いなく言えそうなことの一つは、「世の中のお金が高い利回りを求めて動く」ということではないでしょうか。

それは金融市場だけの話ではなく、身近なところでも起きているかもしれません。

混雑する百貨店の友の会カウンター

わが家ではコーヒーをよく飲むので、ネスプレッソのカプセルを定期的に購入しています。そこで、以前より、カプセルを購入するお店を1か所に決め、そのお店が入っている百貨店の友の会で積み立てをしています。

たまたま、昨年2月に三越伊勢丹の「エムアイ友の会」で積み立て始めた分がありました。それが満期を迎えたので、平日の午後に、日本橋三越のカウンターで手続きをしてきました。

番号札をとると、5~6人待ち。椅子に座って様子を見ていると、いくつもある窓口はほぼフル稼働のようでした。自分の番になり、手続きをしながらスタッフにいろいろと聞いてみたところ、2月に入ってからお客さまが急に増え出したとのことでした。

百貨店の友の会とは

百貨店の友の会の歴史は意外と古く、1925年に鹿児島の山形屋が始めた「山形屋七草会」が最初と言われています。今では多くの百貨店に友の会が存在します。日本百貨店協会のウェブサイトでは、地域別に友の会を探すことができます。

百貨店の友の会とは、一定期間、毎月一定額を積み立てて、満期になると商品券などになって戻ってくる仕組みのことです。

たとえば、1か月1万円を1年間積み立てるとします。積み立てたお金は12万円(毎月1万円×12か月)になります。1年後の満期を迎えると、積み立てた12万円に1万円分のボーナスがついて、合計13万円が戻ってきます。この場合、13万円÷12万円で約8.3%の年利回りとなります。

友の会は、割賦販売法で定める前払式特定取引業として規制されています。したがって、金融庁管轄の金融商品ではなく、利子に該当するボーナス分について、税金はかかりません。

また、積み立て分にボーナスがつくこと以外に、会報誌や提携施設での優待など、会員向けの特典が用意されています。年利回りが高く、税金がかからず、優待もあるということもあって、高い利回りを求める個人の資金の一部が友の会に向かっているようです。

百貨店の友の会の注意点

このようにお得感が高い百貨店の友の会にも、注意点はあります。

注意点1. 「いつか使うかもしれないから積み立てる」という考え方は危険

いくら利回りが高くとも、その百貨店でそもそもお買い物をしない、または買いたいものがないのであれば、積み立てる意味はありません。また、百貨店で売っているのと同じものを別のお店で安く買えるのであれば、別のお店での買い物を優先した方が良いこともあります。

「いつか使うのではないか・・・」というのであれば、ちょっと立ち止まって考え直してください。百貨店の友の会は、あくまで、(満期を迎える頃に)その百貨店でお買い物をする予定があることが前提となります。

注意点2. 換金できない

満期で戻ってくる金額の受け取り方について、今は、会員証付きのお買い物カードに入れる形式が主流になっています。以前のように、お買い物券を渡されるケースは少なく、金券ショップで売って換金するということは基本的にはできないと考えた方が無難です。

注意点3. 百貨店で売っているものであっても買えないものがある

百貨店で売っている商品はたいていの場合、友の会カードで購入することができます。しかし、商品券や切手、金地金など、換金性が高いものを友の会カードで購入することはできません。また、百貨店によって、購入できるもの、購入できないものが違うことがあります。

たとえば、三越伊勢丹の「エムアイ友の会」では、2016年8月から、旅行のツアー商品の支払には充てられなくなります。一方、高島屋の「ローズサークル」では、高島屋内にある旅行代理店で販売されているツアー商品の支払いは可能のようです(新幹線の乗車券などの支払いは不可)。また、大丸松坂屋の「JOY CLASS」の約款を見ると、わざわざ「ティファニー、カルティエ、ルイ・ヴィトン等のブランド品」は除外と明記されています。

「何が買えるか、または何が買えないか」については、積み立てを申し込む際に確認することをお勧めします。

注意点4. 積み立ての上限が設定されている百貨店もある

百貨店によって積立金の上限を設定しているところもあります。三越伊勢丹の「エムアイ友の会」では、積み立ては12口までとしているようです。1口の最高額が50,000円なので、月60万円が積み立ての上限となります。一方、高島屋の「ローズサークル」では、上限の設定はありません。

注意点5. 場合によっては手数料がかかるケースもある

積み立ての方法は、百貨店のカウンターで現金を入金するか、銀行口座からの毎月の引き落としの2つのパターンがあります。また、全額を一括で積み立てられるところもあります。

友の会では、基本的には手数料はかかりませんが例外もあります。たとえば、大丸松坂屋の「JOY CLASS」では、銀行口座からの引き落とし設定にすると、年度事務手数料として308円(税込)がかかります。

注意点6. 満期の後に百貨店のカウンターに行って手続きをする必要がある

満期を迎える頃、はがきが送られてきます。指定の日付以降にそのはがきなどを持ってカウンターに行き、積み立て+ボーナスを受け取る手続きをします。その手続きのために、満期後に、必ず1度は百貨店に足を運ぶ必要があり、意外と面倒です。百貨店としては、来店してもらうことが目的ですから、この方式は当面変わらないのではないかと思われます。

注意点7. ルールが変更されることがある

時に、百貨店がルールを変更することがあります。実際、上述した通り、三越伊勢丹の「エムアイ友の会」では、ツアー旅行の支払いに使えなくなるというように、ルールが変更されました。

また、百貨店の統合が起きると、友の会の内容が変更されることが多いようです。さらに、過去には、西武百貨店の「セゾンクラブ」のように、友の会の新規募集を廃止するケースもありました。

なお、いくつかの友の会の約款を見ると、「割賦販売法に基づいてカード残高の2分の1については前受金保全がなされている」とあります。百貨店に万が一のことがあっても、積み立てた残高のすべてがいきなりゼロになる可能性は低そうです。

まとめ

百貨店の友の会では、1年後満期のコースが一般的ですが、最近は、半年後満期のコースも見られるようになりました。半年後または1年後に、その百貨店で買い物の予定がある場合には、友の会は暮らしに役立つと思います。あくまで、「お買い物で使うこと」を前提とした仕組みであることを忘れないようにしたいものです。

【2016年3月3日 藤野 敬太】

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藤野 敬太