2016年秋冬から日本でも年末商戦「ブラックフライデー」開始か
報道によると、政府・経団連は11月のシルバーウィークから12月にかけて小売業界に対して大規模なセールをするよう呼びかけているようです。これを日本版「ブラックフライデー」と名付ける模様です。
ブラックフライデーの範は毎年11月末、米国で感謝祭明けの金曜日から始まる大規模セールで、例年大いに盛り上がりクリスマス商戦の滑り出しを飾っています。
英国、中国、韓国、台湾でも同様の試みがなされており、これに日本の関係者が刺激を受けたようです。消費喚起の起爆剤にしたいという目論見なのでしょう。
なお、“ブラック”と称されるのは、この大規模セールで小売店が大幅な黒字になるためであり、良い意味で使われています。株価が暴落した1987年のブラックマンデー(暗黒の月曜日)とは全く異なる使われ方です。
ブラックフライデーで何が起きるのか
さて、筆者は実はあまりブラックフライデーに効果はないと思います。瞬間風速として消費が盛り上がることはあるでしょうが、ならしてみれば消費全体が押し上げられる可能性は低いと見ています。
その理由は簡単です。所得が増えない限り、こうしたイベントで消費の水準が恒常的に切り上がることはないからです。つまり、ブラックフライデーに消費を喚起しようとすると、結果としてその前後の消費が落ちこむだけになるということです。これは消費税の増税前後や、エコポイントなどで散々経験してきたことです。
あなたならどうする
少し想像してみてください。11月末に大規模なセールがあるとしたら、あなたはどうしますか。小売店は売れ筋と見た商品を大量に仕入れて、セールで魅力的な価格をあなたに提示しようとすることでしょう。
私であれば、従来なら10月に買っているものであっても、セールよりも前には買いません。そしてセールの時点ではリアルの小売店やネットをくまなく探して一番安い店舗で買います。もし、あまり売れていないと思ったら、在庫が滞留すると予想し購買をしばらく控えます。小売業者がやむなく在庫処分をしてくる時に安値で買うことにするでしょう。
ブラックフライデーは小売業にはブラックジョークにならないか
この状況は小売業者にとってはプラスとは言いきれません。セール前には売上がぴたっと止まりますので、セールの直前で「大量に仕入れたが、ちゃんと売れるのか」と大変な疑心暗鬼になります。するとセールに入る時にさらに値段を下げたい衝動に駆られます。自社に消費者を呼び込もうと、価格競争だけでなく宣伝合戦も始まります。
したがって、小売業者にとってはブラックフライデーのようなセールをしない場合と比べてセールをした方が儲からない危険性があるのです。しかも仕入れの当たり外れはセールが始まってみないとわかりません。うまくいかなかったものは在庫処分という追加コストを負担することになります。
これでは、ブラックフライデーが小売業者にはブラックジョークになってしまいます。
しかも消費者はセールにあわせて最安値を真剣に探すことでしょう。リアルの店舗ではなくECばかりが伸びた、そんな結果に終わる可能性も否定できません。
一方、例年12月中旬以降にピークを迎える商品であればピークの平準化ができるので、小売業者には良い話になるかもしれません。
消費対策として政府と経済界が取り組むべき本当の課題
消費対策は本来所得対策であるべきでしょう。規制緩和をすすめ、起業を支援し、新しい付加価値を生む産業を振興し、雇用の充実を図ることが王道です。
日本版ブラックフライデーは、いわばバーゲンセールと似た課題を抱えていそうです。ここにどんな知恵を盛り込むことができるのか、注意深く考えていきたいと思います。
【2016年3月11日 投信1編集部】
■参考記事■
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LIMO編集部