物価上昇が続くなか、老後の生活費に不安を感じる人も増えているかもしれません。

老後の主な収入源となる公的年金は、2026年度に国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%引き上げられましたが、実際に受け取れる金額は現役時代の働き方や加入期間によって大きく異なります。

本記事では、2026年度の年金改定内容に加え、年代別・ライフコース別の受給額の実態について詳しく見ていきます。

1. 【2026年度の年金額】厚生年金は夫婦2人で「月23万7279円」に

公的年金は、物価や賃金の変動を反映しながら、毎年度見直しが実施されます。

ここでは、2026年4月から適用される年金額改定の内容を確認していきます。

2026年度の年金額は、前年度と比べて国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げられました。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分)(+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

公的年金は、偶数月の15日(土日と重なる場合は直前の平日)に、前2カ月分がまとめて支給されます。

そのため、今回の改定額は、2026年6月支給分の「4月分・5月分」の年金から反映されます。

なお、今回の改定内容の公表では、「多様なライフコースに応じた年金額」として、働き方や収入水準ごとの年金受給例も示されています。

2. 【年金額の目安】厚生年金加入期間が長い女性は「月13万4640円」

働き方やライフスタイルが多様になっているなかで、「将来自分はいくら年金を受け取れるのか」と気になる人も多いでしょう。

厚生労働省は、今回の年金額改定の公表にあわせて、「多様なライフコースに応じた年金額の例」も示しています。

多様なライフコースに応じた年金額の例では、「2026年度に65歳になる人」を想定し、年金加入歴を5つのパターンに分けた年金額の概算が紹介されています。

多様なライフコースに応じた年金額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

2.1 ケース①:男性・厚生年金期間中心の年金額例

《年金月額》17万6793円

  • 平均厚生年金期間:39.8年
  • 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
  • 基礎年金:6万9951円
  • 厚生年金:10万6842円

2.2 ケース②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心の年金額例

《年金月額》6万3513円

  • 平均厚生年金期間:7.6年
  • 平均収入:36万4000円
  • 基礎年金:4万8896円
  • 厚生年金:1万4617円

2.3 ケース③:女性・厚生年金期間中心の年金額例

《年金月額》13万4640円

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35万6000円
  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

2.4 ケース④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心の年金額例

《年金月額》6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25万1000円
  • 基礎年金:5万3119円
  • 厚生年金:8652円

2.5 ケース⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心の年金額例

《年金月額》7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26万3000円
  • 基礎年金:6万9016円
  • 厚生年金:9234円

このように、厚生年金への加入期間や現役時代の収入水準によって、受け取れる年金額には大きな差が生じます。

3. なぜ年金額に差が出る?受給額を左右する3つの要素

前章で紹介した年金額例からもわかるように、公的年金の受給額は一律ではなく、人によって大きく異なります。

その背景には、「どの年金制度に加入していたか」「どのくらいの期間加入していたか」「どのような働き方をしていたか」といった違いがあります。

日本の公的年金制度は、すべての人が加入する「国民年金」を土台として、会社員や公務員などは「厚生年金」が上乗せされる仕組みです。

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

そのため、厚生年金に加入していた期間が長い人ほど、受給額が増えやすい傾向があります。

また、厚生年金は現役時代の給与や賞与をもとに保険料や将来の年金額が決まる「報酬比例制度」となっており、同じ加入期間であっても、収入水準によって将来の受給額には差が生じます。

さらに、働き方の違いも年金額へ影響します。

正社員として長期間勤務した人は厚生年金へ継続的に加入しやすい一方、自営業やフリーランス、非正規雇用中心で働いてきた人は、国民年金が中心となるケースも少なくありません。

とくに近年は、働き方やライフコースの多様化が進んでおり、同じ世代でも受給額に大きな差が見られるようになっています。

そのため、平均年金額だけを見るのではなく、自身がどの制度にどの程度加入してきたのかを確認することが重要といえるでしょう。

では、現在のシニアは実際どのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

4. 【60歳代】シニアの「厚生年金・国民年金」の平均はいくら?

ここからは、現在のシニア世代が実際にどの程度の年金を受給しているのかを確認していきます。

まずは、60歳代における厚生年金と国民年金の平均年金月額を見ていきましょう。

なお、厚生年金の金額には、老齢基礎年金(国民年金部分)が含まれています。

4.1 【厚生年金】60歳代(60〜69歳)の平均月額を見る

60歳代の厚生年金の平均月額2/7

60歳代の厚生年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:9万9664円
  • 61歳:10万4455円
  • 62歳:10万9323円
  • 63歳:6万8758円
  • 64歳:8万3901円
  • 65歳:14万9862円
  • 66歳:15万2378円
  • 67歳:15万2356円
  • 68歳:15万2709円
  • 69歳:15万1284円

4.2 【国民年金】60歳代(60〜69歳)の平均月額を見る

60歳代の国民年金の平均月額3/7

60歳代の国民年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:4万5186円
  • 61歳:4万6371円
  • 62歳:4万7784円
  • 63歳:4万7258円
  • 64歳:4万7896円
  • 65歳:6万1240円
  • 66歳:6万1369円
  • 67歳:6万1345円
  • 68歳:6万1293円
  • 69歳:6万978円

老齢年金は、原則65歳から受給開始となります。

65歳未満の年金額は、繰上げ受給(※1)を利用している人や、「特別支給の老齢厚生年金」(※2)の報酬比例部分のみを受給している人が含まれるため、65歳以降と比べて少ない傾向があります。

65歳〜69歳の平均月額を見ると、厚生年金は14万〜15万円台、国民年金は6万円台となっています。

※1 繰上げ受給:老齢年金を60歳~64歳までで前倒しして受け取ること。繰上げた月数に応じて年金が減額(0.4%/月)され、一度決まった減額率は生涯変わりません。
※2 特別支給の老齢厚生年金:昭和60年の法改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度。年齢など一定条件を満たす場合に受け取ることができます。

5. 【70歳代】シニアの「厚生年金・国民年金」の平均はいくら?

続いて、70歳代における各年齢の平均年金月額を見ていきます。

5.1 【厚生年金】70歳代(70〜79歳)の平均月額を見る

70歳代の厚生年金の平均月額4/7

70歳代の厚生年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳:15万455円
  • 71歳:14万8371円
  • 72歳:14万6858円
  • 73歳:14万5583円
  • 74歳:14万7774円
  • 75歳:15万1410円
  • 76歳:15万1241円
  • 77歳:15万962円
  • 78歳:15万862円
  • 79歳:15万3115円

5.2 【国民年金】70歳代(70〜79歳)の平均月額を見る

70歳代の国民年金の平均月額5/7

70歳代の国民年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳:6万1011円
  • 71歳:6万770円
  • 72歳:6万234円
  • 73歳:6万32円
  • 74歳:5万9813円
  • 75歳:5万9659円
  • 76歳:5万9555円
  • 77歳:5万9349円
  • 78歳:5万9124円
  • 79歳:5万8676円

70歳代の平均年金月額を見ると、厚生年金は14万〜15万円台、国民年金は5万8000円〜6万円台となっていました。

6. 【80歳代】シニアの「厚生年金・国民年金」の平均はいくら?

続いて、80歳代の平均年金月額を確認していきます。

6.1 【厚生年金】80歳代(80〜89歳)の平均月額を見る

80歳代の厚生年金の平均月額6/7

80歳代の厚生年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 80歳:15万3729円
  • 81歳:15万5460円
  • 82歳:15万7744円
  • 83歳:15万9994円
  • 84歳:16万2555円
  • 85歳:16万3947円
  • 86歳:16万5577円
  • 87歳:16万5557円
  • 88歳:16万6200円
  • 89歳:16万6767円

6.2 【国民年金】80歳代(80〜89歳)の平均月額を見る

80歳代の国民年金の平均月額7/7

80歳代の国民年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 80歳:5万8623円
  • 81歳:5万8269円
  • 82歳:5万8003円
  • 83歳:5万7857円
  • 84歳:5万9675円
  • 85歳:5万9425円
  • 86歳:5万9228円
  • 87歳:5万9204円
  • 88歳:5万8756円
  • 89歳:5万8572円

80歳代の平均受給額は、厚生年金が15万〜16万円台、国民年金が5万8000円〜9000円台となっています。

どの年代でも、平均年金月額に大きな差は見られませんでした。

ただし、これらはあくまで各年齢の平均値である点には注意が必要です。

実際の年金額は、現役時代の加入制度や加入期間などによって、それぞれ異なります。

7. 今できる老後の準備をしておこう

本記事では、2026年度の年金改定内容に加え、年代別・ライフコース別の受給額の実態について解説しました。

公的年金の受給額は一律ではなく、現役時代の働き方や収入、厚生年金への加入期間によって大きく変わります。

ライフコース別の事例では、厚生年金加入期間が長いケースと国民年金中心のケースで受給額に大きな差が見られました。

まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などを活用し、自身の受給見込み額を把握することが大切です。

そのうえで、貯蓄や資産形成も含めた老後準備を早めに考えていくことが重要といえるでしょう。

参考資料

横野 会由子