かんぽ生命が日本郵便を通して販売した保険と、ゆうちょ銀行が販売した投資信託で、多くの不適切販売が確認されています。

日本郵政グループは民営化以降、より収益性が求められる一方、超低金利の中で収益環境は悪化。生命保険や投資信託の新契約による手数料収入に注力した結果、過重なノルマ主義に陥りました。

日本郵政グループの不適切販売

今回の不適切販売について、問題を整理します。

かんぽ生命では、主に、旧契約を解約し新契約を結ぶ「乗り換え」取引において、18万件を超える不適切販売が発生しました。

かんぽ生命では、旧契約を解約してから3カ月以内に新契約をした場合や、新契約を結んでから6か月以内に旧契約を解約した場合を、「乗り換え」取引と定義し、純粋な新契約よりも営業成績上の評価を減ずる仕組みとしていました。

そのため、営業担当者は「乗り換え」取引に該当しないよう、旧契約を解約後3カ月超えてからの新契約の締結(旧契約と新契約の間が「無保険」状態)や、新契約後6カ月を超えるタイミングでの旧契約の解約(旧契約と新契約の「二重払い」)を推進しました。

他にも様々な問題のある取引が指摘されていますが、さらに、これらの取引の多くが、「高齢者」を契約者とするものであったことが問題視されています。

また、ゆうちょ銀行では、直営店での「高齢者」への投資信託の販売について、契約件数の約4割で社内ルール違反が見つかりました。ゆうちょ銀行では、高齢者には、勧誘時と販売時に健康状態と金融商品の理解度などを確認するルールになっていましたが、それが遵守されていないケースが多々ありました。

「乗り換え」取引と「高齢者」取引

金融商品の販売において、「乗り換え」と「高齢者」は要注意の二大キーワードで、どの金融機関においても厳しいルールが制定されています。親族の同席、上司の同席、複数回の面談、損益状況や手数料の詳細な説明など。

また、本部から不適切な販売をモニタリングする仕組みが作られ、営業成績として認められるために厳しい条件がクリアされなければならない(ほとんど認められない)などの規制があり、営業担当者にとって、苦労が多い一方でインセンティブが少ない取引になりつつあります。

また実際に、株式や投資信託は、市場動向の変化などにより顧客の運用方針が変わり、結果的に「乗り換え」取引に繋がることはあります。しかし長期保有を前提とする保険では、大きなライフステージ上の変化がない限り、「乗り換え」取引が発生することは滅多にありません。

さらにこの超低金利の中、同種の保険において、旧契約より新契約の方が好条件となることも考えにくいです。むしろ過去の利回りの高い保険は「お宝保険」と呼ばれ、本来、重宝されるべきものです。保険の「乗り換え」取引の多くは、合理性が乏しいと言えます。

メガバンクに比べ周回遅れの顧客本位