「10年物新型窓口販売国債」の募集を2か月連続で中止

財務省は2016年3月2日、個人や地方自治体など向けに販売を予定していた10年物の「新型窓口販売国債(新型窓販)」の募集を中止すると発表しました。10年物国債の募集は、先月初めて中止になり、2か月連続です。

新型窓販は満期が2年、5年、10年の固定金利型の国債で毎月発行されています。2年物は2014年11月から、5年物も15年9月から募集中止が続いています。

個人向け国債は3年固定、5年固定、10年変動ともに最低利回りが設定されているため予定通り発行されます。

ところで、新型窓販の募集中止の理由について、新聞などでは「日銀がマイナス金利政策を導入したことなどにより、利回りがマイナスになる見通しとなり……」などと書かれています。

わかったようで、わかりにくいところです。その仕組みをご紹介しましょう。

国債の利回りは入札で決まる

ポイントの一つは、国債の利回りは入札で決まるということです。

入札に参加するのは投資家(金融機関)です。3月1日に財務省が行った10年物国債の入札の条件は、額面100円、利息は年0.1%(10年で1%)というものでした。満期まで保有すれば、元本の100円と10年間の利息を合わせた101円になります。

一般的に、金融機関は101円よりも低い価格でしか入札しません。それより高い金額で買えば損をするからです。

ところが、1日の入札では平均落札価格が101円25銭となりました。満期まで保有しても101円しか戻らないので、金融機関は25銭の損をします。年間の利回りは計算するとマイナス0.024%となります。10年物国債の利回りがマイナスになったのは初めてです。

金融機関がマイナスの利回りでも入札する理由

前述した10年物新型窓販の入札は2日に行われ、平均落札利回りは0.078%でした。過去最低ではありますが、マイナス金利ではありません。ただし、手数料分を引くと利回りはマイナスになります。

わざわざ損をすることがわかっていて買う人はいませんので、販売中止になったのです。

一方、金融機関はなぜ、「10年物国債」の利回りがマイナスでも購入するのでしょうか。

背景には、日銀が今後も国債の大量買い入れを続けるのではないかという思惑があります。金融機関が日銀に売却する価格はおおむね市場価格と連動し、落札価格よりも高めのため、利ざやが見込めるのです。

個人投資家にとって、資産運用の選択肢が狭まるおそれも

国債の利回りが低下すると、当然ながら、国債で運用している投資信託(ファンド)など、金融商品の収益が減少することになります。このため、商品の販売そのものを見直す動きが起こります。

ゆうちょ銀行と日本郵便はすでに、2016年2月22日から取扱いを予定していた投資信託商品「JP日米国債ファンド」の販売中止を発表しています。また、短期の国債などで運用する「MMF(マネー・マネジメント・ファンド)」は、ほとんどが新規受け付けを停止し、中には繰り上げ償還を決めたものもあります。

このほか、保険会社でも、一時払い終身保険や学資保険など、貯蓄性の高い商品の販売を中止するところがあります。

個人投資家にとって、今後さらに資産運用の選択肢が狭まるおそれがありそうです。

【2016年3月5日 投信1編集部】

■参考記事■

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LIMO編集部