新NISAが始まって以来、株式市場の大幅な急落は3度ありました。2024年に起きた「日本版ブラックマンデー」と、2025年4月のトランプ関税ショック、そして2026年2月末に起きたイラン紛争です。いずれも短期間に強い値崩れが生じたため、多くの投資家が動揺したと考えられます。
相場の暴落は一般的なニュースでも取り上げられることが多く、どうしても心配になるものです。「NISAのお金、このまま放っておいて大丈夫?」と不安になり、焦って資産を手放してしまう人もいるかもしれません。
投資は資産形成の手段の1つであり、いずれ売却して出口を迎えるものですが、その判断が感情的だと失敗につながることが懸念されます。この記事では、暴落が来たときに「どう考え、どう行動すべきか」を、資産運用のプロの視点からわかりやすくお伝えします。
1. 「暴落は相場の宿命」それでも株価は最高値圏
まず、大前提として「暴落は投資につきもの」という事実を押さえましょう。株式市場がどのような暴落を経験してきたか解説します。
1.1 リーマンショックは6割安 暴落は数年に1度
株式市場は大きな下落を何度も繰り返してきました。パリバショックから続くリーマンショックが代表的ですが、このときは歴史的な暴落でした。
例えば「オルカン」が連動を目指す全世界株式指数「MSCI ACWI」の円建て配当込み指数は、2007年7月~2009年3月にかけて最大64.82%の下落を記録します。国内も影響は大きく、日経平均株価が2007年の高値を取り戻したのは8年後の2015年のことです。
リーマンショック以降も、株式市場はたびたび急落を迎えます。ギリシャショックやそれに続く欧州債務危機、2015年のチャイナショックや2016年のブレクジットなど、数年に1度のペースで起きています。
1.2 足元は最高値圏 「狼狽売り」は報われなかった
当時は悲観的な相場環境でしたが、結果として世界の主要な株価指数は最高値圏に達しています。近年は好相場が続いており、先進国や新興国の株式指数は大きく上昇してきました。
【主な株式指数の実績利回り(2012年~2025年)】
・全世界株式指数:17.55%
・先進国株式指数:18.33%
・新興国株式指数:11.57%
※全世界株式指数…MSCI ACWI、先進国株式指数…MSCI World、新興国株式指数…MSCI Emerging Markets(いずれも円建て配当込み)
出所:MSCI Inc. 「MSCI ACWI Index (JPY)」
日経平均株価も、2026年4月23日には一時6万円を突破する状況です。急落時に慌てて売却し市場から去った人は、その後の値上がりを享受できなかった格好です。
※これは過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。近年は米国株を中心とした歴史的な上昇相場であった点に留意が必要です。
2. 「暴落に備えてできること」長期運用と分散投資を見直そう
数年に1度の周期で発生している以上、相場の急落は今後も起こることが想定されます。暴落に備え、私たちにできることはなんでしょうか。
2.1 衝動的な売りはNG GPIFに見る長期運用の威力
株式市場が急落したとき、思い出したいのが長期運用の効果です。これまでの相場状況では、資産の変動幅は長期になるほど小さくなる傾向がみられました。
年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2024年3月までの39年間で検証したところ、運用リターンは1年単位だと大幅な損失で終わるケースがあった一方、10年単位ならマイナスはありませんでした。
【GPIFの基本ポートフォリオのバックテスト年率リターン(最小値~最大値)】
・1年単位:-22.2%~30.7%(中央値:5.5%)
・10年単位:0.5%~8.4%(同5.5%)
※バックテスト期間:1985年4月~2024年3月
※基本ポートフォリオ…原則として国内株式・国内債券・外国株式・外国債券の均等保有
出所:年金積立金管理運用独立行政法人「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて~ 詳細 ~」
この検証にはブラックマンデーや日本のバブル崩壊なども含まれます。あくまで過去の実績ですが、暴落相場を迎えても保有を続ければ損失を小さくできる可能性が示唆されています。
※これは過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありません。長期運用が、必ずしも利益につながる保証はありません。
2.2 分散投資も大切 「株式だけ」はリスク高め
GPIFの例では分散投資の効果も見逃せません。GPIFは株式と債券という「資産の分散」と、国内と海外という「地域の分散」を取り入れたポートフォリオで運用しています。
そもそも、株式はリスクが高い資産ということを認識しましょう。コストの低さなどから海外株式型ファンドが人気ですが、海外株式は年率20%前後の値動きは日常です。これは、100万円の投資で1年に20万円の損失が出ることが当然に想定される水準です。
【新NISA対象ファンドの5年実績リスク(年率、2025年末)】
・国内株式型:13.3%
・先進国株式型:21.4%
・新興国株式型:17.2%
・国内債券型:2.2%
・先進国債券型(投資適格):6.4%
・新興国債券型:9.0%
※5年以上の運用実績がある国内籍公募追加型株式投資信託が対象。ETF、通貨選択型およびマネープール相当は対象外
出所:金融庁『「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)の測定と国内公募投信についての諸論点に関する分析」の公表について』
投資信託は、基本的に「銘柄の分散」は行っています。しかし、同一の資産で銘柄を分散しても、リスクを減らす効果は限定的です。暴落に備えたいなら、資産の分散と地域の分散も取り入れることを検討しましょう。
3. 【まとめ】正しい「売り時」を冷静に考える
では、NISAで買った商品はいつ売却すればよいのでしょうか。
1つの目安は目標の到達です。運用を続け、資産が目標額に達した場合は売却し現金化を検討するタイミングです。
また、リスク許容度の変化も売却が視野に入ります。一般に年齢が進むとリスク許容度が下がるため、ポートフォリオが同じでもリスクが高くなり過ぎてしまうことがあります。この場合、リスクを下げるため売却することは自然な取引です。
これらの共通点は、売却が能動的であるということです。相場の急落に焦り、思考を止めて資産を手放してしまうような受動的な売却は避けましょう。
普段から分散投資を心がけ、暴落に直面した際は長期運用の効果を思い出し、冷静に対応するようおすすめします。
参考資料
- 内閣府「世界経済の潮流 2008年 II ―世界金融危機と今後の世界経済―」
- 内閣府「世界経済の潮流 2012年I <2012年上半期 世界経済報告>欧州政府債務危機を巡る緊張が続く世界経済」
- 内閣府「 世界経済の潮流 2023年 Ⅱ<2023年下半期 世界経済報告>中国のバランスシート調整・世界的なサービス貿易の発展」
- 外務省「外務省 英国の EU 離脱後の日 EU 及び日英関係に係る調査・分析報告書 平成 29 年 3 月」
- MSCI Inc. 「MSCI ACWI Index (JPY)」
- 年金積立金管理運用独立行政法人「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて~ 詳細 ~」
- 金融庁『「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)の測定と国内公募投信についての諸論点に関する分析」の公表について』

