梅雨の晴れ間がのぞく6月下旬。先日、6月15日の年金支給日を迎え、口座に振り込まれた金額を確認した方も多いのではないでしょうか。
今回の6月支給分からは2026年度(令和8年度)の改定が適用され、国民年金は+1.9%、厚生年金は+2.0%と4年連続の増額となりました。
しかし、長引く物価高に直面し、年金額が増えても「生活が楽になった」と実感できず、日々のやりくりにため息をついている方も多いかもしれません。
給与収入がなくなり、主な収入源が「年金のみ」となるシニア世代の現実はシビアです。一方で、しっかり準備をして4000万円以上の手堅い貯蓄を蓄え、老後のお金事情に大きな格差が生じているのも事実です。
「現役のうちに老後資金を準備したい」と頭では分かっていても、生活費の支払いに追われ、貯蓄に回す余裕がないのが本音でしょう。
では、実際のシニア世代の生活実感や貯蓄事情はいかに。
この記事では、高齢者世帯の「生活意識」「貯蓄・年金事情」に関する最新データを見ながら、老後の暮らしについて考えていきます。
1. 毎月約4.2万円の赤字?データで見る65歳以上・無職夫婦世帯のリアルな家計収支
では、実際のシニア世代の家計収支はどのようになっているのでしょうか。
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」より、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均的な家計収支を見てみます。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支1/6
出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに作成
- 実収入:25万4395円(うち社会保障給付:22万8614円)
- 非消費支出(税金・社会保険料等):3万2850円
- 可処分所得(手取り額):22万1544円
- 消費支出(生活費):26万3979円
- ひと月の赤字:4万2434円
調査結果を見ると、毎月の収入から税金や社会保険料などを引いた「手取り額(可処分所得)」は22万1544円ですが、ひと月の消費支出は26万3979円となっており、毎月4万2434円の赤字が生じています。
公的年金などの社会保障給付だけでは生活費をカバーしきれず、毎月の不足分を現役時代に蓄えた貯蓄の取り崩しなどで補っているのが、現代のシニア世代の平均的な姿と言えるでしょう。
長引く物価高や思わぬ出費の可能性を踏まえると、老後の生活を支えるうえで現役時代に積み重ねた「資産の存在」が大切になってきますね。
そこで次は、シニア世帯が実際にどの程度の貯蓄を保有しているのかを見ていきましょう。
2. 世帯主が65歳以上の世帯はどのくらい貯蓄を持っている?
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-」から、世帯主が65歳以上の二人以上世帯における貯蓄状況を確認します。
平均値と中央値
- 平均値:2564万円
- 貯蓄保有世帯の中央値:1777万円
平均額だけを見ると高水準に感じられますが、一部の高額資産保有世帯によって押し上げられる傾向があります。
そのため、実態を把握する際は中央値にも注目する必要があります。
2.1 【貯蓄額別】65歳以上世帯の資産分布を確認
では、世帯主が65歳以上の二人以上世帯では、どの程度の貯蓄を保有しているのでしょうか。
ここでは、4000万円以上の資産を持つ世帯の割合も含め、貯蓄額ごとの分布を見ていきます。
- 100万円未満:7.7%
- 100万円~200万円未満:3.7%
- 200万円~300万円未満:3.4%
- 300万円~400万円未満:2.8%
- 400万円~500万円未満:3.2%
- 500万円~600万円未満:3.4%
- 600万円~700万円未満:2.6%
- 700万円~800万円未満:2.9%
- 800万円~900万円未満:3.0%
- 900万円~1000万円未満:2.3%
- 1000万円~1200万円未満:5.6%
- 1200万円~1400万円未満:3.9%
- 1400万円~1600万円未満:4.4%
- 1600万円~1800万円未満:3.1%
- 1800万円~2000万円未満:3.3%
- 2000万円~2500万円未満:8.2%
- 2500万円~3000万円未満:6.2%
- 3000万円~4000万円未満:9.0%
- 4000万円以上:21.1%
貯蓄額が4000万円を超える世帯は21.1%となっており、約5世帯に1世帯の割合です。
十分な資産を形成できた世帯であれば、老後の資金面に対する不安を抑えやすいでしょう。
その一方で、貯蓄額が比較的少ない世帯も一定数存在しており、高齢世帯の資産状況には大きな開きがあることが分かります。
老後資金が不足する場合や、物価上昇によって資産の取り崩しが想定以上に進む場合には、定年後も働いて収入を確保することが有力な選択肢となります。
実際に、2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、企業に70歳までの就業機会確保が努力義務として求められるなど、高齢者が働き続けやすい環境づくりが進められています。
では、現在のシニア世代はどの程度就労しているのでしょうか。
3. シニア世代の就業率は上昇傾向に
内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、高齢者の就業率は全体として上昇傾向にあります。
75歳以上では大きな変化はみられないものの、65~69歳は53.6%、70~74歳は35.1%となりました。
また、「何歳ごろまで収入を得ながら働きたいか」という設問では、「65歳くらいまで」が23.7%で最も多く、「働けるうちはいつまでも」が22.4%で続いています。
さらに、現在も収入を伴う仕事に就いている人に限ると、「働けるうちはいつまでも」と回答した割合は33.5%に達しています。
働き続ける理由はさまざまですが、今後もシニア世代の就業率は高い水準で推移していくと考えられます。
次は、高齢者世帯の家計を支える重要な収入源である年金の受給額について確認していきましょう。
4. 公的年金「厚生年金・国民年金」の平均月額はいくら?
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」による2階建て構造となっており、老後の生活を支える大黒柱です。
とはいえ、年金収入だけで日々の生活費をすべてカバーできている世帯は、現実には多くありません。
それでは、今のシニア世代は実際に毎月いくらの年金を受け取っているのでしょうか。最新データから見ていきましょう。
4.1 厚生年金の「平均月額」を見る
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
全体の平均は約15万円ですが、実際の受給額は「月1万円未満」から「30万円以上」までと非常に幅広く分布しています。
現役時代の働き方や収入によって、将来もらえる金額に大きな個人差が生じるのが特徴です。
続いて、国民年金(基礎年金)のみを受給している方の平均額も確認します。
4.2 国民年金の「平均月額」を見る
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の受給額の分布を見ると、「月額6万円以上~7万円未満」の層が最も多くを占めています。
受給額全体としては「月1万円未満」から「7万円以上」まで幅がありますが、厚生年金とは異なり保険料が原則一律で決まっているため、受給額のばらつきは比較的少ないといえます。
5. まとめにかえて
今回は、現在のシニア世代の暮らしぶりを「家計収支」「貯蓄額」「就業率」「年金額」という4つのデータから確認してきました。
2026年度の年金は4年連続で増額されましたが、物価高の影響が上回り、「年金だけでは生活が苦しい」と感じるシニア世帯が多いのが現実です。
年金だけで生活費をカバーしきれない場合、不足分は貯蓄を取り崩すか労働収入で補うことになります。実際に65歳以降も働き続けるシニア層は増えており、「長く働くこと」は家計を支える重要な選択肢です。
一方で、4000万円以上の十分な貯蓄を持つ世帯が2割強を占めるなど、現役時代の備えが老後の安心感を大きく左右します。しかし、誰もがいつまでも働き続けられるとは限りません。
安心した老後を迎えるためには、まずは「ねんきん定期便」などでご自身の年金見込額を正確に把握することが第一歩です。
その上で、現役時代からの計画的な資産形成と、長く働くための健康づくりという「両輪」で準備を進めていくことが不可欠と言えるでしょう。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
LIMO編集部貯蓄解説班