平均寿命が延び、老後生活が長くなる現代。老後の暮らしを支える柱として「就労」と「公的年金」の重要性が一層高まっています。
しかし、制度の中には「自分から請求手続きが必要な給付金」があることをご存知でしょうか。
本記事では、条件を満たせば老齢年金に上乗せされる「加給年金」と「老齢年金生活者支援給付金」の受給条件や最新の給付額を詳しく解説します。
さらに、昨今の物価高(インフレ)に備えるための「資産の置き場所」の見直し方やNISAの活用法についても専門家のアドバイスを交えてご紹介。老後の不安を解消し、安心したシニアライフを送るためのヒントとしてぜひお役立てください。
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
1. この記事の3つのポイント
-
加給年金は、厚生年金加入20年以上の方が65歳時点で年下の配偶者や子がいる場合に上乗せされる「年金版の家族手当」 -
老齢年金生活者支援給付金は、世帯全員が住民税非課税など一定条件を満たす方への給付。2026年度の基準額は月5620円 -
どちらも自動的には支給されず、自身での申請が必要
2. 【申請が必要】老齢年金に上乗せされる2つの給付金
老齢年金を受け取っている方が、特定の条件を満たした場合に、本来の年金額に加えて受給できる2つの制度についてご説明します。
2.1 1. 加給年金:年金版の家族手当
「加給年金」とは、厚生年金に20年以上加入していた方が65歳になった時点で、生計を共にしている「年下の配偶者」や「子」がいる場合に年金額が加算される制度です。
これは、年金における「家族手当」のようなものと考えると分かりやすいでしょう。
下記の支給要件を満たし、「65歳未満の配偶者」または「18歳になった年度の3月31日までのお子さん、もしくは1級・2級の障害がある20歳未満のお子さん」がいる場合に、年金が上乗せされます。
加給年金の支給条件について
- 厚生年金の加入期間が20年(※)以上ある方:65歳到達時点(または定額部分の支給開始年齢に達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分の支給開始年齢に達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降に15年から19年ある場合も含まれます。
それぞれ上記のタイミングで、対象となる配偶者やお子さんがいる場合に、年金額が加算されます。
ただし、配偶者が20年以上の加入期間がある老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者分の加給年金額は支給停止となる点に注意が必要です。
2026年度における加給年金の金額
「加給年金」の金額(2026年度の年額)は、以下の通りです。
- 配偶者:24万3800円
- お子さん(1人目・2人目):各24万3800円
- お子さん(3人目以降):各8万1300円
また、老齢厚生年金を受け取っている方の生年月日に応じて、配偶者分の加給年金額には3万6000円から17万9900円の特別加算が上乗せされます。
配偶者の年金に引き継がれる「振替加算」
配偶者が65歳になると加給年金の支給は終了しますが、一定の条件を満たすことで、今度は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」として一定額が加算される仕組みがあります。
2.2 2. 老齢年金生活者支援給付金:所得が低い方への支援
「老齢年金生活者支援給付金」は、老齢基礎年金を受給している方のうち、所得や世帯収入が一定の基準を下回る場合に、生活を支援する目的で支給される給付金です。
この給付金は、年金本体とは別の法律に基づいており、年金とは異なる「給付金」として位置づけられています。
老齢年金生活者支援給付金の対象となる条件
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、その他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
給付金の基準額はいくら?
2026年度における老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は、月額5620円となっており、前年度から3.2%の増額となりました。
実際の給付金額は、この基準額を基に、保険料の納付状況などに応じて計算されます(下記の①と②の合計額)。
給付額の具体的な計算方法
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1768円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
※保険料免除期間に乗じる金額(上記の1万1768円)は、昭和31年4月2日以後生まれの方で、全額・3/4・半額免除を受けた期間に対するものです。免除の割合(1/4免除など)や生年月日によって乗じる金額は異なります。また、毎年度の老齢基礎年金額の改定に応じても変動します。
銀行の窓口でも、「年金は勝手に満額もらえるもの」と思い込んでいた方を多く見てきました。特に加給年金は、配偶者の年齢や厚生年金の加入期間によって支給の有無が変わるため、ご自身が対象かどうかを事前に確認しておかないと、気づかないまま何年分も受け取り損ねてしまう可能性があります。
老齢年金生活者支援給付金についても、「年金とは別の制度」という位置づけが分かりにくく、対象になる所得水準を超えているかどうかを自分で判断するのは簡単ではありません。まずはねんきんネットや年金事務所の窓口で、ご自身が対象になりうる制度がないかを一通り確認してみることをおすすめします。
また、加給年金にせよ、年金生活者支援給付金にせよ、共通しているのは「知らなければ申請できない」という点です。制度自体は用意されていても、気づかないまま何年も経ってから遡って請求できるケースは限られています。60歳・65歳といった節目のタイミングで、一度まとめて確認しておく習慣をつけておくと安心です。




