半導体製造装置・材料分野に関する業界団体のSEMIは、2019年の世界半導体製造装置販売額(新品)が前年比18.4%減の527億ドルになりそうだと発表した。前回予測(18年12月)時点では、前年比4%減と予測していたが、これを大幅に引き下げた。
韓国の落ち込み大きく
SEMIによれば、今回の最新予測には米中貿易摩擦など地政学的な緊張状態などから発生している足元の設備投資の下方修正や、不確実性の増大などが反映されているという。工程別ではウエハープロセス処理装置が前年比19%減の422億ドル、その他前工程装置(ファブ設備装置、ウエハー製造装置、マスク/レチクル製造装置)が同4%増の26億ドル、組立およびパッケージング装置が同23%減の31億ドル、テスト装置が同16%減の47億ドルを見込む。
地域別では台湾が21%成長し、韓国を抜いて世界最大の装置市場となる見込み。17~18年の過去2年はメモリー投資拡大で韓国が最大マーケットであったが、19年は主要メーカーが投資を抑制する一方、ファンドリーの積極投資で台湾が再び1位の座に返り咲く見通し。韓国は前回予測に比べて40億ドル引き下げられており、今回の大幅下方修正の主因といえる。
一方、北米は主要ロジックメーカーの投資拡大で前年比8%増とプラス成長が見込まれており、前回予測からも若干上方修正が行われている。中国に関しては台湾に次ぐ世界第2位のマーケットとなる見込みだが、前回予測に比べて若干引き下げられている。
20年の市場見通しについては、前年比12%増の588億ドルと回復を見込んでいる。具体的には中国のメモリー新規投資が牽引材料となる見込みで、地域別でも中国が首位に浮上するという。ただ、18年12月の時点では20年の半導体装置市場は719億ドルになると予想しており、前回予測に比べて大幅に下方修正されている。
メモリー新ファブ投資案件、量産装置導入は20年以降に
今回のSEMIの予測の背景には、やはりメモリー分野の投資抑制が大きく影響する。特に19年後半から20年にかけては、NANDフラッシュ分野の投資回復が期待されていたが、いずれの案件に関しても先送りの方向が示され始めており、今回の大幅下方修正につながったものとみられる。
とりわけ、期待されていたサムスン電子、東芝メモリの新ファブ向け量産ラインの装置導入は、2020年以降に持ち越しとなりそうだ。両案件ともにまずはパイロットラインの導入を年内に実施。顧客からの認定取得を優先させ、市況回復に備える考えだ。
東芝メモリは現在、岩手県北上市に新工場(K1)を建設中。19年秋に竣工し、20年から96層世代の量産を開始する予定。当初は月数万枚程度の量産ライン導入も検討されていたが、結果的には月7500枚規模のパイロットラインの設置となったもよう。製造世代もまずは64層世代が中心となる見込みで、一部製造装置は四日市工場からの移設で対応する。新規装置は年末をめどに搬入が行われる見通し。
サムスン電子は西安第2工場(X2)の建設を進めているが、北上新工場同様に、パイロットライン向けの装置搬入を年内から開始する。量産ラインの投資判断は19年7~8月ごろに行われる情勢だ。
DRAMも依然として価格下落の状況が続くなか、次期投資計画は見えてきていない。サムスン電子の平澤工場では第1工場(P1)、第2工場(P2)ともにDRAMの増強余地を残しているが、投資再開時期が確定できていない状況だ。SKハイニックスも無錫新ファブ(C2F)の第1期投資分の装置搬入が19年4~6月期にほぼ一服するが、その後の投資計画がまだ見えてきておらず、今後の市場動向を見ながらの判断となりそうだ。
マイクロンテクノロジーは、広島工場ですでに着工を開始している「新F棟」の完成時期に関しても、後ろ倒しの可能性が強まっている。加えて、台湾・桃園市の量産工場(Fab11、旧イノテラ)も微細化投資の先送りが決まったもようだ。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳