5. 物価高がもたらす「なんとなく不安」と、働き続けるシニアの増加
年金生活に対する不安は、各種調査にも表れています。
三井住友信託銀行の「資産のミライ研究所」が1万人を対象に実施した調査によると、日々の生活で「お金に関して一番不安なこと・悩んでいること」の第1位は「物価の上昇」でした。
同研究所は、景気や賃上げといったニュースは目にする一方で、「自分の家計の収支や資産、将来の見通しを具体的な数字として把握していない」層が多く、「なんとなく不安」を抱えている状態にあると分析しています。
実際に、こうした見えない不安やインフレに対抗するため、長く働き続けるシニアは年々増加しています。
総務省のデータ(2024年時点)によると、65歳以上の就業率は25.7%と過去最高を更新しました。年齢階級別に見ると、その実態はさらに鮮明です。
- 65~69歳: 53.6%
- 70~74歳: 35.1%
- 75歳以上: 12.0%
このように、60歳代後半で半数以上、70代前半でも3人に1人以上が働き続けており、さらに75歳を過ぎても働く方が一定数存在します。
定年後も「長く働くこと」で収入の柱を維持していくのが、いまのシニア世代のリアルな姿となっています。
6. まとめにかえて
物価上昇の波はシニア世帯の家計を直撃しており、年金改定で多少額面が増えたとしても、物価の上昇ペースに追いつかなければ、実質的に買えるものが減ってしまう「お金の目減りリスク」と隣り合わせの時代です。
調査結果からも分かる通り、年金だけでゆとりある生活を送るのは、多くの方にとって容易ではありません。
だからこそ、ただ不安を抱えるだけでなく、できることから対策を講じていく視点が大切です。
これからの老後対策は、「できるだけ長く働いて収入の柱を維持すること」と、「NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用し、現役時代から資産を育てること」という、二つの視点が求められるでしょう。
本格的な夏を前に、今年のボーナスや毎月の家計を見直し、将来のゆとりに向けた資産形成の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考資料
著者
二種外務員資格(証券外務員二種)記者/編集者/校閲者/
ニ種外務員資格(証券外務員二種)・相続診断士・認知症介助士・終活ガイド資格1級保有。早稲田大学第一文学部史学科卒。学参系編集プロダクションなどで校閲・編集・執筆を経験。人文・社会系一般書籍、中学・高校社会科教材、就職試験問題の制作関連業務で15年以上の経験を持つ。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』において、金融系メディアの編集者兼執筆者として、コンテンツ制作や編集を担当。
総務省「家計調査」・厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査」などの一次資料に基づくデータ記事の執筆に強み。紙媒体での経験に加え、家族の介護を通じて得た知見を生かしながら、「お金とくらし」にまつわる情報を丁寧に発信している。(2026年2月12日更新)
監修者
LIMO編集部年金解説班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、地方自治体の公務員や生命保険会社等の金融機関にて勤務経験が豊富な編集者が中心となり、厚生労働省や官公庁の公開情報等をもとに公的年金(厚生年金保険と国民年金)、年金制度の仕組み、社会保障制度などをテーマに、丁寧で読者にとってわかりやすい記事の情報発信を行っています。
LIMO編集部年金解説班に所属する編集者は日本生命保険相互会社出身の村岸理美、地方自治体職員出身の太田彩子、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵、野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか等のファイナンシャルアドバイザー経験者等で構成されており、表彰歴多数の編集者も複数在籍しており、豊富な金融知識をもとにした記事に定評があります。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。生保関連業務経験者は過去に保険募集人資格を保有。(最新更新日:2026年6月17日)