「京アニ作品は仕事が丁寧で高品質」というお話を、先の項でしました。今度は「巧い」「きれい」という「基礎」の上に積み重ねられるものがどのようなものなのかというお話をします。すべてを述べることはできませんが、まずはここにご注目いただきたい、という部分を挙げてみます。

色彩のみずみずしさ

京都アニメーションの作品をご覧になったことがないみなさんは、一度「京都アニメーション 作品」という文言で画像検索をしてみてください。そうすると当然、京都アニメーションの作品の画像がずらずらっと出てくるのですが、それらを見てお気づきのことがあると思います。

まず、いずれの作品も作画がしっかりしていて、絵に「間違った部分」がありません。1990年代以降に特に顕著になったのですが、漫画にもアニメにも「一見きれいだけど間違った絵」というものが高い割合で見られます。

デッサンが取れていない、人体の構造上、不可能なポーズ(難しいけど可能なポーズとは異なります)を取っている、光源が部分によって異なっていて陰影のつき方がバラバラ、などの間違いです。

商業作品にはこういった間違いがないのが当たり前なのですが、思いのほかたくさん見かける機会があるのが実情です。それが京都アニメーションの作品にはまったくと言っていいほどありません。

そして、際立つのが色彩のみずみずしさです。ただ色数が豊かなだけではなく、躍動感とでも言いましょうか、生き生きとした色彩が画面に展開されています。色使いだけでも訴えかけてくる何かが感じられます。

キービジュアルに「空」が描かれている作品が、京都アニメーションにもいくつかあります。その空はいずれも晴れた空なのですが、どれも同じ空ではありません。

通り一遍に青と白で塗り分けただけのものではなく、ストーリーのイメージや作中の季節、登場人物たちの心情などに照らして背景の空も、一作ずつ表情が異なるのです。

それは光と影の描写にも通じます。空に明暗があるように、光線が届くあらゆる場所には明るい部分と影の部分があります。京都アニメーション作品はそういったものの描写が実に鮮やかです。

たとえば『リズと青い鳥※』という劇場用作品は、全体的に淡いトーンでまとめられていますが、その中にも光と影がたくさんあります。

棚に並んで外光を反射するビーカー、ピアノの黒い筐体に映り込む弾き手の手や白い鍵盤、教室に差し込む陽光とカーテンの影など、淡いトーンから突出することはありませんが、それでいてビビッドに見る者の心に入り込んできます。これらの描写があることにより人物の描写がさらに映えるという場面もあります。

背景や陰影はどんな作品にも必ずあるもの。しかし、京都アニメーション作品のそれらは知らず知らずのうちに、ぼんやり見ているだけの者の心をも動かします。そういう力があるのです。

※YouTube「京都アニメーションチャンネル」で『リズと青い鳥』ロングPVを見ることができます)

さりげなく、かつ細かな芝居

アニメーションでなくとも映画やドラマをご覧になる人はよくおわかりだと思いますが、さりげない演技がとても上手な俳優というのがいます。よく見ないとわからないような細かな芝居を積み重ねてひとつの役をつくり上げ、作品全体に影響するような人です。