「日経平均株価が最高値」という明るいニュースの裏で、度重なる食料品の値上げに頭を悩ませている方も多いはず。

株高の恩恵を実感できる人は一握りで、多くのご家庭では家計のやりくりに四苦八苦しているのが現状です。

特にシニア世代にとっては、投資の利益よりも日々の生活費が切実な問題。すでに資産を取り崩す時期に入っており、「生活の拠り所は公的年金」という方も少なくありません。

そんななか、ぜひ知っておいていただきたいのが「年金以外にも国から支給されるお金」の存在です。

残念ながら、これらの公的給付金は自動的には振り込まれません。自分で情報を集め、窓口で「申請」をして初めて受け取ることができます。

この記事では、60歳・65歳以上の方を対象とした、年金プラスアルファの給付金や、働き続ける現役シニアを支える雇用保険の手当など、見落とすと損をしかねない「5つの制度」を丁寧に紐解いていきます。

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1. 公的なお金は申請が基本!手続きを忘れていませんか?

老齢年金や障害年金、遺族年金といった公的年金制度は、私たちの暮らしを支える大切な基盤です。

しかし、これらの年金は受給資格を満たしていても、自動的に支給が開始されるわけではない点に注意しなくてはなりません。

年金の受け取りを開始するためには、ご自身で「年金請求書」を提出し、請求手続きを完了させる必要があります。

これは年金に限った話ではなく、国や自治体が提供する給付金や補助金についても同様で、原則として申請手続きが伴います。

もし申請期限を過ぎてしまったり、提出書類に不備があったりすると、受け取れるはずの金額が減額されたり、最悪の場合受け取れなくなったりする可能性も考えられます。

貴重な支援制度を有効に活用するため、ご自身が対象となる制度の内容を正確に把握し、手続きを確実に行うことが大切です。

2. 老齢年金に上乗せで支給される2つの給付金

シニア世代の生活に密接に関わる公的年金には、基本的な老齢年金を補うための制度がいくつか存在します。

ここではその中から、老齢年金を受給している方が特定の条件を満たした際に、年金額に上乗せして支給される2つの給付金についてご紹介します。

2.1 1. 年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金とは、基礎年金を受け取っており、かつ所得が一定の基準を満たす場合に支給されるお金です。

この制度は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のそれぞれに設けられています。

今回は、特にシニア世代の生活と関わりの深い「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。

老齢年金生活者支援給付金を受け取るための条件

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受給していること
  • ご自身を含む世帯全員の市町村民税が非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入額と、その他の所得の合計額が基準額以下であること(昭和31年4月2日以後生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下)

※1:障害年金や遺族年金といった非課税収入は、ここでの収入金額には含まれません。
※2:昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下の方、および昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

老齢年金生活者支援給付金の基準額について

2026年度における老齢年金生活者支援給付金の基準額は、月額5620円に設定されています。

ただし、これはあくまで基準となる金額です。

実際の支給額は、この5620円を基に、ご自身の保険料納付済期間などに応じて計算され、以下の①と②を合計した金額になります。

  • ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
  • ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月

2.2 2. 加給年金

「加給年金」は、しばしば「年金の扶養手当」や「家族手当」に例えられる制度です。

老齢厚生年金を受け取っている方が、年下の配偶者やお子さんを扶養している場合に、一定の条件を満たすと年金額に上乗せして支給されます。

加給年金を受け取るための条件

  • 厚生年金の加入期間が20年(※)以上ある方:65歳に到達した時点、または定額部分の支給が始まる年齢に達した時点
  • 65歳到達後(または定額部分の支給開始年齢到達後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定時や退職改定時、または70歳に到達した時点

※共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性や坑内員・船員は35歳)以降に15年から19年ある場合も含まれます。

それぞれ上記の時点で、「65歳未満の配偶者」や「18歳になる年度の末日までのお子さん、または1級・2級の障害がある20歳未満のお子さん」がいる場合に、年金に上乗せして支給されます。

ただし、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者加給年金は支給停止となるので注意が必要です。

2026年度における加給年金の金額

加給年金の加給年金額3/7

加給年金の加給年金額

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

2026年度における「加給年金」の年金額は、以下の通りです。

  • 配偶者:24万3800円
  • 子ども(1人目・2人目):各24万3800円
  • 子ども(3人目以降):各8万1300円

さらに、老齢厚生年金を受け取っている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額には3万6000円から17万9900円の特別加算が上乗せされます。

加給年金は、対象の配偶者が65歳になると支給が終了します。

しかし、その配偶者が老齢基礎年金を受け取る場合、一定の条件を満たせば、今度は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」がされる仕組みになっています。

3. 働くシニア向け!雇用保険に関連する3つの給付金

これからも働き続けたいと考えるシニア世代を支援するために、「雇用保険関連」の給付金制度が用意されています。

ここでは、条件を満たすことで受け取れる3つの制度をわかりやすくご紹介します。

3.1 1. 再就職手当(65歳未満対象)

再就職手当は、失業後の早期の再就職を支援するための制度です。

失業してから再就職したり、事業を始めたりするまでの期間が短いほど、手当を多く受け取れる仕組みになっています。

再就職手当を受け取るための条件

  • 対象者:雇用保険の受給資格者で、基本手当の受給資格を持つ方
  • 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者として就職するか、または事業主として被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、その他一定の要件を満たした場合に支給されます。

再就職手当の給付率の仕組み

  • 手当の額:就職する前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数に応じて、給付率が以下のように変わります。(1円未満の端数は切り捨て)
    • 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の60%」
    • 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:「支給残日数の70%」

再就職手当の具体的な金額

なお、再就職手当を受け取った方が、再就職先で6カ月以上勤務し、かつその6カ月間の賃金が離職前の賃金よりも低くなった場合には、「就業促進定着手当」の対象となる可能性があります。

3.2 2. 高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続給付は、60歳以降も継続して働く方の賃金が低下した場合に、その一部を補うための給付金です。

60歳時点の賃金と比較して、一定の割合以上低下した場合に支給されます。

高年齢雇用継続給付を受け取るための条件

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
  • 支給条件:60歳到達時の賃金と比較して、75%未満に低下した状態で働き続ける場合

高年齢雇用継続給付の支給率について

  • 支給額:最高で各月の賃金額の10%(※)に相当する額
    ※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は15%となります。

高年齢雇用継続給付の早見表(2025年4月1日以降)

老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受給する場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)相当額が支給停止となる点には注意が必要です。
※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たした方は6%となります。

3.3 3. 高年齢求職者給付金(65歳以上対象)

高年齢求職者給付金は、65歳以上で雇用保険に加入していた方が失業した場合に、一時金として支給されるお金です。

高年齢求職者給付金を受け取るための条件

  • 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で、失業した方
  • 支給要件:以下のすべての条件を満たした方
    1. 離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること
    2. 失業の状態にあること(就職への積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態)

高年齢求職者給付金の具体的な金額

  • 支給額
    • 被保険者であった期間が1年未満の場合:基本手当の30日分に相当する額
    • 被保険者であった期間が1年以上の場合:基本手当の50日分に相当する額

65歳未満の方が受け取る失業手当は、4週間ごとに失業認定を受けながら分割で給付されます。

それに対して、高年齢求職者給付金は一括で支給されるという点が大きな違いです。

4. 2025年の年金制度改正と在職老齢年金への影響

2025年に成立した年金制度改正法に基づき、2026年4月から在職中に受け取る年金が減額される基準が変更されました。

従来は、賃金と老齢厚生年金の合計月額が51万円を超えると年金が減額対象でしたが、この基準額が65万円へと引き上げられることになります。

この改正は、平均寿命や健康寿命が延伸する中で、高齢期になっても就労意欲を持つ方が増加している社会状況を反映したものです。

年金の減額を気にすることなく働きやすい環境を整え、高齢者の就労促進や社会参加を後押しする狙いがあります。

4.1 在職老齢年金制度の見直しのポイント

2026年4月スタート 働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます7/7

2026年4月スタート 働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます

出所:日本年金機構「2026年4月スタート 働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」

在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合に、年金額(※)と給与・賞与などの報酬の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止になる制度です。
※老齢基礎年金は対象外で、全額支給されます。

年金が全額支給される基準額(支給停止調整額)の変更点

支給停止調整額は、毎年度少しずつ見直しが行われてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:65万円

2025年度の基準額は51万円でしたが、2026年度からは65万円へと引き上げられ、14万円の大幅な増額となります。

厚生労働省の試算によれば、この見直しによって、新たに約20万人が年金を全額受け取れるようになると見込まれています。

この基準額の引き上げにより、これまで年金の減額を心配して働くことをためらっていたシニア世代の方々も、より柔軟な働き方を選択しやすくなることが期待されています。

5. まとめ

この記事では、60歳・65歳以上の方を対象とした、申請しないと受け取れない5つの公的給付金について解説しました。

年金生活者支援給付金や加給年金のように年金に上乗せされるものから、再就職手当や高年齢雇用継続給付といった働くシニアを支えるものまで、様々な制度があります。

大切なのは、これらの制度はすべてご自身で申請手続きを行わなければ、受け取ることができないという点です。

まずはご自身が対象となる可能性があるかどうかを確認し、もし不明な点があれば、お近くの年金事務所やハローワークといった専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。

少しの手間をかけることで、将来の経済的な安心につながるかもしれません。

参考資料