データ取得可能な1980年からの累計(2017年まで)を見ると、この3国の貿易収支累計額はそれぞれ、4016兆円、473兆円、695兆円ですから、残念ながら日本はこと貿易においては、このビッグ3にはかないません。

日本は1980年代初頭から、当時としては比較的付加価値が高かった自動車、バイク、家電(テレビ、ラジカセ)、電機機器などをバンバン輸出して貿易黒字を稼いでいました。モノが良かったのです。

いまでも、それらの製品は(さすがにテレビ、ラジカセはないですが)売れていますが、時代は変わってスマホ、ハイテク製品小物から日常衣料品まで、すっかり中国の独壇場となってしまいました(日本企業も中国に生産拠点を持って日本に輸出していますから、実のところ貿易統計は仔細に検討する必要はありますが)。

ドイツは欧州中心に確固とした製品輸出基盤を保有しています。日本でメルセデスベンツ、BMWが輸入車のトップ2であることからも、その理由は分かろうというものです。筆者は30年ほど前にイタリアに住んでいたことがあるのですが、イタリア国内でも汎用家電はイタリア製、高級白物はドイツ製、ラジカセは日本製と決まっていました。

ロシアは大国ですが、チマチマした家電やスマホ製造は得意でもなければ、“西側諸国”が工場を作ろうとも思わないので、結局石油やガスなどの資源輸出が得意科目です。正直、欧州はロシアのエネルギーがないとやっていけないのが現実です。ですから、ロシアに思いっきり物申すことのできる国はドイツぐらいなのですね。

貿易収支は超赤字の米国

肝心の米国ですが、貿易収支においては超赤字国です。1980年からの貿易収支は累積マイナス1750兆円、しかもデータが取れる期間で37年連続貿易赤字継続中。もちろん、何かあれば米ドル紙幣を刷るという奥の手を打ってきますから、それはそれで仕方がないところもあります。

貿易の問題をとやかく言い始めると、たとえば東京都と大阪府の“貿易収支”はどっちがプラスでマイナスか、という議論になりますので、本来プラスマイナス・ゼロである国対国の貿易収支でケンカするのはよろしくありません。

トランプ大統領は、「中国、けしからん」と吠えていますが、国境があるからけしからんのであって、もしなければ別に誰も困りません。それどころか、米ドルという切り札を持っているので、困るどころか世界中からいつでもいいものを買える立場にあるわけです。おそらく、米ドル基軸通貨制が続く限り、この立場は変わらないでしょう。

ところで、日本の貿易収支ですが、自国でバンバン物を作って輸出するという時代でもないでしょうから、筆者の考えでは貿易収支は良くてトントン、エネルギーの輸入分はやはりマイナスになると思います。

日本の貿易収支黄金時代はほぼ終わったわけですが、幸いなことに、かつて10年ほど海外に居住していた際、各国そして現地の方々から日本や日本製品に対して高い評判をずっと聞いていました。

「TOYOTAって、日本人が発明したんだろ」

これが本当のソフトパワーなのでしょうね。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)