2. 「タカ派」の彼がなぜ利下げ容認に?AIがもたらすスタンスの急変
ウォーシュ氏は長年、インフレ抑制や金融引き締めを重視する「タカ派」の代表格として知られてきました。彼は、中央銀行の市場への介入縮小を強く主張しています。
特に問題視しているのが、FRBの「バランスシート(中央銀行が保有する国債などの資産規模)」の肥大化です。2020年のコロナ禍でFRBは大規模な量的緩和(QE)を行い、市場に大量の資金を供給しました。その結果、バランスシートはコロナ前の約4兆ドルから、一時はその2倍以上に膨れ上がりました。
ウォーシュ氏は、こうした大規模な緩和が市場の価格発見機能を歪め、本来であれば淘汰されるべき非効率な企業を延命させてしまったと批判しています。
ところが、2025年頃から彼のスタンスに変化が見られ始めます。景気刺激を重視する「ハト派」的な側面、つまり「利下げ」を容認する姿勢を見せ始めたのです。その理由について疑問が投げかけられると、泉田氏は次のように解説します。
「AIが生産性を劇的に向上させるっていうので、ここで彼が言ってきたのが、金利を下げてもインフレは再燃しないっていう理屈です」
通常、金利を下げてお金を借りやすくすると、消費や投資が活発になり、物価が上がる「インフレ」が起きやすくなります。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機とした原材料費の高騰(コストプッシュ型インフレ)などもあり、FRBはインフレを抑え込むために政策金利を5%台まで引き上げてきました。
しかし、ウォーシュ氏は「AIの普及によって企業の生産性が上がり、人件費などのコストが下がるため、金利を下げてもインフレは起きない」という独自のロジックを展開し始めたのです。
ただし、肥大化したバランスシートを縮小させる「量的引き締め(QT)」は継続すべきだという、タカ派としての主張も維持しています。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日