ある日、Aくんのお母さんが普段より30分早く保育園のお迎えに来たことで、筆者とお迎えのタイミングが重なったことがありました。ちょうどよい機会だと思い、思い切ってAくんから時々キックやパンチをされることがあるということをAくんのお母さんに告白してみたのです。

すると、Aくんのお母さんはびっくりした顔をされて、何度も何度も頭を下げられました。そしてAくんのパーソナルな部分について教えてくれたのです。筆者はAくんのお母さんに聞くまで全く気付かなかったのですが、Aくんは1歳半健診で自閉的傾向があるといわれたそうです。そして2歳を迎える頃から、“言葉”よりも“暴力”をふるう方が他人の気を引けると考えたようで、興味がある人や好きな人に対して暴力をふるうようになったのだとか。

Aくんのお母さんの話を聞いて、Aくんが暴力をふるう理由が筆者を嫌ってのことではないということがわかって、ひとまずホッとしました。そしてAくんのお母さんに、次Aくんから暴力をふるわれたときは、どう対処すればよいか聞いてみたところ、「もしよかったら、Aくん、大好きだよ!」って言ってあげてくださいといわれたのです。

その日からAくんが筆者のところに寄って来てくれた時には、「Aくん、大好きよ~!」と言いながら、頭をなでたり、ギュッ!と抱きしめたりするようにしました。それ以来、Aくんから暴力をふるわれることは全くなくなり、良好な関係を築けています。

あの時、Aくんのお母さんとお話しできたことを感謝すると同時に、なぜもっと早く相談しなかったのだろうと大きな後悔の念に駆られました。

子どもの親に相談するのがベスト

2~3歳頃の子どもにとって、自分の感情を言葉で正確に伝えることは大変難しいことです。言葉で伝えられない分、大人には想像のできない言動で気持ちを表現することもあるでしょう。

もし他人の子どもの言動が理解できず、対応に困ったら、1人で悩まず、その子どもの1番の理解者である親に相談するのがベストだと考えます。その言動の理由が判明すれば、きっと良好な関係を築くことができるでしょう。

上田 みどり