梅雨明けが近づき、蒸し暑さから体調を崩しやすい6月下旬。実はこの時期、健康面だけでなく「家計」の観点でも非常に重要なタイミングであることをご存じでしょうか。
毎年6月にお手元に届く住民税の通知(課税所得)は、8月の「後期高齢者医療制度」の保険証更新において、窓口負担割合(1割・2割・3割)を判定する基準となります。
生命保険文化センターの調査で83.2%が「老後に不安を感じる」と回答するなか、すでに2割負担への配慮措置も終了し、医療費負担への関心は高まっています。
本記事では、来る8月の更新に向けて、ご自身の負担割合がどのような所得基準で決まるのか、具体的な目安を交えてわかりやすく解説します。
1. 【75歳以上 後期高齢シニア】75歳から始まる後期高齢者医療制度の仕組みとは
後期高齢者医療制度は、75歳以上の方を対象に設けられている公的医療保険制度です。
原則として75歳になると、それまで加入していた健康保険の種類や就労状況に関係なく、自動的にこの制度へ移行します。
また、65歳から74歳までの人でも、一定の障害認定を受けた場合には、申請によって後期高齢者医療制度へ加入することが可能です。
制度へ移る際に特別な申請手続きは必要ありません。
マイナ保険証を利用していない方には、居住する都道府県ごとの広域連合から新たに「資格確認書」が交付されます。
マイナ保険証をご利用の方は、マイナポータル等でご自身の情報を確認できるほか、広域連合から「資格情報のお知らせ」が送付される場合があります。
この制度に加入すると、医療機関で支払う自己負担割合は全員一律ではありません。
世帯の所得水準や課税状況に応じて、1割・2割・3割のいずれかが適用される仕組みとなっており、その違いによって実際の医療費負担にも大きな差が生じます。
それでは、後期高齢者医療制度における窓口負担割合が、どのような基準によって決まるのか確認していきましょう。
2. 【75歳以上 後期高齢シニア】医療費の自己負担は何割?1割・2割・3割の判定基準を確認
後期高齢者医療制度では、医療機関で支払う自己負担割合は所得に応じて3つの区分に分けられています。判定は世帯単位で行われ、次のいずれかが適用されます。
2.1 1割負担:標準的な所得水準の人
多くの後期高齢者が該当する区分で、特別な要件に該当しない場合はこの1割負担となります。
2.2 2割負担:一般所得者のうち、一定以上の所得がある人
1割負担と3割負担の中間に位置する区分で、所得が一定基準を上回った場合に適用されます(※制度導入当初は医療費の急激な負担増を防ぐため、2025年9月末まで「2割負担の人への配慮措置」が設けられていましたが、この措置はすでに終了しています)。
2.3 3割負担:現役世代と同程度の所得がある人
課税所得や収入額が高く、「現役並み所得者」と判定された場合に適用される区分で、最も高い3割負担となります。
3. 【75歳以上 後期高齢シニア】3割負担になるのはどんな人?所得と年収の目安を整理
窓口での自己負担割合は本人だけではなく、同じ世帯にいる後期高齢者全員の所得状況をもとに判定されます。
この判定は毎年8月に定期的な見直しが行われるほか、所得情報の修正や世帯構成の変更があった場合には、その都度再判定される仕組みです。
3.1 【早見表】後期高齢者医療制度「窓口負担割合」の判定基準
ご自身や家族がどの区分に該当するのか、その判断材料となる所得や収入の目安について詳しく見ていきましょう。
3.2 1割【一般の所得者】
下記の2割、3割に該当しない場合
3.3 2割【一定以上の所得がある方】
次の①と②の両方に該当する場合
- ①同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の方がいる。
- ②同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。
・1人の場合は200万円以上
・2人以上の場合は合計320万円以上
3.4 3割【現役並み所得者】
同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の方がいる場合
上記に加えて、以下の収入等の要件を満たす人。
- 世帯内に被保険者が1人の場合:被保険者の収入金額の合計が383万円以上
- 世帯内に被保険者が2人以上の場合:被保険者全員の収入金額の合計が520万円以上
- 世帯内に被保険者が1人で、かつ70歳以上75歳未満の人がいる場合:被保険者と70歳以上75歳未満の人の収入金額の合計が520万円以上
3.5 【フローチャートで確認】後期高齢者医療制度「医療費の窓口負担割合」は?
後期高齢者医療制度では所得区分によって自己負担割合が決まりますが、フローチャートを使うことで制度全体をより理解しやすくなります。
世帯の課税状況や収入の条件を順に確認していくことで、自分が1割・2割・3割のどこに該当するのかを把握できます。
実際の自己負担割合は、後期高齢者医療の資格確認書に記載されています。
紙の資格確認書を利用している場合は、券面を見ることで現在の負担割合を確認できます。
一方で、マイナ保険証を利用している場合はマイナポータルから確認可能です。
事前に把握しておけば、受診時のおおよその自己負担額を想定しながら医療機関を利用できるでしょう。
4. 【75歳以上 後期高齢シニア】単身と夫婦で異なる?世帯単位で決まる負担割合の考え方
後期高齢者医療制度では、窓口負担割合を判定する際に、本人だけでなく同一世帯に属する後期高齢者全員の所得を合算して判断する仕組みとなっています。
そのため、「自分の収入は少ないから負担も軽いはず」とは限らない点に注意が必要です。
たとえば本人の年金収入が少なくても、同居する配偶者などに一定以上の所得がある場合には、世帯全体として「現役並み所得者」と判定されることがあります。その場合、医療機関での自己負担割合は3割となります。
重要な判定ポイントの一つが、世帯内に課税所得145万円以上の後期高齢者がいるかどうかです。該当者がいる場合、その世帯は原則として現役並み所得者とみなされ、3割負担となる可能性が高くなります。
特に、夫婦のどちらか一方に収入や年金が集中している世帯では、単身世帯よりも世帯合算基準を超えやすい傾向があります。
個人の所得だけではなく、配偶者を含めた世帯全体の所得によって負担割合が決まるという制度の仕組みを、事前に理解しておくことが大切です。
5. 【75歳以上 後期高齢シニア】収入が少し増えただけで負担増も?見落としやすい境界ライン
後期高齢者医療制度では、所得に応じて医療費の自己負担が1割・2割・3割に分かれる仕組みであることを見てきました。
一見するとシンプルな制度に見えますが、実際には「わずかな収入差」が負担額の大きな違いにつながることがあります。ここでは、制度の境目で起こりやすい注意点を整理していきます。
5.1 負担割合は「連続」ではなく段階的に変わる
医療費の自己負担割合は、所得の増加に応じて少しずつ上がる仕組みではありません。
一定の基準を超えた時点で、
1割 → 2割
2割 → 3割
というように段階的に切り替わります。
そのため、収入がわずかに増えただけでも、適用される負担割合が一段階上がる可能性があります。
5.2 「少しの差」で手取りが減る逆転現象も
注意したいのは、負担割合が変わることで結果的に家計負担が増えてしまうケースです。
たとえば、
- 年金収入や一時的な収入が増えた
- 配偶者の収入に変化があった
- 資産運用による所得が発生した
などの理由で基準をわずかに上回った場合、本来増えた収入以上に医療費の自己負担が重くなる可能性があります。
特に通院回数が多い人や慢性的な治療を続けている人にとっては、負担割合の違いが年間ベースで見ると大きな差になることもあります。
5.3 判定は「世帯単位」なので意図せず該当することも
負担割合の判定は個人単位ではなく、同じ世帯に属する後期高齢者全体の所得によって行われます。
そのため、本人の収入が大きく変わっていなくても、
- 配偶者の年金額の増減
- 世帯構成の変化
などによって負担区分が変わることがあります。
「自分の収入は少ないから問題ない」と考えていても、世帯全体で見ると基準を超えてしまうケースもあるため注意が必要です。
5.4 制度の境目を知ることが家計管理のカギ
後期高齢者医療制度では、負担割合の境目が家計に与える影響は決して小さくありません。
特に、
- 2割から3割への移行
- 所得基準をわずかに超えるケース
では、医療費の自己負担額が大きく増える可能性があります。
こうした変化は年金額や所得のちょっとした差で起こるため、自身の所得水準がどの区分に位置しているのかを定期的に確認しておくことが大切です。
医療費は長期間にわたって発生しやすい支出だからこそ、「自分がどのラインにいるのか」を把握しておくことが、将来の家計を安定させるうえで重要なポイントになります。
それでは実際の状況について、さらに詳しく確認していきましょう。
6. 【75歳以上 後期高齢シニア】年金額によって負担割合はどう変わる?収入別の目安を確認
後期高齢者医療制度の窓口負担割合は、年金額だけで決まるわけではありません。実際には年金収入に加え、その他の所得や世帯全体の状況も考慮されます。
2割負担が導入後、2割負担となる人は被保険者全体の約20%、その他多くの人が1割負担になると発表されています。
2割負担の導入

出所:厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
ただし、公的年金が収入の大部分を占める高齢世帯では、年金額がおおよその目安になるケースも少なくありません。
ここでは単身世帯と夫婦世帯それぞれについて、年金収入の水準から見た負担割合のイメージを確認してみましょう。
6.1 年金収入150万円程度のケース
年金収入のみで年間150万円程度の場合、課税所得が28万円を超えないケースが多く、一般的には1割負担に該当する可能性が高いと考えられます。
単身世帯はもちろん、夫婦世帯であっても夫婦それぞれが同程度の年金収入であれば、1割負担となるケースが多いでしょう。
6.2 年金収入200万円程度のケース
年間200万円前後になると、2割負担の判定基準に近づく世帯も出てきます。
特に単身世帯では、「年金収入+その他の合計所得額」が200万円以上となる場合、課税所得の状況によっては2割負担に該当する可能性があります。
一方で、同じ年金額でも各種控除の状況によって判定結果は異なるため、必ずしも2割負担になるわけではありません。
6.3 年金収入300万円程度のケース
年間300万円程度の年金収入がある場合は、2割負担の対象となる可能性が高まります。
また、配偶者にも一定の年金収入がある夫婦世帯では、世帯全体の収入が判定基準を超えやすくなるため注意が必要です。
さらに、年金以外の所得や資産運用による収入が加わることで、現役並み所得者として3割負担に該当するケースもあります。
6.4 単身世帯と夫婦世帯では判定結果が異なることも
前章で説明したように、後期高齢者医療制度の特徴は、本人だけでなく世帯全体の所得状況を踏まえて判定が行われる点です。
そのため、同じ年金収入300万円であっても、
- 単身世帯では2割負担
- 夫婦世帯では世帯収入の合計により3割負担
- 配偶者の所得状況によっては1割負担
など、結果が異なることがあります。
窓口負担割合は毎年見直しが行われるため、年金額だけで判断せず、世帯全体の所得や課税所得の状況をあわせて確認しておくことが大切です。
6.5 年金額だけでなく「課税所得」も重要
後期高齢者医療制度では、実際の判定にあたって課税所得の基準があります。そのため、同じ年金収入でも控除額や家族構成によって負担割合は変わります。
年金額を一つの目安としながらも、毎年送付される住民税の通知書や資格確認書を確認し、自分がどの区分に該当しているのかを把握しておくことが、将来の家計管理につながるでしょう。
7. 【75歳以上 後期高齢シニア】高齢になるほど医療費は増える?家計への影響を読み解く
7.1 医療費は増加方向に積み上がりやすい支出
老後の家計において、医療費には他の支出とは異なる特徴があります。それは、一度負担が増えると、なかなか以前の水準まで下がりにくいことです。
趣味や娯楽費、交際費であれば家計の状況に応じて調整できますが、医療費は体調や治療内容によって左右されるため、自分の意思だけでコントロールしにくい支出だといえるでしょう。
厚生労働省「令和5年度 国民医療費の概況」によると、2023年時点における65歳以上の1人あたり国民医療費は年間79万7200円となっています。
75歳を超えるとさらに増加し、1人あたりの医療費は年間およそ95万円まで拡大しています。
7.2 年齢とともに「受診先」が増えていく
75歳を過ぎる頃になると、一つの病気だけでなく、複数の持病や慢性的な不調を抱える人が多くなります。
そのため、内科だけではなく、整形外科や眼科、歯科など複数の診療科へ通うケースも少なくありません。
受診回数や薬代が積み重なることで、医療費は一時的な出費ではなく、毎月発生する固定的な支出に近い性質を持つようになります。
7.3 治療が終わっても「定期的な医療費」は続く
病気やけがの治療が終了した後も、再発防止や経過観察のために定期的な通院や検査が必要になる場合があります。
こうした費用は突発的な出費というよりも、家計の固定費に近い形で継続し、長期にわたって影響を与えることになります。
7.4 自己負担割合の違いが、将来の差を広げる
医療費の支払いが長期間に及ぶほど、窓口で負担する割合の違いは無視できなくなります。
1割・2割・3割という差は1回あたりでは小さく感じられても、何年にもわたって積み重なると、支払総額には大きな開きが生じます。
負担割合が高いほど生活費への影響も大きくなり、その結果として貯蓄を取り崩すペースにも差が出てくるでしょう。
7.5 数年後の家計を左右する「見えにくい要因」
医療費は、短期間では目立ちにくいものの、長い時間をかけて家計へ影響を及ぼす支出です。現在は問題なく見えていても、医療費の増加が続けば資産残高への影響は徐々に大きくなっていきます。
老後の生活設計を考える際には、今の支出状況だけを見るのではなく、「医療費が増えた状態が長く続く可能性」も想定しながら、将来を見据えて準備しておくことが大切です。
8. まとめにかえて:将来の医療費負担を見据えた家計管理のポイント
毎年8月は、後期高齢者医療制度の窓口負担割合が切り替わる重要なタイミングです。7月中旬頃から順次新しい保険証が届き始めるため、まずはご自身やご家族の新たな負担区分をしっかりと確認しましょう。
また、医療費の窓口負担だけでなく、今年(2026年)度からは「子ども・子育て支援金制度」がスタートし、保険料を通じた新たな負担も始まっています。
少子高齢化を背景に、社会保障制度は今後も段階的に変化していくことが予想されます。目先の更新結果を把握しつつ、将来的な医療費や保険料の増加も織り込んで家計を管理していくことが、老後の安定した暮らしにつながります。
※子ども・子育て支援金に関するご留意点:支援金額の月額詳細や具体的な徴収状況などは、お住まいの地域の広域連合または市町村によって異なりますので、個別にお問い合わせください。





