日本人には、「お金は汚い」「お金儲けは悪いこと」というイメージを持つ人が少なくなく、お金の話をタブー視する傾向があります。「清く、貧しく、美しく」という発想が、戦後の復興期やバブル崩壊後の日本を支えてきた一面もあり、日本人の美徳であるとも考えられます。

しかしながら、多くの金融商品があふれ、金融詐欺が横行し、老後の生活資金確保が重要視されている昨今、お金の知識や判断力(金融リテラシー)は、生きていく上で極めて重要です。日本人は一般的に低いと言われる「金融リテラシー」について見ていきたいと思います。

金融リテラシーって何?

そもそも、「金融リテラシー」とは具体的に何なのでしょうか?金融庁では、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」(※1)を以下のように定義しています。

① 家計管理(収支管理の習慣化)
② 生活設計(ライフプランの明確化とライフプランを踏まえた資金確保の必要性の理解)
③ 金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択
・金融取引の基本としての素養(契約の基本姿勢の習慣化等)
・金融分野共通(金利、為替、リスク・リターン、コスト等の理解)
・保険商品(カバーすべき事象と必要額の理解)
・ローン・クレジット(ローン・クレジットの理解と適切な利用)
・資産形成商品(リスク・リターン、分散効果等の理解)
④ 外部の知見の適切な活用(金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に活用する必要性の理解)

金融リテラシーは上昇傾向?

上記の「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を踏まえ、金融広報中央委員会(事務局・日本銀行)では、「金融リテラシー調査2019年」(※2)として、18歳以上の個人の金融リテラシーの現状を把握するためのアンケート調査を実施しました。2016年に続く2度目の実施で、日本の人口構成とほぼ同一の割合で収集したインターネットによるアンケート調査です。

上述の分野の正誤問題の正答率は、全体で56.6%となっており、前回(2016年)の55.6%より1%ポイント上回りました。

各年齢層の正誤問題の正答率(カッコ内は前回調査数値)
18-29歳:42.7%(42.9%)
30代:50.9%(51.1%)
40代:55%(54.5%)
50代:60.4%(60.7%)
60代:64.4%(63.3%)
70代:64.8%(61.4%)

もっとも正答率が上昇したのは70代となっています。一方で、20~30代の正答率は下落しています。もともと、年齢階層が上がるほど金融リテラシーは高い傾向にありましたが、その差が拡大していると言えます。

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2018年(平成30年)平均結果―(二人以上の世帯)」(※3)によると、2人以上世帯の貯蓄現在高の平均値は1752万円ですが、世帯主が40歳未満の世帯の貯蓄現在高が600万円であるのに対し、70歳以上では2249万円となっています。

また、負債現在高の平均値は558万円ですが、世帯主が40歳未満の世帯の負債現在高が1248万円なのに対し、70歳以上では104万円となっています。

若い世代は、これから貯蓄を積み上げ、今後も負債の返済が必要です。若いうちから、しっかりとした金融リテラシーを身に付けることが大切だと感じます。

それでも日本の金融リテラシーは低い?