夏休みに自然に囲まれたキャンプ場を利用したり、祖父母の家に宿泊する家族も多いですよね。しかし、都会に住んでいたり、地方でも町の中心部や住宅街に住んでいると自然が少し遠い存在になりがちです。そのため、自然に囲まれた環境に出かけ、危機意識が薄いまま遊んでいると事故に巻き込まれる可能性も出てきます。
楽しい夏休みが暗転してしまわないよう、筆者の体験談を交えて田舎で遭遇しやすい危険をご紹介していきます。
清流の近くで地元の大人に叱られた
これは筆者が小学3年生の夏休みに初めて母親抜きで祖母の家に泊まった時に体験し、今でもお盆が近づくと必ず思い出す話です。
天気が良いのに誰も遊んでいない穏やかな清流
お盆休みになると孫たちがいっせいに祖母宅に泊まるのが恒例で、その年は伯父が「釣りたての鮎を食べさせるぞ」と子供たちを車に乗せて食事に連れて行ってくれました。頑丈そうな橋の下には、誰が見ても「きれいな川」と感じる、絵葉書に登場してくるような清流が流れていました。川の近くにお目当ての店はあり、店先の大きな水槽に何匹もの鮎が泳いでいたのを昨日のように覚えています。
ふと店の横を見ると、河原へと通じる階段がありました。手すりもなく、明らかに手作りでしたが、おそらく鮎を捕まえる時にこの階段を利用しているのでしょう。濡れているネットや釣道具が置いてありました。これほどまでの清流を見たことのない筆者は、「目の前で鮎が見られるかも」と吸い込まれるように階段に近づき、一歩二歩と降りていったのです。
川に近づこうとしたら見知らぬオジサンに怒鳴られた!
「おい、そこで何しているんだ!」 飛び上がるほどの怒鳴り声に驚き、後ろを振り向くと見知らぬオジサンが仁王立ちしていました。恐ろしさのあまり声も出せないまま立ち尽くしていると、「この川に勝手に入んな」と腕を引っ張られたのです。
騒ぎに気がついた伯父が慌てて駆け寄ってきて、「姪は初めてこの川に来たから。知らないからよく言っておくから」とそのオジサンに説明していました。店主だというオジサンがその場を去ると、伯父が一見すると穏やかな川は思った以上に危ないと筆者に教えてくれたのです。
苔むしたお地蔵様と供え物を見て背筋が凍る
少し落ち着いた筆者は、川の周囲に子供が全くいないことに気がつきました。誰か川遊びをしていそうな天気なのに、子供の歓声は全く聞こえてきません。鮎が焼き上がるまでまだ時間がかかりそうだったからか、伯父は連れてきた子供たちを集めて、草むらの方へ歩いていきました。
ある場所にいくと、伯父は「あそこをよく見てごらん」と言いました。伯父の意図が全く分からなかった筆者は、不思議な気持ちで草むらを見つめました。すると、不自然な空間があり、その周りを取り囲むように苔むしたお地蔵さまが数体鎮座していたのです。「この川は昔から多くの子供が溺れて命を落としている。この辺りの子供たちは絶対に近づかない」と静かに語り始めました。
鮎の解禁日には供養と安全祈願も兼ねて、花やお菓子を供えるようにしていると、伯父は教えてくれました。時代を感じさせるお地蔵様と真新しいお供え物を見た筆者は、背筋が凍る思いをしました。
母も子供の頃に溺れかかったと帰宅後に知らされる
ほろ苦い思い出ととも家に帰った後、母からどこに連れて行ってもらったのか聞かれました。「おばあちゃんの家から近い川にあるお店に行って、鮎の塩焼きを食べた」と目を合わせずに教えました。すると、母から意外な言葉が返ってきたのです。「あの川、見た目は穏やだけど場所によっては急に流れが変わって危ないんだよね」と言うではありませんか。
詳しく聞くと、母も溺れかかったところをお兄さん、つまりは伯父から助けられたと白状しました。「家に帰ったら、親や近所の大人から説教されて大変だった」と母は苦笑いを浮かべていました。
昔は川遊びをしている最中に溺れ、命を落とす子が毎年のように出ていたそうです。そのため、その川の周辺に住む人々は子供たちに小さい頃から勝手に入らないように何度も話をし、地元民以外の子供が近づいているのを見かけたら、迷うことなく大声で止めることを徹底しているのでした。