人前で子どもを叱れない親も、何もしていないわけではありません。今の状況で、静かに叱る方法では子どもに伝わらないと知っています。叱って落ち着かせたいけれど、人前だからそこまで大きく叱れない。親は日ごろの様子から、必要な叱り方のレベルが分かっています。だからこそ何も言えなくなってしまうこともあるのです。

また、多忙な育児の毎日で、子どもを叱る気力すら失っている場面もあります。子どもを「泣き止ませる」「怒る」「叱る」というのは、とてもエネルギーが必要です。しかし、何をどうやっても泣き止まない、いくら言っても言うことを聞いてくれないほどの様子になる事は決して珍しくありません。激しく駄々をこねている子どもの前で、反応もできず、子どもをどうにもできないというケースもあるのです。

(5)そんなに難しい?子どもに言い聞かせること

子どもが迷惑をかけたらしっかり叱る、迷惑をかけないような行動をさせる。そうするのが親の務めだという意見も正論かもしれませんが、子育ては思い通りにならないことも多いのです。騒ぐ子を見て「またか・・・」という思いで、駄々っ子が収まるのをひたすら耐えて待っていることもあります。

育児書などでは「これがまだやりたかったんだね?」など、子どもの心の中を言葉で表現してあげながら同調する方法もありますが、外出先では伝わり方も違います。人前や公の場で子どもの行動を切り替えるには、親の力だけでは限界もありますので、やはり周囲の見守る力がほしいところなのです。

さいごに

他人に迷惑をかけてはいけないことを子どもに教えることは親の義務であり責任でしょう。しかし、その場で即、怒っていないからといって、その親が子どもを甘やかしているわけでも、自分が楽をしようとしているわけでもありません。様々な事情があるのです。

子どもを外に連れていく際には、親も神経をとがらせています。子どもの体調はもちろんのこと、周囲への迷惑対策、気候対策、不審者へ目を光らせること、交通安全、食事・排泄のこと…気を配りながらの外出です。このような意識は、子育てを経験して始めて分かるものではないでしょうか。子どもの性格もさまざまですので、必要となる伝え方や教え方もそれぞれでしょう。

子どもを親の思い通りにするというのは状況により非常に困難ですし、さらに他人がよその子どもの行動をコントロールしようとする意識も正しいものだとは言えません。「親ならちゃんと怒って」と憤る前に、もう少しだけあたたかい気持ちで見守る目も必要なのではないでしょうか。

LIMO編集部