物価高騰が続くなか、日々のやりくりに悩む方も多いのではないでしょうか。
特に年金が主な収入源であるシニア世代にとって、物価高は切実な問題です。J-FLEC(金融経済教育推進機構)の調査(2025年)によると、70歳代の約87%が「年金生活にゆとりがない」と感じており、その最大の理由はやはり「物価上昇」でした。
そんな厳しい状況下でぜひ確認しておきたいのが、公的年金に上乗せして受け取れる「年金生活者支援給付金」です。
直近の年金支給日(6月15日)は過ぎ、次回の支給日は8月14日(金)となります。この8月支給分にも、2026年度の増額改定が反映された年金が振り込まれます。
この記事では、物価高を乗り切る対策として改めて知っておきたい「年金生活者支援給付金」の制度内容や、もらい損ねないためのポイントを分かりやすく解説します。
1. 公的年金の受給額に個人差が生じる理由とは?仕組みを解説
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均月額は、国民年金(老齢基礎年金)で約5万円、厚生年金(国民年金部分を含む)では約15万円です。
しかし、この表が示すように、実際の受給額は人によって大きく異なります。
厚生年金を月に30万円以上受け取る人がいる一方で、国民年金・厚生年金ともに月額3万円未満の人もおり、受給額は非常に幅広く分布しているのが現状です。
公的年金とその他の所得を合計しても、所得が一定の基準に満たない場合、「年金生活者支援給付金」の支給対象となる可能性があります。
2. 【2026年度】年金生活者支援給付金は3.2%増額!老齢・障害・遺族ごとの基準額
年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定基準額を下回る年金受給者を支援するため、2019年に開始された制度です。この給付金は、2カ月に1度、公的年金に上乗せして支給されます。
受給している年金の種類に応じて、以下の3つの給付金が用意されており、それぞれ支給要件や金額が異なります。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2.1 2026年度の給付金、月額はいくらになる?
2026年度の年金生活者支援給付金の額は、物価の変動などを考慮し、前年度から3.2%引き上げられることが決まっています。
【2026年度の月額】
- 老齢年金生活者支援給付基準額:5620円
- 障害年金生活者支援給付金:1級 7025円・2級 5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:5620円
老齢年金生活者支援給付金については、この基準額をもとに、保険料の納付済み期間などに応じて個別の支給額が計算されます。
これらの金額は月額のため、実際の支給時には2カ月分がまとめて年金に加算されます。例えば、基準額を満額受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年間では約6万7000円が支給される計算になります。
参考として、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。
※2025年3月時点で認定されている方の平均給付額です。
3. 【支給要件】年金生活者支援給付金の対象となる人とは?判定基準を見る
それでは、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な要件を見ていきましょう。
まず、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれの基礎年金(障害基礎年金または遺族基礎年金)を受給していて、なおかつ前年の所得が479万4000円以下の方が対象です。
この所得の判定には、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。また、扶養親族の数に応じて所得基準額は上がります。
一方で、「老齢年金生活者支援給付金」は、所得以外にもいくつかの要件を満たす必要があります。
3.1 「老齢年金生活者支援給付金」の具体的な受給条件
老齢年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たす方が対象です。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額と、その他の所得(給与所得や利子所得など)の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下であること
老齢年金生活者支援給付金の所得判定においても、障害年金や遺族年金といった非課税収入は計算に含めません。
また、所得が基準額を少しだけ超えたために給付の対象から外れてしまう方との公平性を図るため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度も設けられています。
補足的老齢年金生活者支援給付金について
前年の所得合計額が基準額を超えていても、昭和31年4月2日以降生まれの方で90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方で90万6700円以下であれば、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。
この給付金は、所得額に応じて支給額が段階的に減っていく仕組みになっています。
4. 【請求フロー】年金生活者支援給付金は「手続きをしないと受け取れない」
重要なポイントは、年金生活者支援給付金は自動で支給されるのではなく、ご自身で請求手続きを行う必要があるという点です。
対象者であっても、何もしなければ年金に上乗せされることはないため、注意が必要です。
すでに年金を受給中の方で、所得の減少などによって新たに給付金の対象となった場合には、毎年9月1日以降に日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が送付されます。
4.1 9月頃に届く「緑の封筒」とは?年金受給中の方向けの手続き
※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
また、これから65歳になり老齢基礎年金の請求手続きをする方には、誕生日の3カ月前に送られる年金請求書に、給付金の請求書が同封されています。
必要事項を記入のうえ、年金請求書とあわせて提出しましょう。
4.2 給付金の申請は一度きり?翌年度以降の手続きについて
この給付金は、一度申請して受給が決まれば、支給要件を満たしている限り、翌年度以降に改めて手続きをする必要はありません。
継続して支給されるかの判定は、前年の所得をもとに毎年行われ、その結果は10月分(12月支給分)から1年間適用されます。もし対象から外れた場合は、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。
なお、毎年度(4月分から)の支給額は、毎年6月上旬に送付される「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」および「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認できます。
5. まとめにかえて
この記事では、物価高騰が続く中で家計の助けとなる年金生活者支援給付金について、その仕組みや手続き方法を解説しました。
この給付金を受け取るためには請求手続きが必須です。ご自身やご家族に、請求手続き漏れがないかぜひ確認してみてくださいね。
貯蓄や資産運用で備えるとともに、今回ご紹介した給付金のような公的支援に関する情報にも、アンテナを高く張っておきましょう。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内(令和7年度版)」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 総務省「個人住民税」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」




